スマホ解禁と全面禁止、15年の分岐
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2011年に携帯端末を解禁し、2017年には写真・動画・音声の記録を競技エリアまで広げた米男子ツアー。
- 一方、マスターズは2026年も電子機器を会場から排除する。
- 15年で分かれた観戦ルールを、公式に示された理由と現在の規則からたどる。
2011年、米男子ツアーは携帯端末を会場から締め出す方針を大きく変えた。それから15年。2026年のマスターズでは、電話やノートパソコン、タブレットなどの電子機器は今も会場内で厳禁だ。同じトップ競技の観戦なのに、両者は正反対に見える道を選んでいる。
分岐の始まりは2010年後半から2011年初めだった。米男子ツアーは5大会で携帯端末の試験運用を行い、2011年2月に全体方針として導入した。当時、ツアーのアンディ・パズダーは、試験では観客がサイレント設定を守り、選手への妨害もほとんど問題にならなかったと説明した。端末を認めた狙いは、観戦中でも仕事や家族とつながれるようにして体験を良くすること。ただし、競技の完全性を損なわないことが条件だった。
解禁といっても、2011年は自由ではない。端末はサイレントが必須で、通話は指定区域だけ。データ利用は制限付きで認めた一方、競技日の写真撮影は禁止、動画撮影は常時禁止だった。つまり最初の設計は「持ち込ませるが、競技を邪魔する使い方は止める」だった。
その境界がさらに動いたのが2017年だ。米男子ツアーは写真だけでなく、動画や音声の記録も大会週を通じて個人利用目的なら認める方向へ広げた。公式には、観戦体験全体を高めることが目的とされた。ただし、商用利用やライブ配信、リアルタイムで一打一打を流す行為は残して禁止した。
2026年の現行ルールも、この考え方を引き継いでいる。写真、動画、音声は個人利用なら可能。端末はサイレントにし、通話は指定区域に限る。選手やキャディー、メディアを妨害してはいけない。ライブやそれに近い配信、リアルタイムの一打ごと・ホールごとの配信も認めていない。接続や記録そのものを禁じるのではなく、使い方と共有の仕方に境界線を引いている。
マスターズは逆だ。2026年の公式資料では、電話、ノートパソコン、タブレット、ドローンなどの電子機器を会場内で常時禁止している。音声、動画、データを記録したり送信したりする機器も持ち込めない。競技日のカメラも禁止だ。違反すれば退場だけでなく、チケット購入者が将来の購入資格を永久に失う可能性もある。
では、なぜそこまで厳しいのか。少なくとも公式に確認できる理由は明確だ。2017年、当時オーガスタ・ナショナル会長だったビリー・ペインは、携帯電話の着信音や会話は選手を含む周囲への刺激となり、集中を妨げる要因になると説明した。それが禁止という方法を選んだ理由だと述べている。後任のフレッド・リドリーも2019年、携帯禁止はマスターズを他大会と区別する特徴で、観客からも評価されているとして、方針変更を見込まない考えを示した。
ここで「伝統を守るため」「スマホを忘れて没入してほしいから」と理由を足す必要はない。今回確認できた公式説明の中心は、雑音や会話などによる妨害を入口から取り除くことだ。
15年間で両者が分かれたのは、スマホを好きか嫌いかという話ではない。米男子ツアーは、観客の接続や記録を認めたうえで、サイレント、通話区域、非商用、ライブ配信禁止といったルールで競技を守る。マスターズは、端末そのものを会場から排除し、妨害が起きる入口を閉じる。
どちらが観客満足度を高め、どちらが競技妨害を減らしているのかを同じ条件で比較できるデータは、今回の材料にはない。だから制度の優劣までは言えない。ただ、2026年の現在地ははっきりしている。同じゴルフ観戦でも、一方は「持ち込んで使い方を制限する」、もう一方は「持ち込ませない」。15年かけて、観戦体験を守る境界線そのものが別の場所に引かれた。
出典:thememorialtournament.com / PGA TOUR / Masters / prnewswire.com / golfchannel.com / wmphoenixopen.com / investing.com / Golf Digest
関連記事
「遠い人から」なのに、先に打っていい? ルールがレディーゴルフを勧める理由
3行まとめ
- ゴルフの通常の打順は、ティーショット後ならホールから遠い球が先。
- それでもストロークプレーでは、規則6.4自身が安全なレディーゴルフを認め、勧めている。
- マッチプレーとの違い、2罰打になる例外、40秒推奨が「自動罰」ではない理由まで整理する。