ボール洗浄機などを減らして年間1,918時間 ウェストチェスターが一部のベンチだけ戻した理由
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米ニューヨーク州のウェストチェスター・カントリークラブは、ボール洗浄機やベンチ、ロープ類などを見直し、USGAの2017年事例で年間1,918労働時間と1万500ドルの削減を報告した。
- 撤去で終わらず、待ちが生じるティーにはベンチを戻し、浮いた時間をディボット補修やラフ刈り、グリーンの細部調整へ回した。
- 便利設備の維持負担をどう見直したかを追う。
ボール洗浄機、ベンチ、ティー周りの備品、ロープと杭。プレー中には「あって当然」に見える設備でも、管理側から見ると、置いた瞬間から手入れの対象になる。
米ニューヨーク州のウェストチェスター・カントリークラブで、USGA Green Sectionが2017年に紹介したのは、その「便利さ」を一度減らしてみる運営改善だった。報告された年間削減は、労働時間1,918時間、資材費1万500ドル。しかも、すべてを撤去し続けたわけではない。実際に待ちが生じるティーではベンチを戻した。
この事例のポイントは、設備を減らしたことではなく、「何を残すか」を利用実態で決め直したことにある。
1,918時間は、七つの積み上げだった
USGA記事に載る年間労働時間を足すと、1,918時間になる。
- ボール洗浄機:380時間
- ベンチ、ティーキャディー、ディボット用バケツ:570時間
- ティーマーカー:46時間
- 赤い石材のマルチ通路:72時間
- ティーキャディー、ディボット容器:80時間
- 花壇:150時間
- ロープと杭:620時間
最も大きいのはロープと杭の620時間、次がベンチなどの570時間、ボール洗浄機の380時間だ。
ボール洗浄機だけでも、洗浄や補充、周囲の手入れ、冬季の撤去と再設置、交換部品などを合わせて年間380時間、3,000ドルとされた。小さな設備でも、コース内の各所に置かれ、年間を通して世話をすれば時間が積み上がる。
資材費としてUSGAが示した項目も合計1万500ドル。内訳はボール洗浄機3,000ドル、ベンチ等2,000ドル、ティーマーカー1,000ドル、赤い石材のマルチ通路500ドル、花壇4,000ドルだった。
ただし、1,918時間は「監査済みの勤怠データ」とまでは言えない。USGA原記事は項目ごとの年間時間を示しているものの、実際の勤怠記録を積み上げたのか、作業回数と所要時間から管理側が試算したのか、その測定方法は明記していない。この記事ではケーススタディで報告された管理値として扱うのが適切だ。
撤去への質問は出た。それでも、全部を元には戻さなかった
便利設備を減らせば、利用者が何も感じないわけではない。
ボール洗浄機の撤去には会員から質問が出た。ベンチについても、撤去後に待ち時間が生じる一部のティーでは再設置した。
ここがこの事例の面白いところだ。判断は「設備は全部ムダ」でも「会員が使うものは全部残す」でもなかった。実際に待つ場所では座る価値があるためベンチを戻し、そうでない設備は減らす。便利さの有無ではなく、使われ方と維持負担を見ながら調整した。
USGA記事では、こうした調整後、多くのゴルファーが、資源をコース管理へ振り向ける変更を評価したとされる。ただしこれは独立した満足度調査の結果ではなく、事例記事の定性的な記述だ。「会員満足度が何%上がった」といった数字は確認されていない。
浮いた人手は、芝そのものへ戻した
削った1,918時間が、そのまま人件費削減だけに消えたわけでもない。
USGAの関連取材で、管理側は浮いた時間を、ディボット補修の増加、ラフの刈り込み頻度向上、パッティンググリーンの細部調整へ回したと説明している。
つまり、設備維持の仕事を減らして、プレー面そのものの管理へ人手を移した。ボール洗浄機をきれいにする時間と、ディボットを直す時間。どちらも「コース管理」だが、限られた人手の中で何を優先するかは同じではない。
この選択が芝品質やプレー時間を実際にどれだけ改善したかは、独立した前後比較では確認されていない。数字で確定できるのは、USGA事例で報告された作業時間と資材費の削減までだ。
「減らす」が答えではなく、保守時間まで含めて設備を選ぶ
この2017年の事例を、他のゴルフ場へそのまま当てはめることはできない。設備の数、利用頻度、会員の期待、作業体制が違えば、1,918時間という数字も変わる。
それでも、設備を見る物差しは変えられる。
購入価格だけではなく、清掃、補充、撤去・再設置、周囲の手入れまで含めて「年間で何時間使う設備なのか」を見る。そして、撤去した後に本当に困る場所だけ戻す。
ウェストチェスターの事例では、その結果が年間1,918時間と1万500ドルだった。しかも一部のベンチは戻した。だからこれは、便利さを捨てた話ではない。
限られた人手を、何に使うとプレーヤーへ最も返せるのか。その基準で「置いてあるから維持する」を見直した話だ。