「プロテインで飛距離5m増」は本当か 57人の二重盲検試験で見えた数字と限界
GOLF DNA編集部🇰🇷

3行まとめ
- ハンデ20未満のゴルファー60人を無作為に割り付け、57人が完遂した8週間の二重盲検試験では、混合タンパク質群のドライバー飛距離が平均5.17m増え、対照群との差も統計的に確認された。
- ただし5.17mは調整済みの群間効果そのものではなく、個人差も大きい。
- 初速、筋機能、体組成、資金提供まで含め、この試験から言えることと言えないことを整理する。
「プロテインを8週間飲んだら、ドライバーが約5m伸びた」。
数字だけ見ればかなり強い。2024年に公表された無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験では、ハンデ20未満のゴルファー60人を2群へ分け、57人が8週間の試験を完遂した。混合タンパク質群のドライバー飛距離は平均5.17m増え、対照群では平均5.25m減った。ベースラインを調整した群間比較でも差が確認され、p値は0.004だった。
ただ、この「5.17m」をそのまま「プロテインを飲めば5m伸びる」と読むのは早い。
5.17mは混合タンパク質群の中で見た平均変化であり、調整済みの群間差そのものではない。しかも変化量のばらつきは±12.81mと大きかった。研究は面白い結果を示しているが、数字の読み方を分けないと意味が変わってしまう。
「5.17m」は何を表した数字なのか
試験では、参加者を混合タンパク質群と対照群へ1対1で無作為に割り付けた。参加者と研究者の双方に、どちらを摂っているか分からないようにした二重盲検方式で、期間は8週間だった。
60人が割り付けられ、混合タンパク質群の3人が途中で離脱し、57人が完遂した。
混合タンパク質群のドライバー飛距離は、試験前から8週間後までに平均5.17m増加した。95%信頼区間は0.11〜10.24mで、群内の変化としてはp=0.046だった。
一方、対照群の平均変化はマイナス5.25mだった。研究では試験開始時の値を調整した群間比較も行い、飛距離についてF=6.123、p=0.004となった。
ここで重要なのは、論文が「調整後の群間差は何mだった」と、その推定値と95%信頼区間まで示しているわけではないことだ。
つまり確認できるのは、混合タンパク質群では平均5.17m伸び、対照群とは統計的な差があったこと。だが「このサプリの効果量は5.17m」と固定して読むことはできない。
8週間、何を飲んでいたのか
摂取は1日1回。昼食後に60gの粉末を約200mlの水へ溶かし、8週間続けた。
混合タンパク質群の粉末には、カゼインカルシウム11.112g、ホエイ5.748g、分離エンドウ豆タンパク質5.718gなどが含まれていた。対照群ではデキストリン27.72gを使い、味などの条件を合わせていた。
摂取遵守率は混合タンパク質群が96.22%、対照群が95.44%で、両群に大きな差はなかった。
この条件も重要だ。研究したのは「プロテイン全般」ではなく、カゼイン、ホエイ、植物性タンパク質を組み合わせた特定の混合物である。ホエイだけを飲んだ場合や、普段の食事で同量のタンパク質を増やした場合と比較した試験ではない。
ボール初速も増えたが、ヘッドスピードの群間差は明確ではなかった
飛距離と一緒に動いた数字の一つがボール初速だった。
混合タンパク質群では平均1.36m/s増加し、対照群では平均1.25m/s低下した。ベースライン調整後の群間比較ではp<0.001だった。
その一方で、ドライバーのヘッドスピードについては群間差が明確ではなく、p=0.113だった。
飛距離が伸びたからといって、「筋力が上がってヘッドスピードが上がり、その結果5m伸びた」と一本の因果で説明できるデータにはなっていない。
ボール初速には差が出ている。しかし、この研究だけでは、その変化がどの身体能力やインパクトの変化を介して起きたのかまでは確定していない。
筋機能は一部改善、体組成には群間差なし
混合タンパク質群では、握力が平均2.12kg増え、2分間の腕立て伏せは平均4.89回増えた。バランスにも改善が見られ、群間比較では膝伸展や体幹の屈曲・伸展などにも差が確認された。
一方、体脂肪率、BMI、骨格筋量には有意な群間差がなかった。
ここは少し面白い。
8週間で体組成が明確に変わらなくても、筋機能の一部とドライバーの結果には差が出た。ただし研究では、「握力が何kg増えたから飛距離が何m伸びた」という媒介分析は行っていない。
したがって、筋機能の改善を飛距離増加の原因として確定することはできない。両方が同じ試験で変化した、というところまでが確認できる事実だ。
57人の結果を、そのまま自分の「5m」にしない
この試験は、無作為化、二重盲検、対照群ありという点で、単に「飲んだ人が飛ぶようになった」という観察より強い設計になっている。
それでも、5.17mという平均値の周りには±12.81mという大きなばらつきがあった。参加者はハンデ20未満に限られ、完遂者は57人。別の集団で同じ数字が再現されるか、この試験だけでは分からない。
さらに、ホエイ単独、植物性タンパク質単独、通常の食事介入との優劣も比較していない。公開された論文本文では、試験登録番号や事前公開された解析計画も確認できない。
研究資金はCHLabs Corp.とChong Kun Dang Healthcareが提供し、著者には両社所属の研究者が含まれている。論文には潜在的な利益相反は報告されていないと記載されているが、独立した追試があるかどうかは結果の確かさを考えるうえで別の論点になる。
この試験が示したのは「5m保証」ではない
この研究から言えるのは、特定の混合タンパク質を8週間摂取した群で、対照群と比べてドライバー飛距離とボール初速に統計的な差が確認されたことだ。
同時に、体組成には明確な群間差がなく、飛距離を伸ばした仕組みも確定していない。5.17mは全員に期待できる数字ではなく、調整済みの群間効果そのものでもない。
だから、この論文の面白さは「プロテインで5m飛ぶ」という結論ではない。
無作為化・二重盲検という比較的強い試験で、実際にドライバーの数字へ差が出た。その一方で、個人差、機序、比較対象、独立再現という次の確認事項がはっきり残ったことにある。
「平均5.17m」という数字は結果の入口にはなる。ただし、自分の次の一球へそのまま足せる5mではない。