カップに入らなくてもハンデ登録
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2020年、感染対策でホールライナーを高くしたり発泡材を入れたりすると、球はゴルフ規則上ホールアウトしていない場合があった。
- それでもUSGAは一時的にハンデ制度の「最も可能性の高いスコア」を使って提出できるようにし、競技規則そのものは変えなかった。
- 2020年のガイダンスで例示された感染対策はかなり具体的だった。
2020年、ゴルフ場のカップに球が入らなくても、ハンデ用のスコアは提出できる場合があった。
一見すると矛盾している。ホールアウトしていないのに、なぜスコアだけは成立するのか。
答えは、ゴルフ規則とハンデ制度を別々に扱ったからだ。全米ゴルフ協会は感染対策のため、通常のホールアウトができない状況でも、ハンデ計算では「最も可能性の高いスコア」を使える一時運用を示した。
カップを浅くし、発泡材まで入れた
2020年のガイダンスで例示された感染対策はかなり具体的だった。
ホールライナーを反転させたり、地面より1〜2インチ高くしたりする。穴の中へ発泡材や樹脂パイプを入れ、球を簡単に拾えるようにする方法もあった。
問題は、こうした方法の一部では、球が通常のゴルフ規則でいう「ホールアウト」の条件を満たさないことだった。
ここで全米ゴルフ協会は、ゴルフ規則側を「入ったこと」に変えなかった。ホールアウトしていないものは、規則上はホールアウトしていない。
代わりに動かしたのが、ハンデ用スコアの処理だった。
「入ったことにする」のではなく、残りを見積もった
当時の一時ガイダンスでは、通常どおりホールアウトできない場合、ハンデ用のスコアには「最も可能性の高いスコア」を使えるとした。
これは、球が実際にカップへ入ったと扱う仕組みではない。そこまでに打った打数へ、その地点からホールアウトするまでに最も可能性が高い打数を加えて、ハンデ提出用のスコアを作る考え方だ。
だから、同じ1球でも二つの見方が成立した。
ゴルフ規則ではホールアウトしていない。しかしハンデ制度では、非常時の一時運用によって提出用スコアを作れる。
感染対策のために競技規則そのものを書き換えず、スコアを継続して蓄積するための制度側で吸収したわけだ。
この特例は恒久ルールにはならなかった
この扱いは、新型コロナ対応として設けられた一時的なものだった。
全米ゴルフ協会は2023年1月の更新で、新型コロナに伴う一時的なゴルフ規則のガイダンスや、用具・ハンデ規則の一時修正はもはや有効ではないと明記し、通常どおりのプレーとスコア提出へ戻すよう案内した。
つまり、2020年の「特殊なカップでもハンデ提出を続ける」仕組みが、そのまま2026年の通常ルールになったわけではない。
一方、「最も可能性の高いスコア」という考え方自体は現在も残っている。
2026年にも残るが、使える理由が違う
2026年の現行ハンデ規則3.3では、正当な理由でホールを終えない場合に「最も可能性の高いスコア」を使う。
例えば、ホールの結果がすでに決まった場合、マッチプレーでコンシードされた場合、フォアボールでパートナーのスコアの方が良く自分がホールアウトしない場合、ネットダブルボギーの上限へ達した場合などだ。
残り距離の目安も示されている。グリーン上で5フィート以内なら1打、5フィートから20ヤードなら2〜3打、20ヤードを超える場合は3〜4打を加える。原則として、記録するスコアはネットダブルボギーを超えない。
2020年と2026年で共通しているのは「実際にホールアウトしていない場面のハンデ用スコアをどう作るか」という考え方だ。
違うのは適用理由である。2020年は感染対策で物理的に通常のホールアウトができない状況を救う非常時の拡張だった。2026年は、現行規則が定める通常の正当な理由に限って使う。
日本では別の指針が出ていた
日本ゴルフ協会も2020年5月、競技再開に向けた感染対策としてゴルフ規則修正の指針を公表した。
そこには、球がホールから30センチ以内に止まった場合、次のストロークでホールへ入ったものとみなす例が含まれていた。
ただし、これは各競技委員会が採用を判断する指針で、全国一律の基準ではない。今回確認できた資料では、日本が全米ゴルフ協会と同じ「盛り上げたカップ向けの最も可能性の高いスコア拡大」を全国一律で採用した一次資料も確認できない。
2026年現在、日本の公式ハンデも世界ハンデ制度で運用されているが、2020年の日米の非常時対応を同じ制度だったとは扱えない。
変えなかったからこそ、切り分けが見える
2020年の特殊なカップで起きたことは、「球が入らなくてもホールアウト扱いにした」という単純なルール変更ではない。
ゴルフ規則上のホールアウトはそのまま残し、ハンデ制度だけに非常時の処理を設けた。そして一時措置が終われば、その拡張も終了した。
カップの形を変えざるを得なかった時期に、競技規則を恒久変更せず、それでもハンデの記録を止めないために別の仕組みを使った。
「入っていないのにスコアを出せた」のは、ルールを曖昧にしたからではない。二つの制度を混ぜずに切り分けたからだった。
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