体幹疲労後、体幹とリード足首は逆方向に変化 11人実験で見えた「補償」の範囲
GOLF DNA編集部🇯🇵

3行まとめ
- 健康な右打ちゴルファー11人を前腕プランクで疲労させた研究では、本文Results・Figure 3・Discussion・Conclusionで体幹の矢状面可動量が43.4度から47.9度へ増え、リード足首は34.5度から30.0度へ低下した。
- 一方、抄録は体幹の前後値を逆に記載しており、原著内に不一致がある。
- 股関節・膝やクラブヘッド速度の多くは変わらず、球の方向・距離も未測定。
疲れた部位は、動かなくなる。そう考えると、この研究の結果は少し逆に見える。
健康な右打ちゴルファー11人の体幹をプランクで疲労させたところ、体幹の前後方向の可動量は増えた。一方で、リード側の足首の可動域は小さくなった。
同じ疲労の直後に、離れた部位が逆方向へ変化した。研究者はこれを運動連鎖の中で起きた「補償」の可能性として捉えている。ただし、ショットが悪くなったことまで示した研究ではない。
プランクで疲労させ、30秒以内に7番アイアン
対象は健康な成人ゴルファー11人。平均年齢は20.3歳、全員右打ち、競技経験は1年以上だった。なお、性別内訳は原著本文とTable 1で男女数が逆転しているため、本稿では採用しない。
疲労課題は前腕プランク。肘を肩の下、前腕を平行、足を腰幅に置き、頭・首・骨盤を中立に保つ。自覚的なきつさを示す修正版ボルグ尺度が17以上になるか、注意を受けても姿勢を維持できなくなった時点を終了基準とした。実際には11人全員が17以上に達し、フォーム崩れを理由に終了した人はいなかった。
疲労後は30秒以内に7番アイアンでスイング。8台の赤外線カメラと2枚の床反力計を使い、体幹から足部までの動きを3次元で記録した。
体幹は43.4度から47.9度、足首は34.5度から30.0度
最も目立つ変化は、体幹とリード足首が逆方向に動いたことだ。
体幹の前後方向の可動量は43.4度から47.9度へ、4.5度増加した。一方、リード足首の前後方向の可動域は34.5度から30.0度へ4.5度低下。左右方向でも15.8度から12.3度へ小さくなった。
原著ではこれらを有意な変化として報告している。ただし、原著内には表記の不一致がある。体幹は本文Results・Figure 3・Discussion・Conclusionで43.4度から47.9度へ増加している一方、Abstractでは前後値が逆に記載されている。また、リード足首の前額面ROMはTable 2でp=0.04だが、AbstractとResults本文ではp<0.01と記載されている。本稿では本文Results・図・Discussion・Conclusionで方向が一致する体幹の記述と、数値が明示されたTable 2の足首p値を基準にし、この不一致自体も留保する。
股関節や膝まで一斉に変わったわけではない
重要なのは、疲労後に全身の関節が同じように変化したわけではないことだ。
股関節や膝を含む多くの下肢の可動域、関節モーメントには有意な差がなかった。その中で、リード足首の左右方向の関節モーメントの寄与率は15.6%から12.6%へ低下している。
つまり観察されたのは「体幹が疲れたから全身が硬くなった」という単純な変化ではない。体幹の動きが増え、その一方でリード足首の動きと一部の力学的な寄与が小さくなった、という組み合わせだった。
「補償」は示唆されたが、仕組みが証明されたわけではない
研究者は、この組み合わせを運動連鎖の中で動きを再配分した可能性として解釈している。
ただし、ここには線引きが必要だ。研究で脚そのものの剛性を直接測ったわけではない。筋電図で局所の疲労を確認した実験でもなく、疲労前後を比べた単一グループの研究だ。
そのため、「体幹が疲れると足が硬くなる」「足首を固定して体幹の疲れを補う」といった機序まで確定したわけではない。言えるのは、体幹疲労の直後に、体幹とリード足首で異なる動作変化が同時に起きたこと。そして著者がそのパターンを補償的な再配分と解釈したことまでだ。
クラブヘッド速度は変わらず、球筋は測っていない
では、この動きの変化でショットは悪くなったのか。
クラブヘッド速度は疲労前31.6m/s、疲労後30.6m/sで、有意な差はなかった。さらに研究では、ボールの方向も飛距離も測定していない。
したがって、この結果から「体幹疲労がラウンド終盤のミスを生む」とは言えない。体幹と足首の動きが変わったことと、実際の球筋やスコアが悪化することの間には、まだ測られていない部分が残っている。
18ホール終盤の疲労とは別物
もう一つ大きな違いがある。この研究で作ったのは、前腕プランクによる急性の体幹疲労だ。
18ホールを歩き、何十回もスイングし、暑さや集中力の低下まで重なるラウンド終盤の疲労を再現したものではない。参加者も平均20.3歳の11人という小規模な集団で、傷害リスクも測定していない。
それでも、この研究には面白い示唆がある。疲労の影響は「疲れた場所だけが動かなくなる」とは限らず、離れた関節の動きまで変わる可能性があるということだ。
この研究で確認されたのは、体幹疲労後に体幹の可動量が増え、リード足首の可動域が減ったという事実まで。これが実戦のミスへどうつながるのかを知るには、実際のラウンド疲労で球の方向や距離まで同時に測る必要がある。