高校生45人のウォームアップ試験、腰痛の「人数」は5対8で有意差なし 「痛みの回数」は16対100
GOLF DNA編集部🇯🇵

3行まとめ
- 平均16歳の高校生45人を12週間追った無作為二重盲検試験では、ゴルフ専用ウォームアップ群と対照群で「一度でも腰痛を経験した人数」は5対8で有意差なし。
- 一方、同じ選手が複数回数えられる「腰痛エピソード」は16対100だった。
- 2026年の正式訂正版を基に、何が減った研究なのかを分けて読む。
高校生ゴルファーの腰痛予防を調べた12週間の試験で、結果は二つに分かれた。
ゴルフ専用ウォームアップを行った群で、一度でも腰痛を経験したのは5人。対照群は8人だった。この差は統計上、有意ではなかった。
ところが、12週間に報告された「腰痛エピソード」の総数は16対100。こちらは有意な差だった。
同じ研究なのに、なぜ「5対8」と「16対100」が並ぶのか。答えは、数えているものが違うからだ。
平均16歳、45人を23人と22人に分けた
対象は3校の高校生ゴルファー45人で、平均年齢は16歳。ゴルフ専用ウォームアップ群23人と対照群22人に無作為に分け、12週間追跡した二重盲検試験だった。
両群とも、ゴルフ活動の前に割り当てられたウォームアップを行うよう指示された。
介入群のプログラムには、リード側股関節の外旋筋ストレッチ、股関節と体幹の回旋、屈曲・伸展、側屈、体幹回旋を伴うフォワードランジ、スクワットジャンプなどが含まれ、各ゴルフ活動前に最低2セット行う設計だった。
今回確認した原著では、1回あたりの正確な所要時間までは明示されていない。
「腰痛になった人」は5対8、有意差なし
まず見るべきなのは、「一度でも腰痛を経験した人」の人数だ。
介入群は23人中5人、対照群は22人中8人。p値は0.279で、研究では統計上有意な差とはされなかった。
つまり、この45人の試験から「ウォームアップをすれば腰痛になる高校生そのものが減る」とまでは言えない。
ここを飛ばして16対100だけを見ると、効果を大きく読みすぎる。
16対100は「人」ではなく、繰り返した腰痛の回数
もう一つの指標が、12週間に起きた腰痛エピソードの総数だ。
介入群は16回、対照群は100回。オッズ比は0.157、p値は0.001未満で、この差は統計上有意だった。
この「エピソード」は人数ではない。同じ参加者が期間中に複数回腰痛を経験すれば、その都度カウントされる。
だから、この試験で強く差が出たのは「腰痛を経験した人がいるかどうか」ではなく、「期間中に腰痛が何度繰り返されたか」の方だった。
「腰痛になる人を6分の1にした」という読み方ではない。45人の高校生を12週間追った範囲で、自己申告された腰痛エピソードが介入群で少なかった、という結果だ。
2026年の訂正で変わった数字、残った数字
この研究は2025年8月に公表され、その後2026年6月20日に正式な訂正が出ている。
訂正版では、選手曝露数やウォームアップ実施数、遵守率、発生率などが修正された。介入群の選手曝露は1012、対照群は1051。ウォームアップ実施数は720対779で、遵守率は71.1%対74.1%だった。
訂正後の1000選手曝露あたりの腰痛発生率は、介入群15.8、対照群95.1。絶対差は1000選手曝露あたり79.3件だった。
一方で、記事の核心となる「腰痛を経験した人数5対8」と「腰痛エピソード16対100」は訂正版でも維持された。
そのため、この研究を読むときは古い曝露率や発生率ではなく、2026年の訂正版を基準にする必要がある。
なお、訂正版の曝露数は1012対1051、遵守率は71.1%対74.1%で、介入群だけ活動機会が極端に少なかったり、ウォームアップ実施率が極端に高かったりする並びではない。ただし、この二つの数字だけで結果に影響し得る要因をすべて除外できるわけではない。
予防効果と言えるのは、どこまでか
この試験には明確な範囲がある。
腰痛は12週間の自己申告で記録され、すべてのエピソードを詳細な臨床診断で確認した研究ではない。著者も、記憶違いや軽い症状の未報告があり得ることを限界として挙げている。
追跡期間も12週間。対象は平均16歳の高校生45人で、成人、高齢者、一般のアマチュアゴルファーで同じ結果になるかは調べていない。12週間を超えて効果が続くかも分からない。
したがって、この研究が示した予防効果を最も正確に言うなら、「高校生ゴルファー45人の12週間試験で、ゴルフ専用ウォームアップ群は自己申告の腰痛エピソードが少なかった」となる。
一度でも腰痛を経験した人数そのものは5対8で有意差がなかった。強い差が出たのは16対100という“繰り返した痛みの回数”だった。
この二つを分けて読むことが、この研究を過大にも過小にも評価しないためのポイントになる。