「打感」は手だけで決まらない 振動より音が強く主観評価と結びついたゴルフ研究
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 「打感」は手に伝わる振動だけではない。
- 2006年の研究では、ゴルファーの主観評価との関係は振動より音のデータで強かった。
- 2012年には日本の研究者が、音の印象に敏感な周波数帯を特定し、構造変更で音圧を下げる設計まで検討した。
試打会で「これは打感が柔らかい」「こっちは弾く感じが強い」と言うとき、手のひらに伝わる振動だけを感じていると思いがちだ。
だが、ゴルフクラブの研究をたどると、打感の一部はかなり「耳」が作っている。
2006年に発表された研究では、ゴルファーの主観評価と、打球時の音、直線方向の振動、ねじれ方向の振動との関係を調べた。研究者が報告したのは、振動データより音データの方が主観評価との関係が強かったという結果だ。
つまり「打感」は、手で受ける衝撃だけの話ではない。インパクトで聞こえる音も、クラブをどう感じるかを左右する情報になり得る。
「いい音」を選ぶのではなく、構造から作る
2012年には、日本の研究チームがその考えをクラブの構造設計まで進めている。
研究の問題設定は、飛距離だけで製品差を広げることが難しくなる中、クラブの個性を「音質」から作れないかというものだった。研究チームは打球音を評価し、音の印象を改善するうえで感度の高い周波数帯を特定。その帯域の音圧を下げるよう、クラブの構造を変更した。
ここで面白いのは、完成したクラブの音を聞いて「好きか嫌いか」を判定しただけではないことだ。
狙う音を決め、その音へ近づけるために構造を変える。打球音が、塗装や形状と同じように設計対象として扱われている。
公開されている抄録だけでは、最も感度が高かった具体的な周波数や、構造変更後に評価がどれだけ改善したかまでは確認できない。それでも、少なくとも2012年には「音を構造から設計する」研究が行われていた。
音だけで「飛びそう」に聞こえることもある
さらに興味深い実験が2008年にある。
この研究では、ドライバーの打球音を、シャフトが動く音、ボールの振動、ヘッドの振動などに分けて考え、クラブフェースとボールの基本振動を人工的に合成した音を使って感覚評価を行った。
その中で、ボールとクラブフェースの基本振動数の比が2対3になる条件は、「力強い」「飛距離が出そう」という評価を得た。
重要なのは、本当に飛距離が伸びたという実験ではないことだ。変わったのは音に対する印象である。
つまりゴルファーは、弾道を見る前から、インパクト音によって「これは飛びそうだ」と感じる可能性がある。クラブの音作りが製品の印象へ直結する理由が、ここにはかなり分かりやすく表れている。
音と振動は別々でもない
2016年の研究では、打球音と同時に手へ伝わる振動も含めて評価された。
シャフト振動の振幅を小さくすると、「澄んだ感じ」「鋭さ」「余韻」といった印象が変化した。高い周波数側の振動成分を増やした場合にも、複数の印象項目が変わった。
ここから分かるのは、耳と手の情報が完全に別々ではないということだ。
ヘッドの構造、材料、振動の減衰の仕方を変えると、聞こえる音も、手へ返ってくる感触も変わる。メーカーが「打感」を作ろうとするとき、音響と振動を同時に考える理由がある。
20年後の2026年も「音と打感」は設計項目
では、これは昔の研究だけの話なのか。
2026年5月、タイトリストはGTSドライバーを発表した。その公式説明で、開発側がゴルファーの重視する要素として挙げたのは、ボール初速、寛容性、スピンの安定性、調整機能、そして「音と打感」だった。
GTSでは独自の高分子素材を使った全面熱成形ボディを採用し、前世代のGTに比べてその素材量を13gから26gへ増やした。素材はボディ表面積の約60%を占めながら、質量では約13%。メーカーは、重量を抑えながら、ゴルファーに好まれる音と打感を実現できる点を利点として説明している。
もちろん、タイトリストが2006年や2012年の研究を直接使ってGTSを設計した、という証拠はない。
それでも、約20年前の研究で扱われていた「音をクラブ性能の一部として設計する」という発想が、2026年の市販ドライバーでも明確な開発項目になっていることは確認できる。
試打で感じる「好き」は、曖昧な感想だけではない
クラブ選びでは、ボール初速、打ち出し角、スピン量、左右のばらつきといった数字が重要だ。それを音だけで置き換えることはできない。
ただ、数字が近い2本を打ったときに「なぜかこっちが気持ちいい」と感じるなら、その差の一部は耳から入っている可能性がある。
出典:jstage.jst.go.jp(2・3) / journals.sagepub.com / Titleist
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