池のロストボール、潜水回収は商業潜水
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 池のロストボールは、コースとの取り決めの下で回収され、洗浄・検査・等級分けを経て中古球へ戻る。
- 回収方法は潜水だけではないが、米国でスキューバ潜水を使う場合は商業潜水基準の対象となり、待機潜水者やライン管理などが求められる。
- 2021年の死亡事故と現行OSHA基準から、単なる「球拾い」ではない仕事の実態を追う。
ゴルフ場の池に沈んだロストボールは、誰かが拾えばそのまま中古球になるわけではない。
米国の資料を見ると、回収方法は潜水だけではない。2014年の米労働統計局は潜水隊とローラーの両方を紹介し、2026年に確認できる回収事業者にはトラクターで湖や池から球を回収するサービスもある。
一方、スキューバ潜水で池に入って回収する場合は、単なる「球拾い」ではなく商業潜水として安全基準の対象になる。2014年の職業紹介、2021年の死亡事故、2026年時点の現行安全基準をつなぐと、池の底から中古球売り場までの流れと、潜水回収の重さが見えてくる。
まずゴルフ場と「どう回収するか」を決める
米労働統計局が2014年に紹介したゴルフボールダイバーの仕事では、回収業者はまずコース管理者と回収条件を交渉する。
報酬は現金の場合もあれば、回収したボールそのもの、またはその組み合わせになる場合もある。つまり、池の球は勝手に拾って持ち帰るものではなく、ゴルフ場との契約・取り決めの中で回収される。
同資料の事例では、1コースに4〜12の池があり、1日8〜10時間潜り、複数日かけて作業する場合がある。潜水隊は通常3人で、2人が濁った水の中を手探りで回収し、1人が地上で安全確認や誘導を担う。一方、池によってはローラーを使う方法も紹介されている。
ただし、これらは米国全体の平均人数や平均作業時間を示す統計ではない。職業紹介の具体例として示された数字だ。
拾った後に洗い、選び、再び売り物にする
池から上げた時点では、まだ再販工程の途中だ。
2026年に確認できる米国の回収事業者Rawhide Golf Suppliesは、ゴルフ場と日程を調整し、トラクターで湖や池から球を回収するサービスを案内している。回収球は施設へ運び、洗浄し、状態を検査し、等級分けを行い、プロショップなどで再販できる形へ戻す。
2014年の米労働統計局も、回収した球を洗浄・再包装し、再販する流れを紹介していた。
資料の年代は離れているが、「回収→洗浄→選別→再販」という後工程は2026年にも確認できる。ただし、回収方法そのものは潜水に限られない。潜水は中古球の供給網で使われる方法の一つだ。
なぜ「池の球拾い」に待機潜水者が必要なのか
理由は、ゴルフ場の池であっても、スキューバで水中作業をするなら商業潜水であることに変わりがないからだ。
2026年現在の米労働安全衛生局の商業潜水基準では、商業スキューバ作業中に待機潜水者を用意することが求められている。
水中の潜水者は、地上からラインで管理されるか、水中で別の潜水者と継続して互いを視認できる状態にする必要がある。
米労働安全衛生局の解釈では、商業スキューバの空気潜水は原則として、責任者、待機潜水者、ラインで管理される潜水者という最低3人の役割を前提に説明されている。条件によって役割を兼ねられる場合はあるが、「一人で池に入って球を拾えばよい」という仕事ではない。
濁った池での回収という見た目の素朴さと、安全管理の重さにはかなり差がある。
26歳の作業員が入社3日後に死亡した
その安全基準がゴルフボール回収に実際に適用された例が、2021年12月にフロリダ州で起きた死亡事故だ。
米労働省によると、ゴルフ場の池でボールを回収していた26歳の作業員が溺死した。入社から3日後だった。
調査後、米労働安全衛生局は勤務先に12件の重大違反を指摘した。
指摘されたのは、潜水作業や機材についての訓練、救命処置、継続的な監視、機器点検、呼吸用空気、深度計、通信、潜水前の手順、安全手順書などだ。最初に提案された罰金は5万5870ドルだった。
この事故を見るときに重要なのは、「ロストボール回収業は危険な仕事だ」と一件の事故から業界全体へ広げないことだ。この記録が示しているのは、ゴルフ場の池での潜水回収にも商業潜水の安全基準が実際に適用され、違反が調査対象になったという具体例である。
提案5万5870ドル、その後は2万7935ドル
処分の数字も、その後更新されている。
2026年に確認した米労働安全衛生局の検査記録では、当初の「重大違反12件+その他1件」、提案罰金5万5870ドルに対し、2022年6月28日の非公式和解後は「重大違反9件+その他1件」、現在の罰金額は2万7935ドルと表示されている。
個別の違反項目には2022年6月28日の最終命令と表示されている。一方、検査記録ページ全体の事件状況は2026年確認時点でも「OPEN」のままだ。
そのため、「事件全体が完全に終結し、最終的に2万7935ドルで確定した」とまでは言えない。ここは提案時の数字と、現在表示されている数字を分けて読む必要がある。
中古球の裏側には、回収と潜水の専門作業がある
池から回収されたロストボールが再び店頭へ戻るまでには、ゴルフ場との取り決め、回収、輸送、洗浄、検査、等級分け、再販という工程がある。回収方法にはローラーやトラクターもあり、すべてが潜水ではない。
ただし、潜水で回収する場合はボールを拾うだけの軽作業ではない。2026年の米国では商業スキューバの安全基準が適用され、待機潜水者や地上とのライン管理、監視や手順が求められる。
だから中古のロストボールは、「池から拾ってきた安い球」というだけではない。
池の底に沈んだ一球がもう一度商品になるまで、その間には回収契約と選別の仕事がある。そして潜水を使う現場では、最も見えにくい場所に商業潜水という専門作業が入っている。
出典:bls.gov / dol.gov / osha.gov(2・3・4) / rawhidegolfball.com