20分のゲーム化VRゴルフで参加意図は上がらず 71人実験で「ゴルフに必要な技能」評価が約10点低下
GOLF DNA編集部🇦🇺

3行まとめ
- スポーツ・運動科学の大学生71人を、従来型VRゴルフ、ゲーム化VRゴルフ、非スポーツVRの3群に分けた2026年研究では、20分体験後もゴルフへの参加意図は3群とも有意に高まらなかった。
- ゲーム化群では、研究が「ゴルフへの態度」と呼ぶ、ゴルフに必要な身体・精神・技術的技能の高さへの評価が100mm尺度で72.56から62.81へ直後に低下したが、4週間後は66.47で、簡略化や努力感の低さが原因だったとは証明されていない。
- 参加者はオーストラリアの大学でスポーツ・運動科学を学ぶ学生71人。
ゴルフを始めてもらう入口として、ゲームらしい演出を増やせば興味は高まりそうに見える。ターゲットへ当てる、連続成功でボーナスが付く、音やアニメーションで結果を盛り上げる。少なくとも「普通のVRゴルフより参加したくなる」という期待は自然だ。
ところが、2026年に公表された71人の実験では、その期待を支持する結果は出なかった。
20分の体験後、ゴルフへの参加意図は従来型VRゴルフ、ゲーム化VRゴルフ、非スポーツVRの3群とも有意に高まらなかった。さらにゲーム化群だけは、研究が「ゴルフへの態度」と呼ぶ、ゴルフに必要な身体・精神・技術的技能の高さへの評価が体験直後に低下した。
豪州の大学生71人を3群に分けた
参加者はオーストラリアの大学でスポーツ・運動科学を学ぶ学生71人。従来型ゴルフ29人、ゲーム化ゴルフ25人、非スポーツVRの対照群17人に分けられた。
割り付けは個人単位ではなく授業クラス単位で行われ、従来型とゲーム化は各3クラス、対照群は2クラスだった。
使用したのはMeta Quest 3。従来型群は「Golf+」のストロークプレーを20分体験した。ゲーム化群は同じくGolf+で、ターゲットを狙うTopgolf形式のゲームをプレー。ボーナスゾーン、連続成功への報酬、音やアニメーションによる演出が加わっていた。
対照群はゴルフではなく「Fruit Ninja 2」を20分体験した。
測定は体験の約4週間前、20分体験の直後、さらに約4週間後の3回。つまり、その場の印象だけではなく、1カ月後まで追っている。
ゴルフへの参加意図は3群とも高まらなかった
研究の「ゴルフへの参加意図」は、実際にプレーすることだけではない。今後12カ月にゴルフへ参加する、会場で観戦する、テレビやインターネットで見る、デジタルゴルフゲームを遊ぶ、用品を買うといった6項目をまとめた指標だった。
結果は、時間と群の組み合わせによる有意な変化なし。統計値はF(4,136)=2.10、p=0.085で、時間そのものの主効果もp=0.276だった。
少なくともこの71人・20分の条件では、従来型でもゲーム化でも、ゴルフへの関与意図が明確に上向いたとは言えなかった。
ゲーム化すれば従来型より「ゴルフにもっと関わりたい」という方向へ動く、という狙いも支持されなかったことになる。
ゲーム化群だけ「ゴルフに必要な技能」評価が72.56から62.81へ低下
より意外だったのは、研究が「ゴルフへの態度」と呼んだ指標だ。
ここでいう「態度」は、ゴルフが好きか嫌いかという好感度ではない。「ゴルフには高い身体的技能が必要だ」「高い精神的技能が必要だ」「高い技術的技能が必要だ」という3項目への同意度を、100mm尺度で測ったものだった。
ゲーム化群の平均は、体験約4週間前が72.56。20分体験の直後は62.81まで低下した。差は9.75ポイントで、この基準時点から直後への低下は統計的に有意だった(p=0.018)。
約4週間後は66.47まで戻った。研究で有意だったゲーム化群内の変化は基準時点から直後だけで、4週間後まで同じ低下が続いたとは確認されていない。
群と時間の交互作用はp=0.027、効果量を示す偏イータ二乗は0.078だった。従来型群と対照群では、同じような有意な変化は確認されなかった。
つまり「ゲーム化VRでゴルフ嫌いになった」と言える研究ではない。確認されたのは、ゲーム化群で体験直後に「ゴルフには高い身体・精神・技術的技能が必要だ」という評価が一時的に下がったことまでだ。
「簡単に感じたから技能評価が下がった」とはまだ言えない
ゲーム化群の体験評価には、もう一つ興味深い差があった。
精神的な努力の平均値は、従来型群52.07に対してゲーム化群34.0で低かった(p=0.031)。一方、自分がうまくできたという能力感は、ゲーム化群68.56、従来型群45.17でゲーム化群の方が高かった(p=0.002)。
ただし、理解しやすさ、身体的な努力、もう一度プレーしたいかという項目には有意差がなかった。
そして研究では、「精神的努力が少なかったこと」や「自分はうまくできると感じたこと」が、ゴルフに必要な技能への評価低下を引き起こしたかを確かめる媒介分析は行っていない。
ゲームらしく簡略化したことで「本物のゴルフは高い技能を要する」という認識が弱まった、という説明は著者も挙げている。ただし、この実験から確定できる因果ではない。
「ゲーム化は逆効果」と一般化するには早い
この研究には範囲がある。
参加者はスポーツ・運動科学の大学生71人で、一般人口を代表する標本ではない。体験は1回20分だけ。測ったのも実際にゴルフ場へ行った人数ではなく、自己申告の参加意図と、ゴルフに必要な技能水準への認識だった。
各群への割り付けも個人単位ではなくクラス単位で、参加者の詳しいゴルフ経験も十分には把握されていない。
そのため、「VRのゲーム化はゴルフ普及に悪い」「簡単なゴルフゲームほど本物のゴルフから人を遠ざける」と広げることはできない。
それでも、今回の中心質問には答えが出ている。
この20分実験では、ゲーム化VRゴルフは従来型VRゴルフよりゴルフへの関与意図を高めず、研究が「ゴルフへの態度」と定義した必要技能への評価も高めなかった。参加意図は3群とも有意に上がらず、ゲーム化群では必要技能への評価が直後に約10ポイント下がった。
「ゲームとして遊びやすいこと」と「現実のゴルフへ関わりたくなること」は、少なくとも同じものではなかった。次に必要なのは、短い自己報告だけでなく、誰が実際にゴルフを始め、続けたのかまで追う検証だ。