150万立方ヤードの石炭灰で35〜40フィートの起伏 米EPAが調べたバトルフィールドGCのその後
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米バージニア州のバトルフィールドGCは、発電所由来の石炭灰をセメントダストと混ぜた造成材で35〜40フィートの起伏を持つ18ホールを造った。
- 米環境保護庁は2010年、灰中の金属や地下水、周辺住宅井戸を調査し、井戸への移行パターンは確認しなかった。
- 約150万立方ヤードという造成量から2026年の営業継続まで、造成と環境評価を分けて追う。
ゴルフ場の起伏をつくった材料が、火力発電所から出た石炭灰だった。
米バージニア州チェサピークのバトルフィールド・ゴルフクラブ・アット・センタービルでは、ドミニオン・バージニア・パワーの石炭火力発電所由来の石炭灰(フライアッシュ)をセメントダストと混ぜ、造成と地形形成に使った。
米環境保護庁(EPA)の最終調査報告書に記録された石炭灰の量は約150万立方ヤード。コースは2007年10月13日に18ホール、パー70で開場し、完成した地形には35〜40フィートの高低差が生まれた。
ここだけを見ると、発電所の副産物を大規模造成へ再利用した事例に見える。だが、このコースが後にEPAの調査対象になった理由も、同じ石炭灰にあった。
約150万立方ヤードの石炭灰を、コースの地形そのものに使った
EPAの資料によると、造成材は発電所由来のフライアッシュとセメントダストを混ぜたものだった。これをコース造成へ使い、18ホールの地形を形成した。
EPAのコース資料が示す完成時の高低差は35〜40フィート。造成材がコースの起伏をつくる工程へ組み込まれていたことが分かる。
総量について、EPAの最終サイト調査報告は約150万立方ヤードと記載している。チェサピーク市の別資料には約150万トンという表記もあるが、単位が異なるため同じ数字として換算・統合はできない。この記事ではEPA本報告書の150万立方ヤードを使う。
EPAは土壌だけでなく、地下水と周辺住宅井戸まで調べた
2010年のEPA調査は、石炭灰の中だけを測って終わったものではない。
現地では13か所の土壌ボーリング、13か所の一時的な地下水採取地点、3本の監視井戸、2か所の表流水地点を調査し、周辺では55住宅の井戸もサンプリングした。
石炭灰では、周囲の土壌より高い濃度の複数金属が確認された。例えば灰中のヒ素は最大81mg/kg。敷地内の一時的な地下水採取地点では総ヒ素10.7〜19.8μg/L、総鉛は13地点中7地点で15.6〜28.3μg/Lだった。
ここで数値だけから「周辺へ汚染が広がった」とは結論できない。EPAが次に見たのは、灰の中や敷地内で確認された金属が、実際に周辺の飲用井戸まで移動しているかどうかだった。
55住宅のうち4件で鉛が15μg/Lを超えたが、灰からの移行パターンは確認されなかった
周辺55住宅の井戸を調べると、4住宅で鉛が15μg/Lのアクションレベルを上回った。確認値には17.9〜18.9μg/Lや67.1μg/Lの例もあった。
それでもEPAは、これをバトルフィールドGCの石炭灰から住宅井戸へ金属が移動した証拠とは判断しなかった。上流側や背景側でも同程度以上の結果があり、住宅側の配管が影響した可能性も確認されたため、灰から井戸へ続く移行パターンを見いだせなかったからだ。
表流水と底質についても、EPAは2010年時点の評価で、接触による有害な健康影響は予想されないとした。
これは「金属がなかった」という結論ではない。石炭灰や敷地内地下水では複数の金属を実測した。そのうえで、周辺住宅井戸への移行を示すパターンは確認できなかった、という二段階の結論だった。
スーパーファンド候補の点数は16.27、掲載基準28.5を下回った
EPAは調査結果から、連邦のスーパーファンド制度で優先的に扱う全国優先順位リストへの掲載可能性も評価した。
予備的な評価点は16.27。掲載基準の28.5を下回り、バトルフィールドGCは全国優先順位リストへ掲載されなかった。
2026年9月21日に確認したEPAの現行サイト情報でも、「全国優先順位リストには未掲載」で、追加のスーパーファンド対応を計画しない行政状態とされている。
ただし、この行政状態を「環境影響が一切ない」という認定へ読み替えることはできない。2010年の評価で何が確認され、どの制度上の基準を下回ったかを示す情報である。
2010年後も地下水監視は続き、2026年もコースは営業している
2010年の調査後、地下水の確認がそこで終わったわけでもない。
EPA資料は、ドミニオンによる四半期の地下水監視と、バージニア州環境当局による結果確認を説明している。2022年のチェサピーク市資料でも、周辺地下水を州当局が監視していることが記載され、2010年の年次地下水報告については、石炭灰に起因する敷地周縁の地下水悪化は示されなかったと整理されている。
同じ2022年資料では、常設クラブハウスなどの計画審査に際し、流域への配慮や下水・排水条件、地下水監視にも触れている。これは新たな石炭灰修復命令ではなく、後年の土地利用と環境管理の文脈だ。
公開一次資料だけでは、2011年から2026年までの全年度の地下水測定値を連続した表として復元することはできない。そのため「その後ずっと数値に変化がなかった」とまでは言えない。
一方、コース側の2026年4月施行の料金表には18ホールと9ホールの料金が掲載されており、2026年も営業が続いていることは確認できる。
「営業している」と「環境問題が完全に消えた」は別の話
バトルフィールドGCの経緯を一言で「石炭灰を安全に再利用した成功例」とまとめるのも、「石炭灰で汚染されたゴルフ場」と断定するのも、2010年の実測結果を正確には表さない。
確認できるのは、約150万立方ヤードの石炭灰が造成材として使われ、35〜40フィートの起伏を持つコースが2007年に開場したこと。EPAが石炭灰中の複数金属を確認した一方、2010年の調査では周辺住宅井戸への移行パターンを確認せず、スーパーファンドの全国優先順位リストにも掲載しなかったこと。そして、その後も地下水監視の記録が続き、2026年現在もゴルフ場が営業していることだ。
造成材として地形をつくった事実と、環境調査でどこまで影響が確認されたかは別々に見る必要がある。同じ150万立方ヤードの石炭灰をめぐる話でも、その二つを分けることで、このコースがどう造られ、何を調べられ、現在どこまで確認できているのかが見えてくる。
出典:epa.gov(2) / playthebattlefield.com(2) / archive.epa.gov / cumulis.epa.gov / cityofchesapeake.net