普段の「利き目」はパットで当てにならない? 31人中87%で優位性が弱まり、トップ男子プロ71人でも「利き目×利き手」に成績差なし
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 普段の姿勢で測った利き目が、パッティング姿勢でも同じとは限らない。
- 2015年の31人研究では姿勢で目の優位性が弱まり、2025年のトップ500圏男子プロ71人では利き目と利き手の組み合わせによる主要成績差も確認されなかった。
- 「クロスドミナンスなら有利」と単純化できない理由を検証する。
「右目が利き目だから、ボール位置はこう」「利き目と利き手が交差しているからパット向き」。パッティングでは、こんな説明を耳にすることがある。
ところが研究を追うと、話はそれほど単純ではない。そもそも、普段の姿勢で測った“利き目”が、前傾してボールを構えたときにも同じ強さで働くとは限らない。さらに、世界上位の男子プロを調べても、利き目と利き手の組み合わせだけでは成績差を説明できなかった。
立って測った「利き目」が、そのままパット姿勢に残るとは限らない
2015年の研究は、アマチュア14人、クラブプロ7人、トッププロ10人の計31人の右打ちゴルファーを対象にした。研究者は、通常の姿勢と、前傾してボールにアドレスしクラブを合わせるパッティング姿勢の両方で、指差しによる利き目の測定を行った。
結果は興味深い。通常姿勢での利き目と、パッティング姿勢での利き目は互いを予測せず、パッティング姿勢では目の優位性そのものも有意に弱くなった。
同じ31人のデータを扱った博士論文では、その変化がさらに具体的に示されている。31人のうち87.1%で、通常姿勢からパッティング姿勢になると目の優位性が低下。12.9%は変わらず、強くなった人は0%だった。
ここで重要なのは、「右目優位が左目優位に全員入れ替わった」という話ではないことだ。変わったのは、主に“どちらか一方の目がどれだけ強く優位か”という度合いである。
つまり、立った状態で一度だけ測った利き目を、そのままパッティングの構えへ当てはめる前提自体が揺らぐ。
「利き目×利き手」でパットの上手さも説明できなかった
2015年研究では、利き目と利き手の組み合わせとパッティング技能の高さにも関連が確認されなかった。
この点を、さらに高い競技レベルで確かめたのが2025年に公表された研究だ。対象は、測定時に世界ランキング500位以内だった男子ツアープロ71人。利き目は右44人、左25人、混合2人だった。
研究では3メートル先を使った2種類の方法で利き目を測定し、分類結果は100%一致した。そのうえで、利き手と利き目が同じ側の選手と、左右が交差する選手を比較した。
比較対象は、自己最高世界ランキング、測定時の世界ランキング、総合的なストローク・ゲインド、そしてパッティングのストローク・ゲインド。いずれにも統計的な有意差はなかった。パッティングの指標でもp=0.106で、有意差には届いていない。
右目優位と左目優位を直接比べた場合も、世界ランキングやストローク・ゲインド、パッティング成績に有意差は出なかった。
少なくともこの71人については、「利き目と利き手が交差している選手の方が上手い」「右目優位の方がパットに有利」といった単純な説明は成り立たない。
では、利き目はパットに無関係なのか
そこまで言い切るのも早い。
2005年には、右利きの日本人学生47人を対象にした初心者のパッティング実験があり、右目優位の参加者は右打ち姿勢、左目優位の参加者は左打ち姿勢で成績が良かったと報告されている。
対象も課題も2015年、2025年の研究とは異なるため、この結果をそのまま熟練ゴルファーへ移すことはできない。逆に言えば、「利き目は完全に無意味」と切り捨てる材料にもならない。
2015年研究も31人という小規模な標本で、右打ちに限られる。2025年研究も男子プロ71人に限られ、女性や一般アマチュアへそのまま一般化はできない。また2025年研究は探索的な多数の比較に多重比較補正をかけておらず、著者自身も限界として挙げている。
利き目だけで構えを決めるには、根拠が足りない
ここまでの研究から最もはっきり言えるのは二つだ。
一つは、普段の姿勢で測った利き目を、パッティング姿勢でも同じものとして扱えないこと。もう一つは、利き目と利き手の組み合わせだけでは、トップ男子プロの世界ランキングやパッティング成績を説明できなかったことだ。
だから「クロスドミナンスだから有利」「右目が利き目だからこの構え」と、利き目一つからパッティングを決めるのは研究結果を越えた話になる。
利き目は無視すべき変数ではない。だが、少なくとも現在確認できる研究では、それだけで構えや上手さを決める“答え”にもなっていない。パッティング姿勢そのものが、目の優位性を変える可能性があるからだ。
出典:onlinelibrary.wiley.com / research.aston.ac.uk / tandfonline.com / publications.aston.ac.uk / journals.sagepub.com