無吸入68.75%、柑橘40%でも成功率は「有意差なし」 KPGAプロ10人では姿勢指標に差
GOLF DNA編集部🇰🇷

3行まとめ
- KPGAの男性プロ10人が3mのパットを無吸入、ラベンダー、柑橘、アンモニアの4条件で各8球。
- 成功率は無吸入68.75%、柑橘40.00%まで開いたが、統計上の有意差はなかった。
- 一方で足圧中心の姿勢指標には条件差が出た。
「香りで集中できれば、パットも入りやすくなるのではないか」。そんな直感を、プロゴルファーで確かめた小さな実験がある。
2022年に公表された研究の対象は、韓国プロゴルフ協会(KPGA)に登録する右打ちの男性プロ10人。3mのパットを、無吸入、ラベンダー、柑橘、アンモニアの4条件でそれぞれ8球、1人32球行った。
結果は、ひとことで「香りが効いた」「効かなかった」と言い切れるものではなかった。
成功率は68.75%から40.00%まで開いた
パット成功率は、無吸入が68.75%。ラベンダーは51.25%、柑橘は40.00%、アンモニアは52.50%だった。
数字だけを並べると、香りを使わなかった条件が最も高く、柑橘との差は28.75ポイントある。だが4条件の差は統計的には有意ではなかった(p=.115)。
ここで重要なのは、「有意差がなかった」を「香りは何の影響もない」と読み替えないことだ。対象は10人、各条件8球の小規模実験であり、この結果だけで効果の有無を確定することはできない。
同時に、「無吸入の方が数字が高かったから、香りはパットを悪くする」と結論づけるのも早い。研究が示したのは、成功率の平均値には差が見えたものの、その差を統計的に確かなものとして確認できなかった、というところまでだ。
ところが、姿勢の指標には差が出た
興味深いのは、ボールが入ったかどうかとは別に測った姿勢安定性だ。
研究では足圧中心(CoP)の面積を測定した。アドレス時は無吸入4.69cm²に対し、ラベンダー13.48、柑橘11.58、アンモニア13.30cm²で、4条件には有意な差が出た(p<.001)。ダウンスイングと動作全体でも条件差が確認された一方、テークアウェイでは有意差がなかった。
つまり、この実験では「カップイン率では有意差なし」と「姿勢指標では条件差あり」が同時に起きている。
ただし、姿勢が変わったからパットが外れた、とまでは言えない。論文は個々の試行について、足圧中心の変化が成功・失敗をどの程度説明したかという媒介や相関を直接検証していないからだ。
身体の揺れに違いが出たことと、その違いがスコアを悪化させたことは別の話になる。
心拍数には明確な条件差が出なかった
香りによって身体反応が大きく変わったなら、心拍にも差が出そうに見える。だが、この研究ではアドレス時、パット動作中、動作全体のいずれも心拍数に有意差はなかった。
動作全体の平均心拍数は、無吸入95.01、ラベンダー94.47、柑橘93.72、アンモニア90.41だったが、条件差はp=.666だった。
成功率、姿勢、心拍。3つを分けて見ると、同じ香り刺激でも指標ごとに結果は揃っていない。
実験順序にも注意が必要だった
香りは市販品を同量だけマスク前面へ噴霧し、各条件の後には30分の休憩、鼻洗浄、マスク交換を行った。ただし、香りの濃度や具体的な噴霧量は論文に記載されていない。
さらに、ラベンダー、柑橘、アンモニアの順序は3群で変えられたが、無吸入条件だけは全員が最初に実施した。
このため、無吸入と香り条件の差には、香りそのものだけでなく、パットを重ねたことによる慣れや順序の影響が残る可能性がある。完全に無作為な順序で4条件を比べた実験ではない。
「香りで集中すれば入る」を裏付ける研究ではない
この研究は、室内マット、裸足、同じパターとボールという統一条件で行われた。対象も男性プロ10人に限られる。実際のラウンドやアマチュアゴルファーに、そのまま当てはめることはできない。
2026年9月21日時点の限定検索でも、同じようにプロゴルファーへ嗅覚刺激を与えてパッティングを調べた独立した直接再現研究は確認されていない。現状では、2022年の単一の探索的研究として読むのが妥当だ。
それでも面白いのは、結果が単純ではなかったことにある。香りを使わない条件が成功率では最も高かった。しかし、その差は統計的には有意ではない。一方、姿勢を示す一部の指標には明確な条件差が現れた。
だから、この研究から言えるのは「香りを嗅げばパットが入る」でも、「香りはパットを悪くする」でもない。
香りは少なくとも実験条件下で身体の状態を変える可能性を示したが、その変化がカップインという最終結果へどうつながるかは、まだ分かっていない。鼻に届いた刺激と、ボールがカップに入る結果の間には、まだ埋まっていない一段階がある。
出典:pmc.ncbi.nlm.nih.gov / pubmed.ncbi.nlm.nih.gov / mdpi-res.com