747時間の全ショット配信はどこへ
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2020年のTHE PLAYERSで、全選手・全ショットを選んで見るために747時間分の配信が計画された。
- しかし大会は1ラウンドで中止。
- 約1万ショットを配信した初日から、2021年の再実施、2022年以降の4配信、2026年の現在地まで、何が残ったのかを追う。
2020年3月、米男子ツアーはTHE PLAYERSで、それまでの「放送側が選んだ組を見る」中継から大きく踏み出した。
狙ったのは、好きな選手を自分で選び、その選手の全ショットをリアルタイムで見ることだった。
大会前に用意された計画は4日間で747時間分。木曜と金曜で432時間、土曜と日曜で315時間を見込んでいた。これは実際に747時間を配信したという数字ではない。大会前の予定量だ。
さらにコース上のカメラは約120台規模。ここも数字の読み方に注意がいる。120台はNBC、PGA TOUR LIVE、Every Shot Liveを合わせた総数で、Every Shot Liveが使うのは93台だった。「追加36台」は既存計画に足した台数で、93台と36台を単純に足して129台という意味ではない。
初日だけで約1万ショットを配信した
計画は紙の上だけでは終わらなかった。
2020年の第1ラウンドではEvery Shot Liveが実際に稼働し、米男子ツアーは翌年、その1日だけで約1万ショットを取得・配信できたと振り返っている。
ところが大会は次の日に止まった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、THE PLAYERSは1ラウンドだけで中止となった。
処理も通常の途中終了とは違った。大会の統計はすべて消去され、松山英樹が初日に記録したコース記録タイの63も公式記録には残らなかった。一方、賞金は総額の半分にあたる750万ドルが144人へ均等配分され、1人あたり5万2083.33ドルとなった。
つまり747時間という巨大な構想は、実績としては1日、約1万ショットで途切れた。
翌年、同じ発想を4日間へ戻した
ここで面白いのは、仕組みそのものが消えなかったことだ。
2021年のTHE PLAYERSでEvery Shot Liveは再び投入された。93台のカメラを使い、約3万1000打、約430ラウンドを4日間で扱う計画となり、専任スタッフは63人。米男子ツアーは、2020年の実施から1年間で配信技術を改良したと説明している。
映像の伝送にはアマゾンの映像配信基盤が使われた。PGA TOURは、2020年の1ラウンドで全18ホールをカバーできると確認し、その後の1年で配信技術を改良して2021年の4日間運用へ戻したと説明している。
ただし「大会中止があったから配信技術が進化した」とまでは言えない。公式に確認できるのは、2020年に全18ホールで実行可能性を確認し、その後1年で技術を改良して2021年に再投入したことまでだ。
2022年からは全員選択式ではなく4つの配信へ
その後、視聴設計は別の形へ整理された。
2022年からPGA TOUR LIVEはESPN+で35大会を対象に、メイン配信、注目1組、注目複数組、注目ホールという4種類を標準化した。
このうち注目1組では、その組の全ショットを見ることができる。つまり「1人のプレーを最初から最後まで追いたい」というEvery Shot Liveの発想は残った一方、2020年に掲げた「全選手から好きな選手を選び、その全ショットを見る」という形が標準サービスになったわけではない。
2023年のTHE PLAYERSでは、午前の一定時間に全組・全ホールの全ショットを個別配信する強化版が実施された。2020年型の視聴設計は、限定された時間帯では再び姿を見せている。
2026年、残ったのは「全員」より「選んで深く見る」仕組み
2026年現在のPGA TOUR LIVE公式ページは、メイン、注目ホール、注目1組、注目複数組の4方式を案内している。公式案内で「全ショット」と明示されるのは、その日の注目1組だ。
ただし大会ごとの4配信は固定ではない。2026年のTHE PLAYERSでは、メイン、注目1組、注目複数組に加えてベットキャスト(賭け情報・分析配信)が4本目として案内された。構成は大会によって入れ替わるが、2020年型の「全選手・全ショットを自由に選ぶ」サービスは標準配信としては示されていない。
だから、2020年の747時間構想がそのまま現在のサービスになったわけではない。
残ったのは二つだ。ひとつは、2020年に1ラウンドで約1万ショットを扱い、翌2021年に93台のカメラと専任63人の体制で4日間へ戻した制作・配信の実行経験。もうひとつは、放送側が決めた映像だけを見るのではなく、視聴者が追いたい対象を選び、そのプレーを深く見るという考え方だ。
747時間の全ショット配信は1日で止まった。しかし、その後に残ったのは747時間そのものではなく、「誰を見るかを視聴者が選ぶ」という中継の設計だった。2026年の標準配信は全選手選択式ではないが、注目1組の全ショットや複数の選択肢に、その発想は形を変えて残っている。
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