活動消費880キロカロリーでもヘッド速度差なし
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 熟練男性16人が同じ18ホールを歩行とカートで回る無作為クロスオーバー試験。
- 歩行は平均1万7007歩・活動消費880キロカロリー、カートは6274歩・456キロカロリーだったが、クラブヘッド速度やボール速度に有意差はなかった。
- ではカートは競技上有利なのか。
18ホールを歩けば、カートに乗るより疲れる。それ自体は意外ではない。
意外なのは、その差がかなり大きかったのに、クラブヘッド速度とボール速度には明確な差が出なかったことだ。
2025年末に公表された無作為試験では、平均ハンデ2.3の熟練男性ゴルファー16人が、同じ18ホールを「歩行+キャディー」と「カート+キャディー」で各1ラウンド回った。順番を無作為に入れ替え、同じ選手の中で2条件を比べる試験だ。
歩数は約2.7倍、活動消費はほぼ2倍
歩行で記録されたのは平均1万7007歩、活動消費エネルギー880キロカロリー。カートでは6274歩、456キロカロリーだった。
歩行では心拍も高く、ラウンド終了時の自覚的な運動強度も大きかった。さらにジャンプ測定では、跳躍高、ピークパワー、正味力積の低下が歩行後に大きく、神経筋の疲労もより強く出ていた。
つまり、カートが減らしたものははっきりしている。歩く量、活動消費エネルギー、心拍負荷、主観的なきつさ、そして一部の疲労指標だ。
ところが、ショットの数字は同じようには動かなかった。
疲れたのに、ヘッド速度は落ちなかった
クラブヘッド速度の条件差はp=0.47で、統計的に明確な差とは扱えなかった。ボール速度にも有意差は確認されていない。キャリーもラウンド全体では条件差が小さく、p=0.49で有意ではなかった。
12番ティーでは歩行側のキャリー低下が観察されたが、研究者自身が単一ホールの所見として慎重な解釈を求めている。
ここから言えるのは、「歩いても疲れない」ではない。実際には歩行側の身体負荷は大きく、疲労指標も悪化した。
言えるのはもっと狭い。少なくともこの16人が1ラウンド回った条件では、その大きな身体負荷の差が、クラブヘッド速度やボール速度の明確な低下としては現れなかった。
カートでスコアが良くなるかは、まだ分からない
ここがこの試験でいちばん重要な境界だ。
最終論文は、総スコア、終盤のショット精度、客観的な意思決定成績を主要な競技結果として報告していない。認知面も主に主観的な負荷と参加者の認識を扱っている。
したがって、「カートなら18番まで集中できる」「歩くと終盤に曲がる」「カートならスコアが良くなる」といったところまでは、この研究からは言えない。
事前登録では16〜30人の男女を想定し、認知課題、筋力、自覚的運動強度、ドライバー速度、体温なども予定されていた。実際の登録は16人で、最終論文は男性のみだった。事前登録に含まれた一部の認知・スコア関連項目も、最終論文の主要結果としては報告されていない。
研究は事前登録されている一方、DPワールドツアー、R&A、欧州女子ツアーが資金を提供し、一部著者はツアーとの業務関係を開示している。この関係も結果を読む際の前提に含める必要がある。
4日間競技へ、そのまま伸ばせない
もう一つ大きいのが時間軸だ。
試したのは各条件1ラウンドずつ。3日、4日と歩き続けたときに疲労が積み重なり、ショット精度やスコアへ差が出るかは分かっていない。
試験は約19度の環境で、若い熟練男性16人が対象だった。高温多湿、女性、高齢者、障害のあるゴルファーへ同じ結果をそのまま当てはめることもできない。
2026年9月までに、この試験を複数日条件やそうした別の参加者層で直接再現した後続研究は確認されていない。
だから現時点の答えは、「カートが有利か、不利か」の二択ではない。
カートは身体負荷を大きく減らした。だが、1ラウンドのクラブヘッド速度やボール速度を明確に高めた証拠は出なかった。そしてスコア、終盤の精度、複数日にわたる競技では、まだ答えがない。
研究が規則の答えになるわけではない
R&Aの2026年モデルローカルルールG-6では、委員会は承認された場合などを除き、ラウンド中の動力付き移動手段を禁止できる。
今回の研究だけで、その規則の是非は決められない。規則が扱う競技条件や公平性と、この試験が測った1ラウンドの身体負荷や一部のパフォーマンス指標は、同じ問いではないからだ。
むしろ面白いのは、身体の疲れとショット出力が同じ速度で悪化するとは限らなかった点にある。
歩行では1万7007歩、活動消費880キロカロリー。カートでは6274歩、456キロカロリー。それだけ差がついても、クラブヘッド速度とボール速度には明確な差が見えなかった。
カートで確実に減ったのは「負荷」だった。「競技成績まで有利になるか」は、まだ別の問いとして残っている。
出典:doi.org / clinicaltrials.gov / The R&A