高いボールほど飛ぶ、ではなかった
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2018年の市販13モデルを同じ初速・打出角・回転数で比べると、計算キャリーの最長と最短には18m差が出た。
- しかも最長の2モデルは高価格帯ではない。
- 価格では見えないゴルフボールの空力差を、実験条件と限界から読み解く。
ゴルフボールは、高いものほど飛ぶのか。
2018年の空力研究では、その単純な順番にはならなかった。市販13モデルの揚力と抗力を測り、まったく同じ打ち出し条件から飛ばした計算では、最長と最短のキャリーに18mもの差が出た。しかも、最も長かった2モデルは高価格帯ではなかった。
ポイントは、価格ではなく「空中に出た後の動き」だった。
13モデルを同じ条件にそろえた
研究では、キャロウェイ、タイトリスト、テーラーメイド、ブリヂストン、スリクソン、ウイルソン、ナイキ、カークランドなどを含む13モデルを選んだ。市場での人気だけでなく、同じメーカー内でも価格帯が異なるモデルを含めている。
まず専用の投射機を使い、球速18〜91m/s、回転数1500〜4500rpmの範囲で各ボールの揚力係数と抗力係数を測定した。
そのうえで、初速71.5m/s、打出角6度、バックスピン3000rpm、回転数は毎秒4%減少するという同じ条件を全モデルへ与え、測定した空力係数を使って軌道を計算した。
つまり、この比較では「高い球だから初速が出た」「あるボールだけクラブとの相性が良かった」という要素は最初から入っていない。違うのは、空中で受ける揚力と抗力だ。
同じ初速でも18m開いた
計算されたキャリーの最長と最短の差は18mだった。
これは、ボールが空中で受ける力がモデルごとに同じではなかったことを意味する。ディンプルや表面設計などによって生まれる空力特性の違いが、速度や回転数の変化に応じて軌道へ積み重なり、同じ初期条件でも飛距離差になった。
そして、研究内で最長だったのはブリヂストン B330-RXとカークランド2017。この2モデルの計算キャリー差は0.5m以内だった。
研究内の価格区分では、B330-RXは中価格、カークランド2017は低価格に分類されている。一方、タイトリスト Pro V1/Pro V1xやテーラーメイド TP5Xは高価格帯だった。
少なくとも、この13モデルでは価格と計算キャリーに強い相関は確認されなかった。「高価格だから空力的にも長く飛ぶ」という並びにはならなかったわけだ。
18mは「実際に打った飛距離差」ではない
ここはかなり重要だ。
18mは、人が13種類のボールをドライバーで打ち比べて出た差ではない。測定した揚力・抗力係数を、全モデル共通の初速・打出角・回転数へ入れて算出した計算キャリーの差だ。
そのため、クラブとの衝突で生まれる初速差、プレーヤーごとの打ち出し条件、打感、グリーン周りのスピン性能、耐久性などは、この18mには含まれていない。
標本も大規模ではない。各モデルは2球を使い、各速度条件で1球につき3発、計6発を平均している。製造ロット全体のばらつきを調べた試験でもない。
価格は、飛距離の代わりにはならない
この研究から言えるのは「安いボールの方が飛ぶ」でも、「高いボールに価値がない」でもない。
示されたのはもっと限定的で、同じ初速・打出角・回転数から出ても、ボールごとの空力特性だけで計算キャリーに大きな差が生まれ得ること。そして、その差は価格順には並ばなかったことだ。
逆に言えば、値札だけでは空中での性能は読めない。
ただし、これは2018年に選ばれた13モデルの結果だ。2026年の現行ボールを同じ順位に並べる材料にはならない。ボール選びで本当に必要なのは「高いか安いか」ではなく、自分の初速・打出角・回転数で、そのボールがどう飛ぶかを見ることだ。
出典:mdpi.com