ヘッド速度は「強く踏む」だけでは説明できない 30人の全身計測モデルが差の75.4%を説明
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- プロ15人・上級アマ15人を全身計測した研究では、足圧中心の動きと技能群だけのモデルがヘッド速度の差の35.5%を説明し、体幹の順序と力積ベースのエネルギー伝達効率を加えると75.4%まで上がった。
- 足元を大きく動かすこと自体の直接効果は有意ではなく、「強く踏むほど速く振れる」という単純な話ではない。
- 研究では、各参加者がドライバー5球、7番アイアン5球を最大スイングした。
「地面を強く踏めば、ヘッドは速くなる」。ゴルフの飛距離論では分かりやすい言葉だが、2026年4月に公表された全身計測研究は、もう少し複雑な絵を示した。
プロ15人と上級アマ15人、全員右打ちの30人にドライバーと7番アイアンを最大で振ってもらい、足元、全身の動き、地面反力を同時に計測した。そこでヘッド速度の差を強く説明したのは、単純な「踏む量」だけではなかった。
足圧中心の動きと選手の技能群を使った最初のモデルが説明したのは、ヘッド速度のばらつきの35.5%。そこへ体幹の動作順序と、研究者が「力積ベースのエネルギー伝達効率」と呼ぶ指標を加えると、説明率は75.4%まで上がった。
研究が示したのは、地面を使うことが重要ではない、という話ではない。地面から受けた力を、いつ、どの順序で、足から体幹、腕、クラブへつないでいくかまで見ないと、速さの違いを説明し切れなかったという結果だ。
足元の指標+技能群で35.5%だった
研究では、各参加者がドライバー5球、7番アイアン5球を最大スイングした。3次元の全身動作、地面反力、足底圧などを計測し、ヘッド速度との関係を段階的な統計モデルで調べている。
最初に入れたのは、スイング前半の足圧中心の移動、後半の足圧中心の安定化、そしてプロか上級アマかという技能群だった。この段階で、ヘッド速度のばらつきの35.5%を説明した。
次に体幹の動作順序を加えると説明率は20.9ポイント増え、さらにエネルギー伝達効率の指標を加えると19.0ポイント増えた。最終的な説明率が75.4%になった。
ここで75.4%を「速く振るには75.4%が体幹と地面で決まる」と読むのは違う。これは30人の測定値に対して作った統計モデルが、この標本内のヘッド速度のばらつきをどこまで説明したかを示す数字だ。個々のゴルファーの速度を構成する原因の割合ではない。
「エネルギー伝達効率」は、何%伝わったかを測った数字ではない
名前だけを見ると、地面から入ったエネルギーの何%がクラブへ届いたかを直接計測したように聞こえる。しかし、この研究の「エネルギー伝達効率」は、そのような単純な効率比ではない。
地面反力を時間で積み上げた「力積」と、身体の各部分の間で計算したエネルギーの流れを複数まとめ、主成分分析という方法で一つの標準化された指標にしたものだ。
この指標には、トップからインパクトまでの腰から体幹へのエネルギー流、ダウンスイング中の体幹から腕へのエネルギー流、下肢から体幹への正味の力積などが強く反映された。
つまり研究者が捉えようとしたのは、「どれだけ強く地面を押したか」一つではなく、足元で生まれた力の作用と身体の各部分のエネルギーの流れが、スイング全体でどれだけまとまっているかだった。
足圧中心を大きく動かせば速くなる、とは出なかった
さらに興味深いのが、スイング前半の足圧中心の移動だ。
最終モデルでは、この移動量とヘッド速度の直接的な関係は統計的に有意ではなかった。媒介分析でも直接経路は有意ではなく、エネルギー伝達効率を介した間接経路は有意だった。
この結果から言えるのは、「足圧中心をたくさん動かせば速く振れる」という単純な直線関係は、この研究では確認されなかったということだ。
一方で、足元の動きが無意味だったわけでもない。足圧中心の移動とヘッド速度の関係は、力積や身体各部のエネルギー流をまとめた伝達効率の指標を介して現れていた。
ただし、ここには重要な線引きがある。この研究は一時点の測定値を使った横断研究だ。「足圧中心の動きを変えた結果、伝達効率が上がり、その結果ヘッド速度が上がった」という時間順の因果を実験で確認したわけではない。
ドライバーと7番アイアンはまとめて解析された
今回の参加者はドライバーと7番アイアンの両方を振ったが、最終的な解析では2クラブのデータを統合している。
研究者は、主成分分析で両クラブのデータ構造に高い共通性が見られ、一つの成分が84.62%を説明したことを統合の根拠にした。
それでも、「ドライバーでも7番アイアンでも、同じ動きが同じ強さでヘッド速度へ効く」と証明したわけではない。クラブごとの別モデルで同じ係数や経路を確認した研究ではないからだ。
また、参加者30人に対して扱った生体力学の変数は多く、研究者自身も小標本によるモデルの不安定さや過学習の可能性を限界として挙げている。足底圧の計測も20ヘルツで、非常に速い瞬間的な変化を捉え切れない可能性がある。実験室での最大スイングが、コース上の通常の7番アイアンや競技中のスイングと同じとも限らない。
この研究から「こう踏めば飛ぶ」という練習法までは作れない
この研究の面白さは、地面反力の大きさを競う話から、力を伝える順序へ視点を移したところにある。
足元の動きと技能群だけでは35.5%だった説明率が、体幹の順序と伝達効率を加えることで75.4%まで上がった。しかも、足圧中心の初期移動そのものは最終モデルで直接の有意な関係を示さなかった。
だからといって、「この足の使い方をすれば飛距離が伸びる」という処方にはまだできない。必要なのは、特定の動きを実際に変える介入試験を行い、その結果として伝達指標やヘッド速度が変わるかを確かめることだ。
現時点で見えているのは、速く振る選手ほど単に強く地面を踏んでいた、という一枚絵ではない。地面から受けた力を、身体の順序の中でどうクラブまでつなげているか。その「途中」を測ることで、ヘッド速度の差がずっとよく説明できた、というところまでだ。