女性会員解禁だけでは終わらなかったパインバレー クラブと「町」の一体性が住宅・雇用まで争点に
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 名門パインバレーは2021年に女性会員を受け入れたが、ニュージャージー州の調査は会員制度だけでなく、旧自治体との関係、住宅、雇用へ広がった。
- 2023年の和解では住宅・採用慣行の変更、研修・年次報告、州への10万ドルと女性向けゴルフ奨学金計10万ドルが定められたが、クラブは違法差別の主張を否認している。
- 州の2022年4月27日の申立てでは、クラブが旧パインバレー自治区の全土地を所有し、自治体運営を事実上支配し、自治体サービスの主な受益者だったと主張された。
パインバレー・ゴルフクラブは2021年4月30日、年次会合で性別を限定する文言を規約から削除することを全会一致で決めたと会長書簡で伝えた。長く男性限定だった名門クラブが女性会員を受け入れる方向へ転じた出来事だ。
それだけなら、「会員資格を変えて問題は終わった」と見える。
ところが翌2022年、ニュージャージー州公民権局の行政申立ては、会員制度だけではなく住宅と雇用まで争点にした。背景にあったのは、クラブと旧パインバレー自治区の特殊な関係だった。
州が問題にしたのは「私設クラブ」の外側だった
州の2022年4月27日の申立てでは、クラブが旧パインバレー自治区の全土地を所有し、自治体運営を事実上支配し、自治体サービスの主な受益者だったと主張された。
申立書には、旧自治区の登録有権者が11人だったこと、2019年にクラブが警察費用として10万ドルを負担した一方、警察費用は約26万2000ドルと見積もられていたこと、行政庁舎が年1ドルで貸されていたことなども記されている。
重要なのは、これらが裁判所の確定認定ではなく、州側が行政申立てで示した主張だという点だ。州はこうした関係を材料に、クラブを単純に外部から切り離された「完全な私設クラブ」とみなせるのかを争った。
だから問題は、誰を会員にするかだけに収まらなかった。
住宅は「会員資格」とつながっていたと州が主張
州は住宅について、占有契約が住宅所有をクラブ会員、または会員とその配偶者による共同所有に結びつけていたと申し立てた。
男性限定の会員制度とこの条件が組み合わさることで、女性が住宅所有から排除されていた、というのが州側の主張だった。
雇用についても州は、当時およそ159人の従業員のうち女性は6人、約3.8%だったとし、採用は主に口コミで行われていたと指摘した。
つまり州が描いた構図は、男性限定の会員規則がクラブハウスの内側だけにあるのではなく、住宅の持ち方や働く人の採用方法にもつながっていた、というものだった。
女性会員解禁は、州の申立てより先だった
時系列も重要だ。
クラブは2021年4月30日頃に性別制限を撤廃した。州資料によると、2021年7月時点では約700人の会員のうち女性は3人で、0.5%未満だった。
州の正式な行政申立てはその翌年、2022年4月27日だ。州は、男性限定会員制などの方針が公民権局の調査開始後に緩和されたと申し立てた。
したがって、2023年の和解は「女性を会員にできるようにする」だけの話ではない。すでに変わっていた会員制度の先で、住宅と雇用の扱いをどう変えるかまで踏み込んだ。
2023年和解は住宅と採用方法を具体的に変えた
2023年5月10日に署名された和解では、住宅について、性別や会員資格を理由に土地の賃貸や住宅所有を制限しないことが定められた。
さらに、新たな住宅用賃貸や私有は原則として認めず、限定的な承継を除いて、売却可能になった住宅をクラブが買い取り、私的な居住を段階的に終わらせる内容も盛り込まれた。
雇用では、口コミを主要な採用手段にしないこと、緊急時を除いて求人を公開すること、少なくとも75%の求人を主要なオンライン求人サイト2つ以上と地域紙1紙以上へ掲載することが定められた。
性別に基づくイヤリングや身だしなみの制限を設けないこと、従業員の賃金についての会話を禁止しないことも和解条件に入った。
研修と報告もある。全従業員に1年以内の反差別研修を行い、その後3年間は監督・管理職に年次研修を実施。2023年7月1日から、その後3年間にわたり年次の順守報告を行うことになった。
州への10万ドル、女性向けゴルフ支援にも計10万ドル
金銭条件は二つに分かれる。
クラブは州公民権局へ計10万ドルを支払う。内訳は、制裁金に代わる5万ドルと弁護士費用5万ドルだ。
これとは別に、女性向けゴルフ支援として計10万ドルを拠出する。女性キャディー向け奨学金に4万5000ドル、ラトガース大学の女子ゴルフに5万5000ドルという内容だった。
ここで注意したいのは、和解が州の主張をそのまま確定事実にしたわけではないことだ。
署名済みの和解文書で、クラブは公的施設に当たるという主張と違法差別の主張を否認し、自らは一貫して私的クラブだったとの立場を示している。和解は公民権局の事件を完全かつ最終的に処分するものだが、責任を認めた確定判決ではない。
パインバレーの事例で面白いのは、女性会員を認めたかどうかだけではない。「私設クラブ」という境界の外側に、町の運営、住宅、雇用がどこまでつながっていたのかが争点になったことだ。
2021年の規約変更で会員資格は動いた。しかし、州が問題にした構造はそこでは終わらず、2023年の和解では住宅の持ち方、求人の出し方、研修、報告まで具体的な変更へ進んだ。女性会員解禁は、この問題の終点ではなく、より広い制度変更の一部だった。
出典:njoag.gov(2) / inquirer.com / nj.gov(2)