古いピン「アイ2」が合法だった理由
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2010年の溝規制直後、約20年前のピン「アイ2」が米男子ツアーで使えた。
- 鍵は1989年から続く規則紛争と和解契約。
- 選手使用で表面化した例外が、ピンの権利放棄で閉じるまでと2026年現在の扱いを追う。
2010年1月、ゴルフクラブの溝に新しい仕様が入った。ところが米男子ツアーでは、その直後に約20年前のウェッジが堂々と試合で使われた。
ピン(PING)のEYE2(アイ2)だ。
ジョン・デーリーとディーン・ウィルソンがソニー・オープンで古いアイ2のウェッジを使い、フィル・ミケルソンもファーマーズ・インシュランス・オープンで使用した。奇妙なのは、これが規則違反ではなかったことだ。米男子ツアー自身も、当時の全米ゴルフ協会(USGA)の競技条件では使用が認められ、ルール違反ではないと公表した。
なぜ新しい規制が始まったのに、1980年代のクラブが通ったのか。
答えはクラブの新旧ではない。約20年前の裁判と和解契約にあった。
新規制の中に残っていた「アイ2例外」
全米ゴルフ協会の新しい溝・パンチマーク仕様は2010年1月1日に発効した。ただし、古いクラブが一斉に使用禁止になったわけではない。
当時の全米ゴルフ協会の公式判断には、アイ2について明確な例外があった。1990年3月31日より前に製造され、溝の間隔と幅の比率が2.3対1という条件を満たすアイ2アイアンは、2010年の溝規制を使う一部の競技でも規則上認められた。
つまり「古いアイ2なら何でも可」ではない。製造時期と仕様が条件だった。
では、なぜピンだけにそんな例外が残っていたのか。ここから時計を1989年まで戻す必要がある。
1989年、溝を巡る争いは裁判になった
1989年、米男子ツアーはV字溝を前提とする独自規定を導入し、1990年からU字溝のアイアンを排除しようとした。
これに対する訴訟で、米連邦地裁は1989年12月、ツアーによる規定の施行を差し止める仮処分を出した。裁判所は、独占禁止法やツアーの統治を巡る争いが続く間、それまでの状態を維持した。
その後、ピンが2010年に説明したところでは、1990年に全米ゴルフ協会との和解、1993年には米男子ツアーとの和解が成立した。これらが1990年4月より前に作られたアイ2を保護し、特にツアーとの契約は、対象クラブをツアーが禁止することを制約していた。
2010年に起きたのは、新しい規則と古い契約が真正面からぶつかった出来事だった。
全米ゴルフ協会の規則上、対象のアイ2は例外として適合する。そして米男子ツアーも、過去の和解契約によってそのクラブを独自に締め出せない。だから、新規制が始まっても古いアイ2は試合に戻ってこられた。
2010年、眠っていた契約が試合に出てきた
長年の契約が現実の問題になったのは、選手が実際にクラブをバッグへ入れたからだ。
ソニー・オープンでデーリーとウィルソンが使用し、続いてミケルソンもファーマーズ・インシュランス・オープンでアイ2を使った。そこで「新しい溝規制の大会なのに、なぜ古いウェッジが使えるのか」という矛盾が一気に表面化した。
米男子ツアーの答えは明確だった。対象のアイ2を使うことは、当時の規則では認められており、ルール違反ではない。
つまり問題の核心は、選手が規則を破っていたことではない。規則を守っていても、20年前の和解によって一部の古いクラブだけが新しい競技条件の外側に残っていたことだった。
3月29日、ピン自身が契約上の壁を外した
騒動を閉じたのは、新しい溝規則の追加改正ではなかった。
ピンは2010年3月、1990年4月より前のアイ2アイアンとウェッジを米男子ツアーが禁止することを妨げていた契約上の権利を放棄した。効力発生日は3月29日だった。
対象は米男子ツアーだけではない。チャンピオンズツアー、当時のネーションワイドツアーにも及び、全米ゴルフ協会の要請を受けて全米オープンにも適用された。一方、アマチュアに関する従来の権利は残された。
ここが「ルール違反ではないのにツアーから消えた」仕組みの核心だ。
アイ2の溝そのものが3月29日に変わったわけではない。ピンが権利を放棄したことで、米男子ツアーを縛っていた契約上の制約が外れた。2010年初頭に現れたツアーでの例外は、そこで事実上閉じた。
2026年、古いアイ2はもう使えないのか
答えは「競技による」だ。
2026年現在、全米ゴルフ協会の新しい溝仕様は、競技委員会が採用するローカルルール「G-2」を通じて適用されている。2010年以前のクラブが一般のゴルフですべて一律禁止になったわけではない。全米ゴルフ協会が示している一般適用の最短時期も、将来採用される場合の2028年1月以降だ。
出典:USGA(2・3) / PING Proving Grounds / Golf Business News / law.justia.com / Golf Digest(2) / playersupport.pgatourhq.com
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3行まとめ
- 2010年の溝規格変更は、旧クラブを一斉禁止したものではない。
- R&Aは2024年にも、更新規格はModel Local Rule G-2を採用する競技で適用し、全面適用なら少なくとも4年前に通知すると説明。
- 中古ウェッジを見るときの確認順を整理する。