週72万人を集めたWMフェニックス・オープンが観客数公表をやめ、「大きくする」より混雑管理へ進んだ理由
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2018年に週71万9179人を集めたWMフェニックス・オープンは、翌2019年から来場者数の公表をやめた。
- 理由は当時「慈善活動へ焦点を移す」ためで、2024年の大混雑後には入口・通路・券売を作り替え、2026年も単日券や収容上限時の待機リストなど人流を制御する運用が続いている。
- 大会運営がもう一段変わるきっかけになったのが2024年の土曜日だった。
2018年のWMフェニックス・オープンは、数字だけを見れば「もっと大きく」が成功の証しに見える大会だった。
土曜日だけで21万6818人。1週間では71万9179人。米男子ツアーは同年、大会を「トーナメント・オブ・ザ・イヤー」に選び、約72万人の来場や慈善実績などを評価材料に挙げた。
ところが翌2019年、主催するザ・サンダーバーズは、それまで大会の象徴の一つだったゲート来場者数を今後は公表しない方針を示した。
理由は、観客を減らすためではなかった。当時の大会会長チャンス・コズビーが説明したのは、観客数の記録を競うことより、慈善活動へ焦点を移したいという考えだった。
ここは後の出来事と切り分ける必要がある。2019年の公表停止は、2024年に起きた混雑を予見して始めた安全対策ではない。また、来場者数を公表しなくなったこと自体が、入場者数を減らしたことや、具体的な収容上限を設けたことを意味するわけでもない。
2024年、問題になったのは「何人来たか」より「どこに集中したか」
大会運営がもう一段変わるきっかけになったのが2024年の土曜日だった。
その週は雨が続き、普段なら観客が立ったり座ったりできる土手がぬかるんで使えなくなった。行き場を失った観客が人通りの多い区域へ集中し、深刻な混雑が発生した。
主催者は公共安全を理由に入口を一時閉鎖。地元の公共安全当局は、一般席の一部でアルコール販売を止めたことも混雑を和らげるための対応だったと説明している。
2019年に「観客数を発表しない」と決めた話と、2024年に「会場内の人流を制御しなければならない」と迫られた話は別だ。
ただ、2018年から2024年までを並べると、大会が向き合う数字の意味は変わっている。週の累計来場者数を誇るだけでは、会場のどこに、いつ、どれだけ人が集まっているかは管理できない。
2025年は「大きくする」より「良くする」
2025年大会に向け、主催者が掲げた言葉は「大きくするより、良くする」だった。
変更は理念だけではない。
グリーンウェイ・ヘイデン・ループ側に新しい観客入口を追加し、17番付近から11番ティーへ続く主要通路は約2倍の幅へ広げた。飲食や酒類の販売場所も再配置し、観客を一か所へ集中させにくくした。
券の仕組みも変えた。一般入場券を全面デジタル化し、どの日でも使えた券を廃止。第三者販売もやめ、入場時の読み取りと混雑状況を把握しやすくした。
つまり、2024年の反省に対する答えは単純な「人数削減」ではなかった。入口を増やす、通路を広げる、人が集まる場所を分散する、そして入場を把握しやすい券売方式に変える。会場へ入る前から中に入った後まで、人の流れそのものを管理する設計へ手を入れた。
2026年も、単日券と収容上限時の待機リスト
では、この方向転換は一時的だったのか。
2026年の公式案内を確認すると、一般入場券は曜日ごとの単日券として販売され、会場が収容上限に達した場合は待機リストを設ける運用が明記されている。2025年に新設されたヘイデン入口も2026年大会で引き続き使われた。
公開資料には最大同時滞在人数の具体的な数字はない。2025年の変更によって混雑や安全性が何%改善したのかという実測値も公表されていない。
そのため、「72万人大会が何万人まで縮小した」とは言えないし、「対策で安全性が何割上がった」とも言えない。
分かるのは、運営の仕組みが変わったことだ。週の累計観客数を発表する時代から、曜日別の券、入口、通路、販売場所、収容上限時の待機という形で、現場の流れを制御する大会へ移っている。
公表しなくなった数字と、管理するようになった数字
2018年、WMフェニックス・オープンは週71万9179人という巨大な来場記録を残した。2019年には、その数字を今後は公表せず、慈善活動へ焦点を移すと説明した。
そして2024年の混雑を経て、2025年には「大きくするより、良くする」を掲げ、2026年も人流を管理する仕組みを続けている。
大会公式サイトは2026年の慈善寄付額を過去最高の2010万ドルとしている。これを来場者数公表停止の成果と結び付けることはできない。ただ、現在も大会が外へ示している重要な数字の一つが、観客数ではなく慈善実績であることは確認できる。
フェニックス・オープンが小さな大会になったわけではない。変わったのは、「大きさ」を何で示し、「混雑」を何で管理するかだ。
公表をやめたのは累計来場者数。その後に細かく管理するようになったのは、日ごとの券、入口、通路、そして収容上限に達したときの入場だ。
出典:wmphoenixopen.com(2・3・4・5) / PGA TOUR / Golf Digest / fox10phoenix.com / GOLF.com / azfamily.com