1機目は最高点まで、2機目は着地まで 米男子ツアーが始めた「打球の受け渡し」中継
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米男子ツアーのドローン中継は、2024年の動く空撮映像への軌跡表示から、2025年の着地点予測、2026年の2機連携へ進んだ。
- 打球1.2秒後から100ミリ秒ごとに予測を更新し、ペブルビーチでは1機目が最高点まで、2機目が着地まで追跡。
- どこまで実用化され、何がまだ非公開なのかを追う。
ゴルフ中継で「球を追う」役割は、固定カメラだけのものではなくなりつつある。
米男子ツアー(PGA TOUR)は2024年、BMWチャンピオンシップで、動くドローン映像に打球の軌跡などを重ねる「Live Drone AR」を導入した。PGA TOUR、Bolt6、CBS Sports、NBC Sports、Virtual Eye、Kaze Aerial Productionが共同で開発した技術で、同年にはツアーチャンピオンシップとプレジデンツカップへの展開も予定された。
そこから2年で、ドローンは「空から映すカメラ」から、打球を追い、着地点を予測し、別の機体へ追跡を引き継ぐ中継装置へ進んだ。
2025年、打球の「行き先」をライブで予測
次の大きな変化は2025年6月のRBCカナディアンオープンだった。
ここで初めて使われた「Smart Trace」は、ティーショットの1.2秒後から打球を追跡し、100ミリ秒ごとに最終的な停止地点の確率を更新する。予測に応じて画面上の軌跡表示も変化し、処理は録画後ではなくライブで行われた。
つまり、映像に「飛んだ軌跡」を重ねるだけではなく、球がまだ空中にある間から「どこで止まりそうか」を更新して見せるところまで進んだ。
一方、ここには大きな非公開部分もある。PGA TOURの公開資料では、予測に何を入力しているのか、どの程度の誤差で着地点を当てられるのかは明らかにされていない。1.2秒、100ミリ秒という処理速度は確認できても、予測精度まで同じ資料から評価することはできない。
2026年は、打球を2機で「受け渡す」
2026年2月のAT&Tペブルビーチ・プロアマでは、さらに方式が変わった。
ドローンを2機使い、1機目が打球を最高点まで追跡し、2機目がそこから着地まで引き継ぐ「ドローン・トゥ・ドローン」の追跡が初めて実施された。
1機で最初から最後まで追うのではなく、飛球の途中で担当を替える。これにより、2024年の「動く空撮映像に軌跡を出す」段階から、2026年には複数の空撮カメラで1打をつなぐ中継へ進んだことになる。
ただし、なぜ1機ではなく2機が必要だったのか、その技術的な制約や飛行上の理由までは公開資料に示されていない。確認できるのは、1機目が最高点まで、2機目が着地までを担当したという実運用だ。
翌3月のザ・プレーヤーズでも、Drone ARを搭載した2機が配置され、会場全体ではNBC、Golf Channel、PGA TOUR LIVE向けに過去最多の4機のドローンが配備された。ただしPGA TOURの公式案内は、ペブルビーチのように1打を2機で最高点から受け渡す方式を再実施したとは明記していない。確認できるのは、2機のDrone ARを再び運用したことまでだ。
固定カメラのShotLinkとは役割が違う
ここで混同しやすいのが、PGA TOURの打球計測基盤「ShotLink Pro」だ。
ShotLink Proは150台を超える固定の4K追跡カメラと事前のコース地図化を使い、ショットの位置データを作る仕組みとして説明されている。対してDrone ARは、動く空撮映像の上で打球を追い、中継画面へ見せる技術として説明されている。
今回確認したPGA TOURの資料では、Drone ARがShotLinkのデータを直接受け取って動いているという接続仕様までは公表されていない。両者が同じ「球を追う技術」に見えても、確認できる役割は別だ。
単発の実験ではなくなった。ただし「全大会の標準装備」でもない
2025年のSmart Traceは、初披露後にトラベラーズ選手権、ロケットクラシック、フェデックスカップ・プレーオフ3大会での再使用が予告された。
2026年にはペブルビーチで2機による打球の受け渡しを初実施。ザ・プレーヤーズでは2機のDrone ARが再び配置されたが、同じ受け渡し方式だったかは公式資料で確認できない。7月29日のPGA TOUR公式記事は、PGA TOUR LIVEで同シーズン中にDrone ARを初使用済みと振り返っているが、その初回大会までは特定していない。テレビ放送だけでなく配信にも広がっている。
ここまでを見ると、技術は一度限りのデモを超えている。一方で、2026年9月時点で今回確認したPGA TOURの公開資料には、2機連携が年間何大会、何ホールで使われているかという集計は見当たらない。ツアー全体の標準装備になったとまでは言えない。
2025年にはLive Drone ARがスポーツ・エミー賞の技術賞を受賞した。ただ、その受賞は視聴率や視聴時間、収益が増えた証明ではない。
2024年は「動く空撮から打球を見せる」。2025年は「飛んでいる途中から着地点を予測する」。2026年は「2機で追跡を受け渡して着地までつなぐ」。
わずか2年で変わったのは、ドローンの画質よりも、1打をどう見せるかという中継の役割そのものだ。次に見るべきなのは、予測精度がどこまで公開されるのか、そして2機連携がどこまで通常運用へ広がるのか。その2点が分かれば、この技術が「面白い新演出」から中継の標準機能へ進んだかを、もっと明確に判断できる。