ディンプルの当たり所でパットは曲がる? 3.2mの機械試験160球は全てホールイン相当、人間では明確な関係なし
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- ボール表面のどこにフェースが当たるかで、出球はどれほど変わるのか。
- 2016年公開・2017年掲載の研究では、機械アームで小さな関連が出た一方、人間337試行では水平打ち出し角との関係は明確にならず、機械160球もすべてホールイン相当だった。
- 研究が扱った「ディンプル誤差」は、ボール表面のディンプル配列の中心に対して、実際のインパクト位置がどこに来たかという違いだ。
パットではフェース向きや打点が気になる。では、同じように打てたとしても、ボール表面の「どのディンプル付近に当たったか」だけで出球は変わるのか。
2016年にオンライン公開され、2017年に掲載された研究は、この微差を3.2mのパットで調べた。結論から言えば、再現性の高い機械アームではディンプル接触位置と水平打ち出し角に小さな関係が見えた条件があった。一方、人間が打つと同じ関係は明確にならなかった。しかも機械試験160球は、著者の評価ではすべてホールイン相当の範囲だった。
つまり、ディンプル位置による物理的な差は「ゼロ」とは言い切れない。ただ、3.2mの実験では、人間のパットを左右する大きな誤差としては確認されなかった。
「ディンプル誤差」は何を測ったのか
研究が扱った「ディンプル誤差」は、ボール表面のディンプル配列の中心に対して、実際のインパクト位置がどこに来たかという違いだ。
打点を調べるため、パターフェースに色付きの材料を塗り、ボールへ転写された跡を撮影。そこからディンプル配列の中心との距離や角度、接触面積を測った。出球は220Hzの高速度カメラと解析装置で追い、水平打ち出し角と横回転を測定している。
機械試験では2種類のパターと2種類のボールを組み合わせ、4条件を各40球、計160球。パターはGEL Vicisとオデッセイ White Hot #3、ボールはスリクソン Z-STARとタイトリスト Pro V1だった。
人間の試験は右打ち22人で、平均ハンデ13.6、範囲は0〜24。スリクソンのボールと2種類のパターを使い、計337試行を行った。
機械では4条件中3条件で出球方向との関係が出た
機械アームでは、ディンプル接触位置を表す変数と水平打ち出し角の回帰モデルが4条件中3条件で有意になった。
GEL Vicisとタイトリストの組み合わせはR²=.34、GEL VicisとスリクソンはR²=.44、オデッセイとスリクソンはR²=.21。オデッセイとタイトリストだけは有意ではなかった。
機械試験で観測された水平打ち出し角の範囲は-1.00°から+0.71°だった。ただし、この全幅をそのまま「ディンプルだけが生んだ角度差」と読むことはできない。回帰モデルが示すのは、打点位置の変数と出球方向の一部に関係があったということだ。
そして実用面で重要なのは、160球すべてが著者の評価でホールイン相当だったことだ。統計的な関係が見つかっても、それが3.2mのパットを外すほど大きかったわけではない。
人間では水平打ち出し角との関係が消えた
同じ3.2mでも、人が打つと結果は変わった。
水平打ち出し角について、GEL Vicisとスリクソンの組み合わせはp=.52、R²=.02。オデッセイとスリクソンはp=.49、R²=.01で、どちらも有意な関係は確認されなかった。
論文では、打点位置の変数が説明し得る角度をそれぞれ0.03°、0.02°としている。3.2mを直線的に進むと仮定した単純な幾何換算なら、横方向では約1.7mm、約1.1mmに相当する。
人間の試行では、こうした微小差より自然なフェース向きや軌道のばらつきが大きく、ディンプル位置の効果を埋めた可能性があると著者は述べている。ただし、この研究はフェース角や軌道そのものを測定していないため、何が何mm分を生んだかまで分離したわけではない。
横回転も「ディンプル位置で一律に変わる」ではなかった
横回転も結果は一様ではない。
機械試験で有意だったのはオデッセイとスリクソンの組み合わせだけで、打点変数による変動量は2.8rpm。他の3条件では有意な関係が出なかった。
人間では逆に、GEL Vicisとスリクソンだけが有意で、説明力はR²=.06、変動量は約1.54rpm。オデッセイとスリクソンではp=.93だった。
出球方向でも横回転でも、特定条件では統計的な関係が見えるが、パターやボールをまたいで同じ形で再現する強い効果ではなかった。
ボールの線を毎回そろえる意味まで、この研究では言えない
この実験から「ディンプル位置は無意味」と断定するのも、「ボールの向きをそろえればパットが入る」と広げるのも行き過ぎになる。
対象は3.2mの人工グリーン、特定の2パターと2種類のボールだ。人間試験ではボールも1種類に限られる。ボールの線合わせや、現在販売されている全製品の有効性を検証した研究でもない。
さらに、2026年9月19日までの限定的な文献確認では、2017年以降に同じ設計で独立再現した追試は確認できていない。現時点では単一研究として読む必要がある。
それでも、この実験が切り分けたものは明快だ。精密な機械なら、ディンプルの当たり所と出球方向の間に小さな関係が見えることがある。しかし実際のゴルファーが打つ条件では、その関係は水平打ち出し角で明確にならなかった。
パットの世界には、測れば存在する微差と、スコアを左右するほど大きい誤差がある。この3.2mの実験では、ディンプル接触位置は前者として観測されたが、人間のばらつきを押しのけるほどの主役にはならなかった。
出典:pubmed.ncbi.nlm.nih.gov / rke.abertay.ac.uk / researchgate.net / researchportal.beds.ac.uk