リッキー・ファウラー、肩高ドロップを直さず1打罰 救済はなぜ膝高に変わったのか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2017年の規則案では任意の高さから落とせた救済ドロップは、2018年の最終版で「膝高」に固定された。
- 球を救済区域へ残しやすくしながら偶然性も保つという狙いと、施行直後に旧来の肩高ドロップを訂正せずプレーして1打罰を受けたリッキー・ファウラーの事例から、変更の意味を追う。
- 全米ゴルフ協会(USGA)とR&Aが2017年に示した規則近代化案では、救済時の球は任意の高さからドロップできる構想だった。
2019年2月、世界選手権シリーズのメキシコ大会で、リッキー・ファウラーは救済を受ける際に球を肩の高さから落とした。前年までなら見慣れた動作だったが、新規則が始まって約2か月。このドロップは新しい手順に合っていなかった。
ファウラーはその球をそのままプレーし、1打罰を受けた。
一見すると「肩から膝へ変わっただけ」の細かな作法に見える。だが、この変更をたどると、規則当局が救済をどう設計し直そうとしたのかが見えてくる。
2017年案は、そもそも「膝高」ではなかった
全米ゴルフ協会(USGA)とR&Aが2017年に示した規則近代化案では、救済時の球は任意の高さからドロップできる構想だった。
狙いの一つは、球を救済区域の中へ残しやすくすることだった。高い位置から落とせば、球は地面に当たった後に大きく跳ねたり転がったりしやすい。低い位置から落とせれば、再ドロップを減らしやすくなる。
それでも、球を手で置く「プレース」にはしなかった。落として地面に当てることで、最終的なライには一定の偶然性を残す。救済区域に球を収めやすくしながら、都合のいい場所へ完全に置ける仕組みにはしない。その両方を成立させようとした案だった。
最終版で「任意の高さ」から「膝高」へ
2018年3月に公表された最終規則では、任意の高さではなく膝高からのドロップへ変更された。新規則は2019年1月1日に施行された。
規則当局が説明した理由は、手順の一貫性と分かりやすさだ。
任意の高さでは、選手ごと、場面ごとに落とす高さが変わり得る。そこで高さを膝に固定しながら、低い位置から落とすことで球を救済区域に残しやすくする利点は維持した。同時に、プレースではなくドロップなので、球が地面に当たった後の偶然性も残る。
2017年の意見募集では、オンライン調査や直接の意見などを通じて3万件を超える反応が集まった。ただし、公開資料ではドロップの高さだけについて賛成・反対が何件だったかまでは示されていない。膝高への変更を、特定の反対意見だけが原因だったとまでは言えない。
ファウラーは「肩から落とした瞬間」に罰を確定したわけではない
2019年のファウラーの事例で重要なのはここだ。
現行のRule 14.3bでは、誤った高さや方法でドロップしても、正しい手順でやり直してからプレーすればよい。問題になるのは、誤った方法で落とした球を訂正せずにプレーした場合だ。
ファウラーは肩高からドロップした球をそのままプレーしたため、1打罰となった。救済区域外などの誤所からプレーした場合は、さらに扱いが異なり一般の罰となる。
つまり、施行直後の混乱は「新しい動作を忘れたら即1打」という単純なものではない。旧来の肩高ドロップをした後、その誤りを直さず次のストロークへ進んだことが罰につながった。
2026年も膝高はそのまま残っている
2026年9月時点のR&AのRule 14.3bでも、救済時のドロップは膝高が基本だ。
膝高とは、立った姿勢でのその選手の膝の高さ。球は真下へ落とし、地面に当たる前に身体や用具へ触れさせない。この基本構造は2019年の施行時から維持されている。
膝高ドロップは、単に「昔は肩、今は膝」という見た目の変更ではなかった。
2017年には高さそのものを自由にする案から始まり、最終的には全員が同じ基準で扱いやすい膝高へ固定された。そのうえで、球を救済区域へ残しやすくし、再ドロップを減らしながら、落下後の偶然性は残す。
ファウラーの1打罰は、その新しい設計思想が実戦へ切り替わった直後に、長年の習慣と衝突した象徴的な一例だった。
出典:USGA(2・3・4) / PGA TOUR / The R&A
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