5勝の年にドライバーを抜いたアリヤ・ジュタヌガーン 「狭く長くない」コースで3番ウッドと2番アイアンを選んだ理由
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2016年に5勝と初メジャーを挙げたアリヤ・ジュタヌガーンは、多くの週でドライバーをバッグから外した。
- 米女子ツアーと全米ゴルフ協会の当時資料、本人発言をたどると、理由は飛距離不足ではなく、コース幅と必要距離、14本の配分だった。
- 全5勝が同じ構成だったわけではない点も切り分ける。
2016年、アリヤ・ジュタヌガーンは米女子ツアーで5勝を挙げ、初メジャーを制し、年間最優秀選手、CMEグローブ、賞金女王まで獲得した。
そのシーズンに、彼女は多くの週でドライバーをバッグから外していた。
飛ばせないからではない。米女子ツアーの2016年最終統計では、ドライビング距離は平均263.7ヤードで22位。それでも最大飛距離を出せるクラブを外し、3番ウッドや2番アイアンをティーショットに使った。なぜ、それで勝負が成立したのか。
「一番飛ぶクラブ」より、そのコースで必要な14本
理由が最もはっきり見えるのが、2016年の全米女子オープン前の会見だ。
アリヤはドライバーを外し、長いパー3で必要になる3番アイアンと4番アイアンをバッグに残す考えを説明している。14本という上限の中で、最大飛距離を出す1本より、その週に使う可能性が高い番手を優先したわけだ。
同年5月のボルビック選手権では、米女子ツアー公式記事が、コースレイアウトを理由にアリヤが一週間ドライバーを打たなかったと伝えている。そして彼女はこの大会で、ツアー初優勝から3大会連続となる3勝目を挙げた。
9月の本人取材では、選択の基準をさらに具体的に話している。狭く、長すぎないコースではドライバーは必要なく、主に3番ウッドと2番アイアンを使うという考え方だ。シーズン終了時の取材でも、2016年は多くの週でドライバーをバッグに入れず、3番ウッドと2番アイアンを多用していたことが確認できる。
つまり、ドライバーを抜くこと自体が目的ではなかった。コースの長さに対してティーショットの距離が足り、しかも狭さを考えれば最大飛距離を毎回取りにいく必要がない。その条件なら、14本の一枠を別の番手へ回せる。アリヤの説明をつなぐと、そういうクラブ選択だったことが見えてくる。
3番ウッドと2番アイアンは「何ヤード飛んだ」のか
ここは数字を作ってはいけない部分だ。今回保存されている資料には、2016年の各大会で3番ウッドと2番アイアンが実際に何ヤード飛んだかをそろえて示す一次データはない。大会別の左右のばらつきも確認できていない。
確認できるのは、本人が「狭く、長すぎない」コースではドライバーが不要だと説明し、実際に3番ウッドと2番アイアンを主に使っていたこと。そしてドライバーでのシーズン平均距離が263.7ヤードだったことだ。
したがって、「3番ウッドなら何ヤードあればドライバーを抜ける」という一般的な境界線までは引けない。アリヤにとって、そのコースで必要な距離を満たしていた、というところまでが資料から言える範囲になる。
初メジャーもドライバーなし。ただし「5勝すべて」ではない
2016年の女子全英で、アリヤは自身初のメジャー優勝を果たした。同時期の本人取材を含む記事では、この大会もドライバーなしで勝ったことが確認できる。
ここまでを見ると、「ドライバーを抜いて5勝した」と一括りにしたくなる。しかし、それでは事実を一段飛ばしてしまう。
ボルビック選手権は米女子ツアーの一次資料でドライバー不使用を確認でき、女子全英も当時の本人取材で確認できる。一方、ヨコハマ・タイヤLPGAクラシック、キングスミル選手権、カナディアン・パシフィック女子オープンについては、今回の保存資料だけでは各週の14本すべての構成を確定できない。
カナダでの勝利がシーズン5勝目だったことは公式資料で確認できるが、それを「5勝すべてドライバーなし」と読み替えることはできない。
同じ理由で、ドライバーを抜いたから5勝できた、という因果関係も証明されていない。確認できるのは、5勝したシーズンと、ドライバーを外す選択を多くの週で採っていた事実が同時に存在することまでだ。
アマチュアがそのまま真似する話ではない
この事例から「曲がるならドライバーを抜けばいい」と結論づけるのも早い。
アリヤの選択が成立した前提は、3番ウッドや2番アイアンでその週に必要な距離を確保でき、コースが狭く、長すぎず、さらに14本の中で別の長いアイアンを必要としていたことにある。今回の資料には、一般ゴルファーへ同じ選択を当てはめた効果も、ドライバーと3番ウッドのばらつきを直接比較したデータもない。
2016年のアリヤが示したのは「ドライバー不要論」ではない。最大飛距離を出せるかではなく、そのコースで十分な距離はどこまでか、14本の枠をどこへ使うかまで含めてクラブを選ぶ。その結果として、ドライバーが最適な14本から外れる週が実際にあった、ということだ。