20万個の球を548地点で追ったトップゴルフ 「誰の球か」を得点へつなぐタグとカメラの現在地
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- トップゴルフの自動得点は、球の中の無線識別タグと打席・ターゲットの読取機をつなぎ、「誰が打った球か」を追う仕組みから発展してきた。
- 2011年のテキサス州アレン施設では約20万球と548の読取地点を運用した記録がある。
- 2026年はカメラ式のトップトレーサーへの移行が進む一方、タグとカメラを併用する会場も残る。
トップゴルフで球を打つと、ターゲットへの着弾がすぐ得点になる。
画面だけを見ると単純なゲームに見える。だが、裏側では「この球を誰が打ったのか」を識別し、どこへ入ったかを読み取り、その情報を得点へ結びつける必要がある。
2011年のテキサス州アレン施設では、そのために約20万個の球と548の読取地点を使っていたと報告されている。2026年現在はカメラ式のトップトレーサーへの移行が進んでいるが、無線識別タグが一斉に消えたわけではない。
2006年の特許は、球の中へ識別装置を入れる発想
トップゴルフ系の2006年米国特許は、ゴルフボール内部へ衝撃に耐える識別装置を組み込む構造を扱っている。権利はその後、トップゴルフ・システムズへ移った。
狙いは、見た目が同じ大量のボールを一球ずつ識別できるようにすることだ。
トップゴルフ自身も2012年の公式発表で、球内のマイクロチップによってショットの正確性や距離を追跡し、ターゲットへの着弾から得点を付ける仕組みを説明している。
つまり自動得点の出発点は、「球がどこへ行ったか」だけではない。「その球が誰の一球なのか」を失わないことにある。
2011年アレン施設は約20万球、548の読取地点
仕組みを具体的に追えるのが、2011年5月に開業したテキサス州アレンの施設だ。
無線識別技術の専門媒体による当時の取材では、受動型の無線識別タグを入れたボールが約20万個あり、読取地点は548。内訳は94の打席側と、フェアウェイ側の458地点だった。
流れはこうだ。
まず磁気カードでプレーヤーを識別する。各打席のボール供給機が、払い出す球の固有番号をそのプレーヤーと打席へひも付ける。球がターゲットへ入ると、そこで同じ固有番号と着弾した場所を再び読み取る。最後に裏側のシステムが得点を計算し、打席の画面へ返す。
「人→打席→球→着弾地点→得点」という鎖を、一球ごとに切らさない設計だった。
同施設では、最大稼働時に1時間1万件を超える球の読み取りを処理したと報告されている。
ただし、約20万球と548地点という数字はアレン施設の実装記録であり、すべてのトップゴルフ会場が同じ構成だったという意味ではない。
大量運用では「読めない球」を見つける仕組みも必要になる
タグ入り球を数十万個単位で回すと、得点計算だけでなく保守も問題になる。
アレン施設の実装記録では、タグが少なくとも600回の打撃に耐えるかを試験し、読み取り不能になった球を分ける装置も使われていた。
さらに2020年にトップゴルフ・インターナショナルへ付与された特許は、球内タグを高速検査し、読み取り不良の球を自動的に除外する装置を扱う。特許本文では、それ以前の装置が約68球/分を検査したとされている。
一球を識別できても、その識別が途中で壊れれば得点システムは成立しない。大量の球を循環させる施設では、「正しく読める球だけを戻す」工程まで運用の一部になる。
なお、タグを埋め込んだことが球の飛び方へ影響しないと示す独立した定量試験は、今回の材料では確認できていない。耐久性の記録と飛行性能の検証は分けて考える必要がある。
2026年はカメラへ移行中。ただし全会場が同じ段階ではない
その後、トップゴルフは自社のカメラ追跡技術「トップトレーサー」を広げてきた。
トップトレーサーは複数のカメラで球の飛行軌跡を追い、速度、距離、角度、精度などを表示する。2026年6月、最高経営責任者のデービッド・マキリップスは、長年使ってきた無線識別タグ入り球から、今後はトップトレーサーへ切り替えていく方針を説明した。
しかし、2026年9月22日に確認された米国公式FAQは、トップトレーサーについて「多くの会場にあるが、まだすべてではない」という状態を示している。
つまり、全会場でタグ方式からカメラ方式への置き換えが完了したわけではない。
ウィーンではタグと14台のカメラを同時に使う
現在の併用例もある。
トップゴルフ・ウィーンの現行案内では、すべての球に無線識別タグを入れ、約25万個のタグと約640台の読取機でプレーヤーとのひも付けやターゲットへの着弾登録を行うとしている。
同じ会場には、14台の高速カメラを使うトップトレーサーも設置されている。
少なくともこの会場では、タグとカメラは二者択一ではない。タグは球とプレーヤー、ターゲット側の情報を結び、カメラは飛行そのものを追う。両方を同時に使う運用が2026年にも確認できる。
一方、米国全会場のうち何施設にタグが残っているのか、いつ全面移行が終わるのかは公表されていない。2025年にもトップゴルフの無線識別球に関する特許は発行されているが、特許があることと、全会場でその方式を現役利用していることは別だ。
自動得点の裏側は「球を追う」から「ショット全体を見る」へ
トップゴルフの技術は、単純に古いタグを新しいカメラへ交換した、と整理するには早い。
2011年のアレン施設では、誰の球かを固有番号で追い、ターゲットで再読取して得点へ変える仕組みが大規模運用されていた。2020年には読み取り不良球を高速で見つける技術まで特許化された。
2026年になると、トップトレーサーで球の軌跡や速度、距離まで扱う方向へ移行している。ただし公式情報が示す現在地は、全会場一斉の置換ではなく、会場ごとに導入段階が違う状態だ。実際にウィーンではタグとカメラが同時に動いている。
画面に一瞬で出る得点の裏には、20万個規模の球を「誰の一球か」まで追う仕組みがあった。そして現在は、着弾を識別する仕組みから、ショットの飛び方そのものまで測る仕組みへ、少しずつ重心が移っている。
出典:patents.google.com(2・3) / press.topgolf.com(2) / rfidjournal.com / topgolf.com(2) / dmagazine.com / topgolfwien.com