サイモン・ダイソンはスパイク跡を押さえて2罰打、加えず署名して失格 6年後に修復が認められた理由
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2013年、サイモン・ダイソンはパット線上のスパイク跡を押さえた行為で2罰打の対象となり、その罰を加えず署名したため失格となった。
- ところが2019年からは、靴跡を含むグリーン上の多くの損傷を合理的に直せるようになった。
- 処分事件と改正を直接結びつけず、6年間で変わった規則の考え方と2026年現在の境界を追う。
2013年10月25日、BMWマスターズ第2ラウンド。サイモン・ダイソンは8番グリーンで、パット線上にあったスパイク跡を押さえた。
当時は、これが単なる「グリーンの手入れ」では済まなかった。旧規則16-1aはパット線に触れることを原則として禁じ、修復についても旧規則16-1cで認められていたのは旧ホール跡やボールマークなどに限られていた。靴によるスパイク跡は、その範囲に入っていなかった。
ダイソンの行為は旧規則16-1a違反として2罰打の対象になった。さらに、その2打をスコアへ加えないまま署名したため、旧規則6-6dにより失格となった。つまり、スパイク跡を押さえた行為だけで即失格になったのではなく、2罰打を反映しないスコアカードを提出したことまでが失格につながった。
失格の後には懲戒処分も待っていた
同年12月、欧州ツアーの懲戒パネルは、ダイソンが規則を知りながら意図的にスパイク跡を押さえ、パット線を改善しようとしたと認定した。
処分は2か月の出場停止。ただし18か月の執行猶予付きで、3万ポンドの罰金と7500ポンドの費用負担も命じられた。パネルは同時に、この行為を一時的な判断の逸脱と位置づけ、計画的な不正ではないとも認定している。
ここまでを見ると、スパイク跡を直すことは当時かなり重い意味を持っていた。それが6年後、規則上の扱いを大きく変える。
2019年、スパイク跡は「直してよい損傷」になった
2019年に施行された規則13.1c(2)では、靴による損傷を含むグリーン上のほぼすべての損傷を、合理的な方法で修復できるようになった。
なぜ考え方が変わったのか。
USGAとR&Aが示した理由は、グリーンという場所の特殊性にある。グリーンはボールを転がすために特別に整備された面だ。それなのに、ボールマークは直してよいが靴跡は直せない、と損傷の原因によって線を引く概念的な理由は乏しい。また現場では、それがボールマークなのか靴跡なのかを判定する問題も生まれる。
そこで新しい規則は、「何が跡を付けたか」よりも、人や物によって生じた損傷を元の状態へ合理的に戻すことを認める方向へ整理された。
旧ルールがパット線へ手を加えないことを強く優先していたのに対し、現行ルールは、特別に整備されたグリーンなら人工的な損傷を元へ戻してからプレーできる、という考え方へ変わったわけだ。
ダイソン事件が改正を生んだ、とは言えない
ここは切り分けが必要だ。
2013年のダイソン事件と2019年改正を並べると、まるでこの事件がきっかけで規則が変わったようにも見える。しかし、USGAとR&Aの公式な改正説明は、グリーンが特別に整備された面であることや、旧規則の判定・運用上の問題を理由として挙げており、ダイソン事件を改正原因とはしていない。
ダイソンの一件は、旧ルールの考え方がどれほど厳格だったかを示す具体例。その6年後に同種の損傷が修復可能になった事実を並べることで、規則の思想がどう変わったかが見える、という関係になる。
2026年現在もスパイク跡は直せる。ただし何でも直せるわけではない
2026年9月20日時点の現行規則13でも、この考え方は続いている。自分がラインを読む際につけたスパイク跡であっても、元の状態へ戻すための合理的な修復なら認められる。手や足、通常のボールマーク修復器具、ティー、クラブなどを使うこともできる。
修復対象にならないものもある。エアレーション穴やバーチカルモーイングなど通常の管理作業による跡、雨や灌水など自然の力による状態、雑草や裸地、病害、不均一な生育といった自然な表面の不整、ホールの自然な摩耗は、規則上の「損傷」には含まれない。
さらに、元の状態へ戻す範囲を超えてプレー線を改善すれば一般の罰の対象になり得る。修復のために不合理にプレーを遅らせることも認められない。
2013年と2026年の違いは、「昔は厳しく、今は緩い」だけではない。旧ルールは直せる損傷を限定し、パット線を変えないことを優先した。現在のルールは、人や物が付けた損傷なら合理的に元へ戻し、整備されたグリーン本来の状態でプレーすることを認めている。
ダイソンが2罰打を受け、最終的に失格と懲戒処分まで進んだスパイク跡。その同じ種類の損傷を、いまのゴルファーは規則に従って直せる。6年間で変わったのは修復できる跡の一覧だけではなく、「グリーンをどんな状態でプレーさせるのが公平か」という規則の考え方そのものだった。
出典:DP World Tour(2) / USGA(2・3・4) / The R&A
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