カップに沈んだ球がなぜ戻る? 2025年研究が分けた2種類のリップアウト
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 「カップに蹴られた」ように見える球は、力学的には同じ現象ではない。
- 2025年の研究は、縁を回って外れる型と、いったん穴へ沈んでから戻る型を分けて解析した。
- 180度を超えて縁を回る条件、落下エネルギーが回転へ移って球が再び上がる仕組み、そして実戦の最適速度までは示していない限界を整理する。
「入った」と思った球が、カップの縁を回って外へ出る。さらに不思議なのは、いったん穴の中へ沈んだように見えた球が、底へ落ちきらず再び外へ戻る場面だ。
2025年に発表された力学研究は、この「リップアウト」を一つの現象として扱わず、少なくとも2種類に分けた。縁の上を回って外れる「リム・リップアウト」と、穴の中へ下がってから戻る「ホール・リップアウト」だ。
縁を半周以上しても、まだ外れる
リム・リップアウトでは、球の重心はグリーン面より下へ入らない。球はカップの縁に沿って回りながら、穴へ落ち込む動きと、縁方向へ進む動きのせめぎ合いの中で外へ出る。
研究が示したのは、「この速度を超えると180度回る」という単純な境界ではない。カップ中心からどれだけ横へずれて入るかと、球の速度の組み合わせで軌道が決まる。落ちる側と外れる側の境界に近い条件では、理論上、球が縁を回る角度は非常に大きくなり得る。180度を超えて回ってから外れる軌道も、その延長として説明できる。
つまり、見た目には「もう入るはずだった」のに、縁を長く回ったこと自体はホールインを保証しない。
穴へ沈んだ球が、なぜ上へ戻れるのか
もう一つのホール・リップアウトでは、球の重心がグリーン面より下へ入り、球はカップ内壁に沿って動く。それでも条件がそろえば、底へ触れないまま外へ戻る。
鍵になるのが、位置エネルギーと回転エネルギーのやり取りだ。球が穴の中へ下がると位置エネルギーを失う。その一部が、内壁に沿って動く球の回転エネルギーへ移る。球の姿勢と回転の向きが変わると、このエネルギー移動が逆向きになり、球が再び縁の方向へ上がれる状態が生まれる。
ただし、どんな球でも戻るわけではない。論文の解析では、ホール・リップアウトが成立する初期条件の範囲は小さく、球がカップの底へ触れないことが必要だった。穴の中へ入った球に必要な回転がなければ、そのまま落ち続ける。
モデルは実際のカップ寸法に近いが、天然芝そのものではない
研究では、球を剛体の球、グリーンを水平面、カップを鉛直な円筒として扱っている。代表値は球半径0.021m、カップ半径0.054m、深さ0.102m。現行のゴルフ規則が定めるカップ直径108mm、深さ101.6mm以上に対応する寸法だ。
一方で、基本モデルは転がり接触と無滑りを前提にし、空気抵抗を無視する。滑りや接触が外れる条件、摩擦は追加的に扱われているが、天然芝のばらつき、湿度、カップ縁の変形まで再現した実地試験ではない。
2026年9月までの追加確認でも、この理論を独立に実地再現した研究は確認できていない。したがって、この研究から「何メートルのパットはこの速さなら入る」「この速度ならリップアウトしない」といった攻略値を出すことはできない。
それでも、この研究が明らかにした違いは大きい。カップの縁を回って外れる球と、いったん穴へ沈んでから戻る球は、見た目が似ていても力学は同じではない。前者は縁を回る運動と落下の競争、後者は穴の中での位置エネルギーと回転エネルギーの交換で説明される。
「入ったように見えて出た」という一瞬の出来事の中に、実は2つの別のリップアウトが隠れている。
出典:pmc.ncbi.nlm.nih.gov / research-information.bris.ac.uk / The R&A