動いた球の1罰打はなぜ消えた
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2016年全米オープンでダスティン・ジョンソンに科された「動いた球」の1罰打。
- あの一件だけで規則が変わったわけではない。
- 2017年の特例、2019年の本則化、2026年現在まで、グリーン上の偶発的な球移動が無罰になった理由を追う。
2016年全米オープン最終日。オークモントの5番グリーンで、ダスティン・ジョンソンの球がわずかに動いた。
現場のレフェリーは当初、ジョンソンが動かした可能性は低いとして無罰でプレーを続けさせた。ところが後から映像を確認した委員会は判断を変更。旧規則18-2を適用し、1罰打を科した。
この一件で表面化したのは、単に「球を動かしたら罰」という話ではない。そもそも、ほんのわずかな球の動きを誰が起こしたのかを、公平に決められるのかという問題だった。
2016年は「可能性が高い」で1罰打になった
当時の米国ゴルフ協会は、選手の動作、球が動くまでの時間、球の置かれた状態、コースや天候などを総合して原因を判断していた。
ジョンソンのケースでは、映像を再確認した結果、本人の行動が原因である可能性が高いと判断された。直接クラブで球に触れた場面が確認されたからではない。それでも当時の判断基準では、証拠を総合して「原因である可能性が高い」となれば罰を科すことができた。
問題は、グリーン上の球が非常に小さなきっかけでも動き得ることだ。選手の動作なのか、風なのか、傾斜なのか。動いた事実は見えても、原因の線引きは簡単ではない。
ジョンソンの一件だけで規則が変わったわけではない
ここは重要だ。
2016年12月8日、米国ゴルフ協会とR&Aは、グリーン上で球やボールマーカーを偶然動かした場合の罰をなくす新しいローカルルールを発表した。
しかし規則当局自身が、この論点はその年に突然浮上したものではなく、すでに「過去数年間」にわたり規則近代化の一環として検討してきたと説明している。
つまり、全米オープンの裁定が単独で規則を変えたという話ではない。原因判定の難しさと罰の公平さについて進んでいた見直しの最中に、世界的な大会でその問題が極めて分かりやすい形で現れた。
2017年、まず特例として無罰になった
新しいローカルルールは2017年1月1日から使えるようになった。
対象はグリーン上だ。プレーヤー、パートナー、相手、そのキャディーや用具が、球またはボールマーカーを偶然動かしても罰はない。球は元の位置へ戻す。
ただし、すべての球の移動が無罰になったわけではない。
風、水、重力など自然の力で球が動いた場合は別扱いで、当時は原則として動いた後の位置からプレーした。規則変更は「動いた球なら何でも無罰」ではなく、グリーン上で人が偶然起こした移動を罰から外すものだった。
2019年、特例が正式な規則になった
2019年の規則改定では、この考え方が規則13.1dとして本則に組み込まれた。
規則当局が挙げた理由は明確だった。現代のグリーンは形状、傾斜、状態によって静止した球が動きやすく、選手が原因なのか自然の力なのかを判定しにくい。しかも通常のストローク準備中に起きた偶発的な小さな移動へ罰を科すことは、不公平に見える場合がある。
そこで、グリーン上でプレーヤーなどが球を偶然動かした場合は無罰とし、元の位置へ戻す扱いが正式な規則になった。
2016年に争点になった「誰が動かしたのか」を細かく判定して1打の罰につなげる場面そのものが、グリーン上では大きく減ることになった。
2026年現在も、グリーンの内外で扱いは違う
2026年9月9日現在、この原則は続いている。
グリーン上でプレーヤーなどが球を偶然動かした場合は無罰で、球を元の位置へ戻す。一方、グリーン外で自分の球を偶然動かした場合は、例外を除いて原則1罰打だ。
自然の力で球が動いた場合は通常、新しい位置からプレーする。ただし、グリーン上で一度拾い上げて元の位置へ戻した球が、その後に自然の力で動いた場合は元の位置へ戻す。
原因の判断基準も2016年当時とは違う。現行規則でプレーヤーなどが原因とされるのは、事実として分かっているか、ほぼ確実な場合だ。規則近代化の説明では、その「ほぼ確実」は少なくとも95%相当とされている。
2016年の「可能性が高い」という基準より、原因をプレーヤーへ帰属させるハードルは上がった。
消えたのは「動いた球の罰」全部ではない
2016年のジョンソンの1罰打から、2017年の特例、2019年の本則化へ。変わったのは、球が動けば一律に無罰になるということではない。
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