体重1.5%減でショットは乱れる?
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 体重が約1.5%減る軽い脱水で、ショット距離・方向・距離判断が悪化した7人の実験がある。
- 一方、女性6人の追試では有意差は再現されず、日本の2025〜2026年調査も示したのは暑熱症状との関連まで。
- 脱水を単一原因にせず、証拠の強さを分けて読む。
暑い日のラウンドで「水分が足りないとショットまで乱れるのか」。この疑問に、かなり具体的な数字を出した実験がある。
2012年、低ハンデの男性7人を対象にした無作為化・順序相殺実験では、12時間の水分制限で体重が平均1.5%低下した。脱水条件では、平均ショット距離が114.6m。通常の水分条件では128.6mだった。目標からのずれは7.9m対4.1m、距離判断の誤差も8.8m対4.1m。少人数の人工的な条件ではあるが、距離だけでなく方向と距離判断まで同時に悪化している。
ここだけを見ると、「体重が1.5%落ちればショットも同じくらい落ちる」と言いたくなる。だが、その結論は強すぎる。
2019年には、女性エリートゴルファー6人を対象に、12時間の水分絶食による脱水条件と水分を満たした条件で模擬4ホールを比較した無作為クロスオーバーの予備研究が行われた。7番アイアンの距離は141.9m対144.2mと短い傾向だったものの、条件と時間の組み合わせに有意差は確認されなかった。しかも6人中5人は開始時点ですでに脱水判定だった。2012年の大きな差が、そのまま再現されたわけではない。
つまり、軽い脱水がゴルフの動作や判断を乱す可能性はある。ただし、1.5%という数字から誰にでも同じ低下幅を予測できる段階ではない。
実戦に近いところでは、日本のアマチュアを対象にした2025年、2026年の調査が別の景色を見せている。
2025年の研究は、熱疲労に関連する症状があった194人と、対照252人を比較した。自己認識した脱水は症状との関連が強く、調整後のオッズ比は4.65だった。ただ、同じ分析では睡眠不足が4.38、食欲低下が4.32。暑い日の不調は「水分だけ」の話ではなかった。
2026年の研究では、競技志向485人とレクリエーション259人を分けて分析した。自己認識した脱水と食欲低下は両方の群で関連したが、競技志向では睡眠不足が2.27、精神的ストレスが1.66、レクリエーションでは月11ラウンド以上が3.63など、関連する要因は一部異なった。
ここで重要なのは、2012年の実験と2025〜2026年の日本調査を同じ証拠として混ぜないことだ。2012年は水分制限という介入を行ってショットや判断の変化を見た。一方、日本の2研究は質問票を含む観察研究で、「脱水したと感じた人ほど暑熱症状が多かった」という関連を示している。気温、湿度、歩行量、年齢、服装などの影響も残り得るため、脱水が症状を起こしたと断定することはできない。
現在の暑熱対策も、そこまで細かなゴルフ専用処方にはなっていない。環境省の暑さ指数の運動指針では、31以上で原則運動中止、28以上31未満では激しい運動を避け、10〜20分おきの休憩と水分・塩分補給、25以上28未満では積極的な休憩と適宜の補給を示している。これは一般的なスポーツ向けの基準で、ゴルファーが何mlを何分おきに飲めばショット低下を防げる、という規則ではない。
2026年9月12日時点でも、ゴルファーを対象に特定の水分量や摂取タイミングを無作為化し、ショット、スコア、熱疲労の改善を確認した2024〜2026年の直接介入研究は確認できていない。
結局、軽い脱水は無視してよい要因ではない。小規模実験ではショット距離、方向、距離判断のすべてが悪化し、日本の実戦調査でも暑熱症状との関連が繰り返し出ている。ただ、同じ数字が全員に再現されるわけでも、暑い日の不調を脱水だけで説明できるわけでもない。
「水分不足はショットを乱し得る」は言える。しかし「体重が1.5%落ちたら必ず14m飛ばなくなる」までは言えない。その間にある差こそ、今わかっていることと、まだわかっていないことの境界だ。
出典:pubmed.ncbi.nlm.nih.gov(2・3) / mdpi.com / wbgt.env.go.jp / media.japan-sports.or.jp