「打感」は耳でどこまで変わるのか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2006年のパッティング研究では鋭く大きい打音が「硬い」「球離れが速い」という評価と対応し、2016年には音の周波数成分を変えると好みが、振動を変えると音の印象が動いた。
- 2026年のクラブも音と振動を設計対象にしている。
- 打感は素材だけでは決まらない一方、音だけで決まるわけでもない。
「打感」というと、フェースの素材や手に返る振動を思い浮かべやすい。だが研究を追うと、耳に届く打音も「硬い」「柔らかい」「球離れが速い」といった感覚を判断する材料になっている。
どこまで耳に左右されるのか。答えは、評価を動かすほど影響するが、音だけで打感が決まるわけではない、だ。
2〜4キロヘルツにボールの違いが出た
2006年のパッティング研究では、5種類のボールと2種類のパターを使い、打音と主観的な打感の関係を調べた。
測定では、2〜4キロヘルツ付近のピークがボールの圧縮特性と関係した。一方、0〜2キロヘルツの成分は、パターの種類や打点位置への依存が大きかった。
つまり、ひと口に打音といっても、すべてがボールだけで決まるわけではない。ボールの性質が表れやすい帯域と、ヘッドや当たり方の影響を受けやすい帯域が混ざっている。
同じ研究の主観試験には、ハンディキャップ0〜12の右打ち男性10人が参加した。5球種の全10組み合わせを比較し、6メートルのパットで各組み合わせ10球ずつ打っている。ボールのロゴは隠された。
その結果、最も鋭く、大きい音と評価されたボールは、「硬い」「フェース離れが速い」という評価とも対応した。測定上も、そのボールは音の大きさと鋭さが高く、スペクトルのピークが高周波側にあった。
ただ、10人の感じ方が完全にそろったわけではない。参加者間の一致度は、鋭さが0.31、硬さが0.32だったのに対し、大きさは0.14、球離れの速さは0.11だった。音と感覚は結びついていても、誰もが同じように感じるわけではないことも、この数字に表れている。
振動より音との関係が強かった研究もある
同じ2006年に発表された別の研究では、スポーツ用具の打撃時に生じる音、直線振動、ねじり振動と主観評価を比較した。その条件では、主観的な感触との関係は振動より音のほうが強かった。
ここで重要なのは、この研究が音だけを差し替え、振動だけを固定した実験ではないことだ。測定値と主観評価の関係を比べた結果であり、「音を変えれば必ず打感が変わる」とまでは言えない。
では、音そのものを変えたらどうなるのか。
2016年は音と振動を加工して確かめた
2016年の日本機械学会の研究では、音と振動を人工的に変えて評価する実験まで踏み込んだ。
20代の12人に対し、3種類の音と3段階の振動を組み合わせた9種類の刺激を提示した。音はイヤホンとイヤーマフで聞かせ、振動は固定したシャフト付近の加振器から伝えている。振動を小さくした条件では、「綺麗さ」や「甲高さ」の評価が高くなる変化が確認された。
さらに30〜50代のゴルフ経験者10人を対象に、音量を86.8デシベルにそろえたうえで、2000〜3800ヘルツの目立つピークだけを削った音と、2.6倍、3.7倍、4.8倍に強めた音を比較した。
最も好まれたのは、そのピークを削った音だった。音量そのものをそろえても、周波数成分の作り方で好みが変わったことになる。
2006年の研究が主に「音と打感が一緒に動く」関係を示したのに対し、2016年は加工した音と振動を使い、知覚が変わるところまで確かめた。ただし、これはイヤホンや加振器を使った実験で、実際のラウンドで長期間クラブを使ったときの評価を追ったものではない。
2026年のクラブも、音を設計している
この考え方は研究室だけに残っていない。
2026年のピン「G LE4」ドライバーは、クラウンとソール内部のリブでインパクト時の振動を抑え、必要以上の高音を避けるサウンド設計を公式に説明している。
スコッティ・キャメロンの2026年「ファントム」も、炭素鋼フェースの振動を減衰させる性質とフェースの削り方によって音を柔らかくしながら、打ったときの情報は残す設計を掲げている。
ここで研究結果とメーカーの説明は分けて見る必要がある。メーカーが音や振動を意図的に設計していることは確認できるが、それ自体が2006年や2016年の研究を製品上で再現し、性能向上まで独立して証明したことにはならない。
それでも、2026年のクラブ設計で打音が明示的な調整対象になっている事実は、「打感は素材だけの話ではない」ことをよく示している。
耳は打感をつくる一つの入力になっている
研究から見える範囲では、ゴルファーの打感は手だけで決まっていない。鋭さや周波数成分と「硬さ」「球離れの速さ」の評価が結びつき、加工した音でも好みが動いている。
一方で、音がすべてを支配するわけでもない。素材、振動、打点などは残り、感じ方の個人差も大きい。
だからメーカーが設計しているのは、単なる「いい音」ではない。ヘッドの構造や素材、振動、フェースの削り方まで使いながら、耳と手に同時に届くインパクトの印象を整えている。
打感はフェース素材の名前だけでは説明しきれない。少なくとも確認できた研究では、耳もその一瞬を判断する入力の一つになっている。
出典:pubmed.ncbi.nlm.nih.gov / journals.sagepub.com / jstage.jst.go.jp(2) / clubping.jp / titleist.com.au / researchgate.net / Titleist