レクシー・トンプソンに4打罰を生んだスコアカード規則 「失格→追加2打→元の罰だけ」へ変わった理由
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 知らなかった罰打を書かなければ、かつては失格。
- 2016年は元の罰に追加2打、2018年からは元の罰だけへ変わった。
- 2017年レクシー・トンプソンの4打罰を挟み、2019年に恒久化されたスコアカード責任の変化と、2026年現在も残る「知っていた場合」の厳格な線引きを追う。
2017年のANAインスピレーションで、レクシー・トンプソンのスコアに一度に4打が加えられた。
内訳は二つある。前年の第3ラウンド17番で、マークした球を元の位置とは違う場所へ戻したことによる「誤所からのプレー」の2打。そして、その2打を含まないスコアカードを提出していたことによる、当時の追加2打だった。
この4打は、いまの規則では同じ形にはならない。しかも、ほんの数年前までなら、さらに重い「失格」だった可能性がある。
知らなかった罰打をスコアに入れ忘れたときの扱いは、2016年から2019年にかけて、失格、追加2打、元の罰だけ――と3段階で変わった。
2016年以前は、知らなくても「少ないスコア」で失格
2016年以前の旧規則では、実際より少ないホールスコアを提出すると原則として失格だった。
重要なのは、プレーヤーが罰打の存在を知っていたかどうかではない。本人が規則違反に気づかず、そのために本来加えるべき罰打をスコアへ入れなかった場合でも、提出された数字が実際より少なければ失格になった。
スコアカードの数字そのものに、強い責任を負わせる仕組みだった。
2016年、「失格」は免れたが追加2打が残った
この扱いは2016年に緩和された。
提出前に本人が知らなかった罰打が後から判明した場合、その罰打を書かなかったことだけを理由に失格とはしない例外が導入された。
ただし、無罰になったわけではない。
まず、実際の規則違反に対する罰を加える。そのうえで、スコアカードに正しい数字を書かなかったことへの追加2打も加える。規則当局は、この追加2打を残すことで、正確なスコアカードを提出する重要性を維持すると説明していた。
つまり2016年の変更は、「知らなくても失格」という厳しさを和らげながら、カードを正しく出す責任は別の2打罰として残す折衷案だった。
レクシーの4打罰は、その折衷案がそのまま表れた
2017年のレクシー・トンプソンのケースは、まさにこの時期の規則を象徴している。
誤所からプレーしたことへの2打に加え、その罰打が入っていないスコアカードを提出したことへの2打。合計4打が後から加えられた。
2016年以前の規則なら、知らなかった罰打を含まない少ないスコアを提出した時点で失格となる事案だった。
一方、2016年の例外があったため、競技には残れた。ただし、元の違反とカード誤記の両方に罰が科された。
2018年、追加2打もなくなった
次の変更は早かった。
2018年1月1日から使えるローカルルールでは、提出前に本人が知らなかった罰打が後から判明しても、スコアカード誤記への追加2打を科さない扱いになった。
加えるのは、元の規則違反に対する罰だけだ。
米男子ツアー、米女子ツアー、欧州男子ツアーなど主要団体も2018年からこの扱いを採用すると発表した。
規則当局が示した考え方は明確だった。規則違反そのものへの罰は必要だが、本人が知らなかった罰打について、さらにスコアカードの追加罰まで科す必要はない、という整理である。
この変更は映像レビューや視聴者からの通報を見直す発表と同じ時期に行われた。レクシーの事案もその流れを考えるうえで無視できない出来事ではある。ただ、公式説明は追加2打撤廃の理由をそれだけに結びつけていない。「レクシー事件があったから規則が変わった」と一本の因果にするのは行き過ぎになる。
2019年、考え方そのものが正式な規則になった
2018年はローカルルールとして先行したが、2019年の規則改正でこの考え方は正式な規則へ組み込まれた。
そして2026年現在の規則3.3b(3)でも、基本線は変わっていない。
実際より少ないホールスコアを提出すれば、原則は失格だ。
例外になるのは、提出前に本人が知らなかった罰打だけがスコアから抜けていた場合。そのときは失格にせず、競技終了前に判明すれば委員会が本来の罰打を加える。
ここで「知らなかった」の範囲は広くない。本人が罰を知っていた場合はもちろん、規則違反の可能性を告げられていたり、自分でも罰になるか不確かだったのに委員会へ確認しなかった場合も、この例外には入らない。
変わったのは「責任をなくすこと」ではなく、責任の置き場所
3段階を並べると、規則の変化が見えやすい。
2016年以前は、知らなくても少ないスコアなら失格。2016年は、失格を免れる代わりに元の罰へ追加2打。2018年からは、知らなかったなら元の罰だけ。そして2019年にその考え方が恒久化された。
スコアカード責任が消えたわけではない。2026年現在も、知っていた罰を入れずに少ないスコアを提出すれば原則失格という厳しい線は残る。
変わったのは、プレーヤーが提出時点で知り得なかった罰まで、カード上の責任として二重に重く処理するかどうかだ。
「知らなかった罰」と「知っていた罰」を分ける現在の規則は、スコアカードを軽く扱う方向への変更ではない。正確な提出責任を残しながら、本人が把握できなかった規則違反には、その違反そのものの罰だけを反映する形へ整理されたのである。
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