一打の裏で150台のカメラが動く
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- テレビに一瞬で出る残り距離やストロークス・ゲインド。
- その裏では、150台超の4Kカメラ、長大な通信線、人の計測、サーバーが動く。
- 2001年から2026年まで、巨大なショットリンクがどう軽量化されてきたかを追う。
テレビ中継で選手が球を打つと、残り距離や弾道、ストロークス・ゲインドがすぐに表示される。
画面だけを見れば、どこかのコンピューターが瞬時に計算しているように見える。だが、その数字を作る前には、コース上で「球がどこからどこへ動いたか」を拾う大がかりな設備が必要になる。
米男子ツアーのショットリンクは2001年以降、この一打ごとの位置データを集めてきた。ツアーの2023年時点の説明では、開始から約2800万ショットを取得している。
1コースに150台超の4Kカメラ
物量が最も見えやすいのが、2025年のAT&Tペブルビーチ・プロアマだ。
ツアー公式記事によると、フル構成のショットリンク・プロでは、1コース当たり20〜40マイルの光ファイバーと150台超の4Kボール追跡カメラを使った。大会はペブルビーチ・ゴルフリンクスとスパイグラス・ヒルの2コース開催だったため、スパイグラス・ヒルにも同規模の設備をもう一式増設した。
さらに公式記事は、「各ゴルフコースから約67テラバイトのデータ」が生まれると説明している。
ここで重要なのは、67テラバイトを「1日分」と読まないことだ。公表資料が示しているのは「各コースから」という範囲までで、1日、4日間、設営を含む期間のどれを指すかは明記されていない。
150台超のカメラや20〜40マイルの光ファイバーも、すべての大会で固定された数字ではない。2コースをフル計測したペブルビーチ大会で確認された構成だ。
一打を数字にする仕事は1カ月以上前から始まる
ショットリンクは、試合当日にカメラを置けば動く仕組みではない。
2025年の公式説明では、大会の1カ月以上前からコースをドローンと徒歩で精密に地図化する。競技が始まると、取得した各ショットの情報をミリ秒単位で送り、ツアーキャスト、放送、アプリ、統計へ渡していく。
カメラだけで完結するわけでもない。
2025年8月のツアー公式説明では、現行のフル構成に150台の4Kカメラと36台のトラックマン・レーダーが使われ、全ショットのボール飛行をリアルタイムで取得している。現在のショットリンク公式ページには、携帯端末やレーザー距離計を使うオペレーターと、データを保存・解析する中枢サーバーの役割も記されている。
つまり、一打を数字へ変えるまでには、カメラ、レーダー、通信網、サーバー、人による計測が重なっている。そこで確定した位置や距離が、ストロークス・ゲインドなどの計算へ渡される。
巨大設備の弱点は、設営そのものだった
これだけの機器をコース全体へ置けば、精度だけでなく、電源と配線、人員、運用費が負担になる。
2023年にツアーが説明した従来構成では、通常20〜30マイルの光ファイバー兼電源ケーブルを敷設する必要があった。そこで再設計されたショットリンクでは、センサー拠点に太陽光ハイブリッド電源を導入した。
紹介されたパー4の例では、センサー付き三脚を6基配置。独立電源は外部充電なしで最大2日動く設計とされた。狙いは、長大な電源ケーブルや発電機への依存を減らすことにある。
これはフル設備をなくす改革ではない。巨大な計測網を残したまま、まず電源まわりの設営負荷を軽くする変更だった。
2024年、軽量版は「選手がGPSを着ける」形で始まった
次の段階がショットリンク・セレクトだ。ここは2026年に突然始まった話ではない。
2024年4月、コーンフェリーツアーに導入されたセレクトは、選手が任意で小型GPS端末を装着し、歩行スコアラーの入力と組み合わせて選手位置を取る方式だった。グリーン周辺ではレーザー計測も使い、詳細なショットデータは原則として約1打遅れで生成された。
フル版がボール自体を追うのに対し、この方式ではGPS端末の位置からボール位置を推定する。そのため公式説明では、選手の姿勢差などを含め、ボール位置は約1クラブ長、約4フィート以内になると見込まれていた。
選手の装着は任意なので、非装着選手の詳細ショットデータは取れない。通信も専用網ではなく公衆の携帯回線を使うため、遅延する場合があった。
それでも軽量版が必要だった理由は明快だ。ツアーは、フル版の大規模な機材、通信、電源、人員、運用費が他ツアーへ広げる際の障壁になると説明している。セレクトは、その物量を減らしながらショット単位のデータを広げるために作られた。
2025年秋、同じ名前でモバイルカメラ型へ
その後、同じ「ショットリンク・セレクト」の名前で入力方式が変わる。
2026年4月の公式記事は、新たに作られたモバイルカメラ方式のセレクトを説明している。カメラでボールそのものの位置を捉え、正確なGPS座標を付ける方式で、レーダーデータは使わない。
このカメラ型は2025年秋のベイカレント・クラシックとヒーロー・ワールド・チャレンジで先行導入され、2026年4月からコーンフェリーツアーへ展開された。座標、距離、ライなどからストロークス・ゲインドも生成する。
2024年の選手装着GPS型から、2025年秋以降のモバイルカメラ型へ、入力方法は明確に変わった。ただし、ツアーは両方を同じ「ショットリンク・セレクト」と呼んでおり、世代名や2024年型の終了時期、方式変更の直接理由までは公表していない。
確認できる時間軸は、2024年にGPS装着型がコーンフェリーツアーで始まり、2025年秋にモバイルカメラ型が米男子ツアーの大会で先行し、2026年4月にそのカメラ型がコーンフェリーツアーへ広がった、という流れだ。
2026年もフル版は消えていない
軽量版が進化しても、巨大なショットリンク・プロが不要になったわけではない。
2025年8月時点で、フル版は150台の4Kカメラと36台のトラックマン・レーダーを使う構成が現役で、トラックマンとの契約も2030年まで更新されている。
2026年のショットリンクは、フル版を捨てて小型化したのではない。精密で大規模なフル版を必要な大会に残し、その外側へ軽量版を広げる二層構造になっている。
2001年から積み上げてきた一打のデータ。その正体は、計算式だけではない。長い通信線を敷き、電源を置き、カメラとレーダーで球を追い、人が補い、サーバーへ送る「コース全体の計測工場」だ。
テレビに一瞬で現れる一打の数字は、その巨大な物理インフラの最後の一滴にすぎない。
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同じ100万ドル、男子だけ形を変えた
3行まとめ
- 2019年、エーオンは米男子・米女子両ツアーに同じ競技方式と各100万ドルの賞金を載せた。
- ところが2024年、男子側は中継分析とシグネチャー大会への出場経路へ再設計。
- 女子側は2026年も100万ドルのシーズン競技を継続している。