ゴルフボールは温めるほど飛ぶ? 46℃では32℃よりキャリー2.9m短かった
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 球温を4℃・18℃・32℃・46℃にそろえた120球の実験では、18℃と32℃が球速・キャリーで4℃と46℃を上回った。
- 46℃は32℃よりキャリーが2.9m短く、「温めるほど飛ぶ」という単純な関係ではなかった。
- 一方、被験者は1人、ボールも1種類で、材料の変化や全製品共通の最適温度まで示した研究ではない。
「冬の冷たいボールは飛びにくい」。そこまでは感覚的にも納得しやすい。では、逆にボールを温めれば温めるほど飛ぶのか。
2018年にオンライン公表され、2019年に誌面掲載された温度実験では、答えはそう単純ではなかった。ゴルフボールを4℃、18℃、32℃、46℃の4段階にそろえてドライバーで打つと、球速とキャリーが高かったのは18℃と32℃。冷たい4℃だけでなく、最も熱い46℃でも中間温度より性能が落ちた。
46℃の平均キャリーは216.4m。32℃の219.3mより2.9m短い。球速も46℃は65.5m/sで、32℃の66.1m/sを下回った。「冷たいと飛ばない」だけでは説明できない、温度と性能の非直線的な関係が出た。
120球を4温度に分け、24時間そろえた
実験に使われたのは、新品のタイトリスト Pro V1(2016年モデル)120球。4℃、18℃、32℃、46℃へ30球ずつ分け、それぞれ24時間、目標温度の±1℃で管理した。
4℃と18℃は冷蔵庫、32℃と46℃は浸漬ヒーターを備えた水槽を使い、温度を連続監視した。打ったのは28歳、ハンデ0.0の男性ゴルファー1人。ドライバーはタイトリスト915D3の9.5度、シャフトはディアマナ ブルー60のS、長さ45インチだった。
屋内は約24℃。計測にはトラックマンIIIを使用し、クラブ速度、打ち出し角、スピン量、球速、キャリーを測った。除外後の解析対象は、4℃が27打、18℃が29打、32℃が26打、46℃が27打だった。
条件をかなり揃えた実験ではあるが、被験者は1人。この点は結果を読むうえで最後まで外せない。
18℃と32℃が、冷たい4℃と熱い46℃を上回った
4つの温度条件の平均値はこうだった。
4℃は球速65.5m/s、打ち出し13.2度、スピン毎秒57回転、キャリー215.6m。18℃は66.2m/s、12.9度、毎秒55回転、219.5m。32℃は66.1m/s、12.3度、毎秒53回転、219.3m。46℃は65.5m/s、12.8度、毎秒55回転、216.4mだった。
球速では温度条件による差が統計的に確認され、18℃と32℃はいずれも4℃と46℃より高かった。キャリーも同様で、18℃と32℃が4℃と46℃より長かった。18℃と32℃の間、4℃と46℃の間には有意差がなかった。
差を身近な数字で見ると、4℃は18℃より球速が0.7m/s遅く、キャリーが3.9m短い。46℃は32℃より球速が0.6m/s遅く、キャリーが2.9m短かった。
重要なのは、プレーヤー側の振り方の差だけで説明しにくい点だ。クラブ速度は温度条件による有意差がなく、打ち出し角とスピン量にも有意差は確認されなかった。変化がはっきり出たのは球速とキャリーだった。
なぜ46℃でも落ちたのか。そこはまだ「推論」
ここで気になるのが、なぜ熱すぎても飛ばなかったのかだ。
研究では、ボールのコアやカバーの硬さ、圧縮、反発係数を温度ごとに直接測ってはいない。著者らは、材料の粘弾性や反発係数が温度によって変わる可能性を挙げているが、今回のデータだけで「46℃ではこの材料がこう変化したから飛ばなかった」と特定したわけではない。
つまり、確認できたのは温度条件を変えたときの球速とキャリーの違いまで。その内部で何が起きたのかは、温度別の圧縮や反発係数などを直接測る別の検証が必要になる。
インパクト時のボール内部温度も直接測定されていない。24時間管理した環境温度と、その条件から取り出して打ったボールの結果を結びつけた実験であって、衝突の瞬間まで内部のどこが何度だったかを追った研究ではない。
「最適温度は18〜32℃」と決める研究ではない
数字だけを見ると、18℃と32℃が良かったため、その間がゴルフボールの最適温度だと言いたくなる。しかし、この研究からそこまでは言えない。
被験者は1人、クラブは1本、ボールはPro V1の2016年モデル1種類。しかも狭いクラブ速度帯の屋内実験だ。複数のゴルファー、異なるヘッド速度、異なる構造のボールで同じ形の結果になるかは、この研究だけでは分からない。
著者らは、用具規則の試験ではボール温度の標準化を考慮すべきだと提案している。これは、温度が測定される性能値へ影響し得るという研究結果から出た提案だ。
しかし、それと「ラウンド前やラウンド中にボールを温めるべきだ」という実用助言は別の話になる。実際のコースでボール温度がどう変わるか、どのように保温・加熱するか、その安全性や規則への適合まで、この研究は検証していない。
なお、2026年9月時点のR&A規則4.2a(2)では、性能特性を意図的に変えた球にストロークすることを認めておらず、例として「加熱」も明記されている。したがって、この研究結果を競技中の人工的な加熱推奨へ読み替えることはできない。
この120球の実験が示したのは、もっと限定的で、そのぶん面白い事実だ。少なくともこの条件では、冷たいほど悪いという片側だけの関係ではなく、46℃まで上げても18℃や32℃を超えなかった。
「温めれば温めるほど飛ぶ」ではない。温度はボール性能に影響し得るが、その関係は単純な右肩上がりではなかった。そこまではデータで言える。どのボールにも共通する最適温度を決めるには、まだ研究の続きが必要だ。