レクシーの4罰打後、視聴者通報の「専用受付」は消えた 映像は競技委員会が監視する仕組みへ
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2017年ANAインスピレーションで、レクシー・トンプソンはテレビ視聴者からのメールをきっかけに前日の違反が判明し、計4罰打となった。
- その後、主要団体は視聴者の電話・メール・テキストを処理する専用工程をやめ、競技委員会側が放送映像を能動的に監視する方式へ移行した。
- ただし映像証拠自体は残り、2026年も合理的判断・肉眼基準は現行規則に残っている。
2017年のANAインスピレーション最終日。レクシー・トンプソンに、前日のプレーをめぐる4罰打が加わった。
内訳は、誤所からのプレーで2打。さらに、その罰打を知らないまま提出したスコアカードに対して当時の規則で2打。最終ラウンド中、テレビ視聴者からのメールがLPGAへ届き、前日の違反が判明したことで起きた裁定だった。
この出来事は、その後の映像判定を語る象徴的な場面になった。ただし、公式資料は「レクシーの一件だけが原因で制度が変わった」とは説明していない。
実際に変わったのは、映像を判定から消すことではなく、誰が映像を判定工程へ持ち込むのかという仕組みだった。
まず変わったのは「映像でしか見えない違反」の扱い
2017年4月25日、全米ゴルフ協会とR&Aは裁定34-3/10を導入した。
ここで示されたのは二つの考え方だ。一つは、選手がその状況で合理的に行った判断を尊重する基準。もう一つは、肉眼では合理的に確認できないほど細かな事実を、映像の拡大などだけで違反としないための基準だった。
つまり、テレビ映像が人間の目を超えて細部まで映せるようになったからといって、映像に映ったものを無条件で後から罰する考え方からは距離を置いた。
ただ、この4月時点では視聴者からの通報をどう扱うかという問題全体は決着していない。より広い映像レビューの仕組みは、別の作業部会で検討が続いた。
7団体で決めたのは「視聴者受付をなくし、委員会が見る」方式
その作業部会には、全米ゴルフ協会、R&A、米男子ツアー、LPGA、欧州ツアー、女子欧州ツアー、全米プロゴルフ協会が参加した。
そして2018年からの新しい運用では、競技委員会が視聴者から届く電話、メール、テキストを受け付け、監視し、審査し、追跡するための専用工程を設けない方針になった。
ここだけを見ると、「テレビを見て気づいた違反は、もう判定に使わない」とも読める。だが、実際は逆だ。
新しい仕組みでは、競技委員会側の担当者が放送映像を能動的に、必要に応じて監視する。映像そのものを捨てたのではなく、判定の入口を不特定多数の視聴者から競技委員会側へ移した。
視聴者通報の専用工程をなくしたことと、映像証拠を使わなくなったことは同じではない。信頼できる情報が後から競技委員会へ届けば、考慮される余地も残された。
レクシー事件の後に消えたのは「カメラ」ではない
ここが制度変更の核心になる。
2017年のレクシー裁定では、前日の映像が最終日の競技へ持ち込まれた。翌年からの仕組みは、こうした映像確認そのものを禁止したわけではない。
むしろ、放送映像を見張る役割を競技委員会側へ持たせ、視聴者の電話やメールを恒常的な判定入力として処理する仕組みを外した。
そのため、「視聴者通報がなくなった=映像判定がなくなった」という理解は正確ではない。
変わったのは、映像の有無ではなく、判定を動かす主体だった。
2019年の規則近代化をまたいでも、考え方は残った
2018年に導入された考え方は、その後の規則体系にもつながっている。
2026年9月に確認した現行規則でも、選手が合理的に判断したかを見る考え方と、肉眼で合理的に確認できない細部を映像だけで問題にしない基準は維持されている。
R&Aが2023年10月に更新した映像レビューの指針でも、映像担当の競技委員が公開されている放送映像を能動的に監視し、視聴者からの外部介入を必要としない仕組みが推奨されている。
現在の公開規則と指針から見える構造は一貫している。テレビ映像は使う。ただし、視聴者を判定工程の常設メンバーにはしない。
なお、2017年にレクシーへ加わった4罰打のうち、未知の罰打をスコアカードへ反映していなかった場合の処理は、現在は別の規則体系へ移っている。今回の主題はそこではなく、映像と視聴者通報をどう扱うかという判定工程の変化だ。
「視聴者の目」から「競技委員会の目」へ
レクシー・トンプソンの4罰打は、映像判定の問題を強く印象づけた。ただ、制度の変化を一人の選手の事件だけで説明すると、本質を見失う。
2017年には映像を使う際の合理的判断・肉眼基準が整えられ、複数の主要団体が共同で映像レビューを検討した。2018年からは視聴者の電話・メール・テキストを処理する専用工程をなくし、競技委員会側が放送映像を監視する方式へ移った。そして、その基本的な考え方は2026年の現行規則と映像レビュー指針にも残っている。
消えたのは映像の力ではない。
視聴者からの電話・メール・テキストを専用に処理する仕組みが消え、その役割を競技委員会側へ戻した。レクシーの4罰打後に起きた大きな変化は、そこだった。
出典:LPGA / USGA(2・3) / The R&A(2・3・4)
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