砲弾を追ったレーダーはゴルフへ
GOLF DNA編集部🇿🇦

3行まとめ
- 砲弾を40km超追うために磨かれた3次元レーダーは、クリケットとテニスを経てゴルフへ移った。
- 防衛由来の追跡技術が何を残し、何を作り替えたのかを追う。
- FlightScopeのゴルフ用弾道計測技術の原点をたどると、練習場ではなく砲弾に行き着く。
FlightScopeのゴルフ用弾道計測技術の原点をたどると、練習場ではなく砲弾に行き着く。
FlightScopeの公式沿革では、アンリ・ジョンソンが1989年、防衛産業向けの飛翔体計測を目的に会社を設立した。2026年の創業者インタビューで本人が振り返った対象は、南アフリカのG5、G6 155mm砲。砲弾を40km超先まで追い、計測システムには0.01%以内の校正精度が求められたという。
ここで必要だったのは、飛んでいる物体の速度だけを見ることではない。ドップラー効果で速度を測り、複数のアンテナ情報から角度を捉える位相配列追跡を使って、飛翔体が空間のどこをどう進むかを追う。2011年の独立した技術記事も、ジョンソンが砲弾の速度と弾道を測るレーダーを開発し、その経験をスポーツへ転用した流れを記録している。
転用先はいきなりゴルフではなかった。同社の説明では、1990年代にまずクリケット、続いてテニスへ進み、1990年代後半にゴルフボールの追跡へ広がった。独立資料でも、1992年のクリケット向け展開からテニス、ゴルフへ移った技術の流れが確認できる。
ゴルフ用として同社が大きな節目に置くのが、1999年の「トーナメント・システム」だ。同社の製品史では、クラブヘッド速度、ボール速度、打ち出し角の3項目を測ったとしている。同社はこれを先駆的な製品として説明するが、1999年という発売年や「世界初」という位置づけはメーカー史を超えて独立確認できていない。独立資料で確認できるのは、2001年の公開実演、2004年のPGAマーチャンダイズショーでの紹介以降だ。
重要なのは、防衛用の仕組みをそのまま小さくしてゴルフ場へ持ってきたわけではないことだ。受け継がれたと確認できるのは、ドップラーによる速度計測、角度を含む3次元追跡、そして飛翔中の物体を連続して測るという技術の芯。ゴルフ向けには打ち出しやクラブ、スピンなどの指標が加わり、計測対象も用途も作り替えられていった。
さらに現在の機器は、レーダーだけでもない。ジョンソンを発明者に含む、2015年を優先日とする特許は、3次元ドップラーレーダーの距離・速度情報と、同期カメラが捉えた角度や画像情報を校正して組み合わせる仕組みを開示している。2025年に発表され、2026年時点でも展開されるX3Cも、3次元ドップラーレーダーと同期画像処理を組み合わせる方式を採る。
会社の拠点も変わった。FlightScopeは2008年に米国フロリダ州オーランドへ本社を移している。それでも現在の製品まで残っている核は、1989年の防衛用途で求められた「飛んでいる物体を空間の中で追う」という発想だ。
砲弾を40km超追っていた技術がゴルフへ渡った時、残ったのはレーダーそのものだけではなかった。速度と方向を同時に追い、飛行全体をデータにする考え方が残り、ゴルフ特有の指標と画像処理がその上へ積み重なった。現在のFlightScope製品は、防衛用レーダーの縮小版というより、その追跡技術をゴルフ用に何度も作り替えた結果なのである。
出典:FlightScope(2・3・4) / iol.co.za / Golf Business News / patents.google.com / flightscope.co.za