18モデル試験で濡れると平均35%スピン減、それでも11モデルは9割以上維持 差を生むフェース設計とは
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2022年の独立18モデル試験では、濡れた条件で平均スピンが約35%低下した一方、11モデルは乾燥時の90%以上を維持し、増えた例もあった。
- 2026年の特許が説明する表面の山谷と水の逃がし方、エアキャノン試験と人間の50ヤード実打の差、現行PING s259との関係を分けて読む。
- この2022年試験は、独立媒体MyGolfSpyが160時間をかけて行ったものだ。
ウェッジが濡れると、フェースとボールの間に水が入り、摩擦が落ちる。では、溝や表面加工、撥水処理は、そのスピン低下をどこまで抑えられるのか。
2022年の独立試験では、18モデルを50ヤードから打ち、芝とボールの両方に水分を与えて比較した。1万7000球を超える試打の平均では、湿潤時のスピンは乾燥時より約35%低下。最も大きい例では60%を超えて落ちた。
ところが18モデル中11モデルは、濡れても乾燥時の90%以上のスピンを維持した。PING Glide 4.0では、湿潤時の方が174rpm高い結果さえ出ている。
「濡れれば必ず大きく回転が落ちる」でも、「新しい表面加工なら濡れた方が回る」でもない。モデルによる差が非常に大きかった。
18モデル試験は平均35%減、でも11モデルは9割以上残した
この2022年試験は、独立媒体MyGolfSpyが160時間をかけて行ったものだ。対象は18モデル、総ショット数は1万7000球超。各ショットで芝とボールの両方に水分を付与し、50ヤードのショットで乾湿を比較した。
平均では約35%のスピン低下だったが、11モデルは乾燥時の90%以上を維持した。Glide 4.0のように湿潤時が乾燥時を上回る例もあった。
ただし、これは査読研究ではない。公開記事からは使用球、個々の打点分布、速度管理などの詳細までは確認できない。数字は「18モデルを同じ企画で比べた独立試験」として読むのが適切だ。
特許が狙うのは、溝だけではなく表面の細かな山谷
2026年6月23日に成立したKarsten Manufacturingの特許US12661560は、湿潤時でもスピンを安定させる考え方を、フェース表面の粗さと山谷から説明している。
大きな溝は水や異物を逃がす。その間にある細かな表面の凹凸は、さらに小さなポケットや流路をつくる。特許では、鋭い山と深い谷によって水を打撃面から移動させ、ボールとフェースの接触と摩擦の低下を抑えるという考え方が示されている。
つまり、濡れたウェッジの性能を左右する候補は溝の本数や形だけではない。フェース表面の細かな粗さも、水をどこへ逃がすかという役割を持つという設計だ。
機械試験ではほぼ維持、人間が打つと両方とも低下した
特許のExample 1では、85mph、55度の条件でエアキャノンを使った試験が行われた。湿潤条件では各打撃前にフェースを5回水で濡らし、打撃後に拭き取っている。
試作側は乾燥時1万2492rpm、湿潤時1万2276rpm。差は216rpmだった。一方、対照側は乾燥時1万2408rpmから、湿潤時8571rpmまで低下した。
この条件だけなら、試作側は水分による回転低下をかなり小さく抑えている。
だが、人間が打つExample 2では同じ挙動にはならなかった。58度のウェッジで50ヤードを打ち、TrackManで計測した結果、試作側は7199rpmから5465rpmへ低下。対照側も6682rpmから4952rpmへ低下した。
特許本文は、エアキャノン試験との差について、衝突速度が低いことや打手による差を説明に挙げている。少なくとも公開された二つの試験から分かるのは、機械で大きくスピンを残した表面でも、人間の50ヤード実打では水分の影響を消せなかったということだ。
「濡れた方が回る」例はあるが、一般則にはできない
2025年の別の独立比較でも、湿潤時のスピン保持率が100%を超えるモデルは複数あった。Cleveland RTZは105.3%、RTZ Full Faceは104.9%だった。
少なくとも、2022年のGlide 4.0だけにしか現れなかった数字ではない。一方、ここから「濡れた方が回るウェッジが普通になった」と結論することもできない。
2025年試験は別世代・別モデルの比較で、表面粗さ、溝、撥水仕上げの寄与を一つずつ分離した試験ではない。特許の仕組みを独立に検証したものでもない。
乾燥時を超える数字が出ることはある。しかし、なぜそうなったのか、どの加工が何%を担ったのかまでは、この材料から切り分けられない。
2026年のPING s259は複数の表面処理を組み合わせる
2026年9月22日時点で、PINGの現行s259は、切削溝、機械加工フェース、フェースへの追加ブラスト、撥水クローム処理「Hydropearl 2.0」を仕様として掲げている。PINGは湿潤・乾燥条件での選手テストと、一貫したスピン性能も説明している。
ただ、公開一次資料では、s259がUS12661560の具体的な表面構造を実装した製品だという直接の対応付けは確認できない。特許のミリングやブラスト、表面粗さという考え方と製品仕様には重なる部分があるが、同じ技術だとは断定できない。
濡れたウェッジで重要なのは「水をなくす」より「どれだけ影響を小さくするか」
現時点の材料を並べると、答えはかなりはっきりする。
独立18モデル試験では、濡れた条件の平均スピン低下は約35%で、最悪例は60%超。それでも11モデルは乾燥時の90%以上を残し、乾燥時を上回る例もあった。
特許の機械試験では、表面の山谷で水を逃がす試作フェースが乾湿差を216rpmまで抑えた。一方、人間の50ヤード実打では、その試作側も7199rpmから5465rpmへ低下した。
つまり、表面設計は水分の影響を大きく減らせる可能性があるが、「濡れてもスピンが落ちない」を保証するものではない。溝、微細な粗さ、撥水処理は、水を逃がして接触と摩擦を残すための異なる手段として組み合わされている。
濡れたウェッジを見るときに重要なのは、溝が新しいかどうかだけではない。フェース全体が水をどう処理し、その結果として乾燥時の回転をどこまで残せるか。その差が、同じ50ヤードでも大きく表れている。