バーディーの勢いは次ホールへ続くか
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 米男子ツアーの約78万ホールを再分析した2025年研究では、バーディー後の好調連鎖は支持されず、ボギー後の悪化も次ホールの確率差では約0.3ポイントにとどまった。
- 2018年研究との違いと統制方法を追うと、「勢い」に見えるものの一部が選手の実力や大会条件で説明される姿が見えてくる。
- 2018年の研究は、2014年の米男子ツアー19大会、213選手を対象にした。
ゴルフでは、バーディーを取った直後に「乗ってきた」と感じることがある。逆に、ボギーのあとに崩れると「悪い流れを引きずった」と見えやすい。
では、米男子ツアーの何十万ホールという実データでも、その勢いは次の1ホールへ残っているのか。
結論から言えば、2025年の約78万ホールの再分析では、バーディー後に好結果が続く「好調の連鎖」は支持されなかった。不調の連鎖は統計上わずかに残ったが、選手の実力や大会・ラウンドの条件を細かくそろえるほど、その大きさは急速に縮んだ。
2018年研究では「好調」より「不調」が残った
2018年の研究は、2014年の米男子ツアー19大会、213選手を対象にした。収集した11万3723ホールのうち、直前ホールの結果を使える10万7405ホールを分析している。
モデルには、その日のホール相対難度、パー、直前ホールの結果、選手固有の差などを組み込んだ。
そこで十分な証拠が得られなかったのが、バーディーなどの好結果が次ホールへ続く「好調の連鎖」だった。一方、悪い結果のあとに次も悪くなる「不調の連鎖」は、特にパー4で統計的な関連が確認された。
この段階では、「悪い流れだけは残るのか」という見方ができた。
約78万ホールで再分析すると、不調の連鎖はかなり小さくなった
2025年の研究は、対象を大きく広げた。2021-22、2022-23、2024の3シーズンから、主要モデルで78万2946ホールを分析した。
重要なのは、単にデータ量を増やしたことではない。選手ごとのシーズン差や、大会ごとの各ラウンドといった条件を固定して比べたことだ。
この完全統制モデルで、直前ホールがバーディー以上だった場合、次ホールでバーディー以上になるオッズ比は0.945だった。研究が示した例では、確率は14.7%から14.0%へ下がる。
だからといって、「バーディーを取ると次ホールが悪くなる」と読むのは早い。この分析は前ホールの結果と次ホールの結果の関連を測ったもので、自信、戦略変更、平均への回帰など、原因を一つに特定したものではない。
少なくとも、バーディーの勢いがそのまま次ホールのバーディー確率を押し上げる形は確認されなかった。
ボギー後に残った差は、13.8%から14.1%
では、不調の連鎖はどうだったのか。
2025年研究の完全統制モデルでは、ボギーまたはそれより悪い結果のあと、次ホールでもボギーまたはそれより悪い結果になるオッズ比は1.022。例示された確率では13.8%から14.1%への上昇だった。
差は0.3ポイントだ。
さらに興味深いのは、統制を増やしたときの変化だ。ボギー後のオッズ比は、固定効果を入れないモデルでは1.100だったが、大会・ラウンドをそろえると1.089、選手・シーズンをそろえると1.041、両方をそろえると1.022まで縮んだ。
2018年研究と比べても、不調の連鎖の推定は対数オッズ係数で約76%小さくなった。
つまり、「悪い流れ」に見えるものの一部は、もともとの選手の実力差や、その大会・ラウンド固有の難しさと重なっていた可能性がある。
前のラウンドの好不調は、次のラウンドを有意に予測しなかった
勢いを1ホールではなく1ラウンド単位で見ると、さらに慎重な結果になる。
2025年研究では、選手と大会ラウンドの条件を統制すると、前ラウンドのスコアは次ラウンドのスコアを有意に予測しなかった。
一方、2022年には、短期の「調子」が約4週間続くとする別の研究もある。ただし、こちらは前ホールから次ホールという瞬間的な連鎖ではなく、複数大会にまたがる別の時間尺度を扱っている。
同じ「調子」という言葉でも、測っているものは違う。
他ツアーでも「不調の連鎖」は報告されている
2019年の韓国女子ツアー研究でも、前ホールが悪かった場合に次ホールも悪くなる関連が報告されている。実力別に分けても同様の方向が示された。
ただし、公開抄録で確認できる範囲では、米男子ツアーの2018年・2025年研究と統計モデルや効果量が同じではない。直接の再現試験とは扱えない。
2026年9月までに、2025年研究と同じ仕様で女子米ツアーや欧州男子ツアーなどを検証した新しい直接追試は、今回確認した範囲では見つかっていない。2025年研究の著者自身も、他ツアーへの拡張を今後の課題としている。
「勢い」はゼロではなく、数字にするとかなり小さい
この2つの米男子ツアー研究から見えるのは、「流れなんて存在しない」と言い切ることではない。
より正確なのは、次の1ホールに限れば、バーディー後の好調連鎖は支持されず、ボギー後の不調連鎖も、条件を細かくそろえるほど小さくなったということだ。
完全統制後に残ったボギー後の差は、例示確率で13.8%から14.1%。プレー中には大きな流れに感じても、何十万ホールをまとめて見ると差はかなり小さい。
そして、その小さな差が自信の低下なのか、戦略変更なのか、別の要因なのかまでは、このデータだけでは決められない。
バーディーの次だから入る。ボギーの次だから崩れる。
米男子ツアーの大規模データは、そんな単純な連鎖よりも、1ホールごとに状況を切り分けて見る必要があることを示している。
出典:journals.sagepub.com(2) / kci.go.kr / salford-repository.worktribe.com / PGA TOUR
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