平均では消えるシャフトの個人差
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- シャフトの硬さを変えても全体平均ではヘッド速度差がほぼ出ないのに、2016年研究では約半数の参加者に個人差が出た。
- トルク実験や市販表示の測定データまで重ねると、「硬いほど安定」という一方向の説明では足りない。
- 2012年の研究では20人が、曲げ剛性だけを変えた2本のクラブを打った。
33人が、硬さの異なる2本のシャフトをそれぞれ14球ずつ打った。全体平均で見ると、ヘッド速度に有意な差はなかった。
ところが個人別に見ると、約半数の参加者で有意な差が出た。
シャフトの話が難しいのは、まさにここにある。平均では差が消えても、一人ひとりまで同じ反応になるわけではない。
柔らかい方が速くても「意味のある差」とは限らない
2012年の研究では20人が、曲げ剛性だけを変えた2本のクラブを打った。柔らかいシャフトでは、ヘッド速度が0.45%、ボール速度が0.7%高かった。
数字だけを見ると「柔らかい方が走る」と言いたくなる。だが、ヘッド速度の差は約0.18m/s、ボール速度の差は約0.4m/s。効果量もそれぞれ0.002、0.003と小さく、著者は剛性だけの変更が測定項目に意味のある影響を与えたとは評価しなかった。
ここで重要なのは、差がゼロだったことではない。数値上の差があっても、その大きさまで見なければ「硬い」「柔らかい」だけで性能を語れないということだ。
2016年は平均差が消え、個人差が残った
2016年の研究では33人が、R相当とX相当のシャフトを各14球打った。
R相当ではシャフトの反発に由来する速度が大きかった一方、グリップの角速度は小さかった。二つの作用が打ち消し合う形になり、最終的なヘッド速度の全体差は効果量0.03と小さく、統計的にも有意ではなかった。
それでも個人単位では、約半数の参加者に有意差があった。
つまり「全体で差がない」は、「誰が打っても差がない」と同じ意味ではない。平均値の中で、異なる反応が相殺されることがある。
トルクを変えると平均では右へ動いた
曲げ剛性とトルクは別の機械特性だ。2018年の研究は、このうちトルクだけに焦点を当てた。
40人が同じピンGのヘッドを使い、その他の特性をできるだけ近づけたうえで、トルク2.0度と8.0度の2本を各14球打った。
高トルク側では、インパクト時のフェースが平均で約1度開き、ロフトは0.5度増えた。打ち出し方向は0.6度右、最終到達位置は平均4.5m右だった。一方、ヘッド速度には有意な差がなかった。
個人別では、シャフト変形だけによるフェース角の変化が、高トルク側で有意に大きかった人が40人中25人いた。
ただ、この実験は2.0度と8.0度という大きく離れた条件を比べている。一般的なフィッティングで見かける3〜4度程度の違いに、そのまま同じ大きさの変化が出ると読むことはできない。
R・S・Xはメーカー共通の物差しではない
さらにややこしいのが、市販シャフトのフレックス表示だ。
ゴルフワークスの現行データは、27メーカー、1100本を超えるシャフトを同じ周波数測定で比較している。その結果、L・A・R・S・Xという各表示の周波数レンジには重なりがある。
つまり、RやSやXはメーカーをまたいだ絶対的な剛性尺度ではない。同じ文字が付いているからといって、機械的な硬さまで同じとは限らない。
トルクについても、2018年の原著は業界統一の測定標準がないと明記している。表示スペックだけから、全員のフェース向きや球筋を一方向に予測するのが難しい理由の一つだ。
2026年時点でも「全員同じ」は確認されていない
2019年には、ハンデ5以下の右打ち男性12人が、剛性だけ異なる3本を各6球打つ研究が行われた。同じゴルファー内のシャフトひずみパターンは、ゴルファー同士を比べた場合より一貫していた。
これは反応に個人固有の傾向があることを補強する結果だが、2012年研究と著者が重なっており、独立した研究グループによる再現ではない。
今回確認された範囲では、2020〜2026年に、現代の市販シャフトで曲げ剛性とトルク、個人反応を直接まとめて再現した独立研究は確認できていない。したがって、過去の効果量を現在の全シャフトへそのまま広げることもできない。
研究との距離感も見ておく必要がある。2016年研究は著者2人とも大学所属で、潜在的な利益相反なしと申告している。2018年研究にはピン所属の共著者が1人いるが、同じく潜在的な利益相反なしとの申告がある。2012年研究には大学からの研究実施支援への謝辞があり、2019年研究も利益相反なしと申告している。ただし、明示的な資金提供欄が確認できない研究について「メーカー資金がなかった」とまでは言えない。
ここまでの研究は、被験者数もクラブ条件も比較した特性も違う。2012年、2016年、2018年の数値を単純に足し合わせて、一本の万能な法則にすることはできない。
出典:doi.org(2・3・4) / golfworks.com
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