ゴルフボールの 「乱流遷移」って 何? 乱流に なると 空気抵抗は 増える?
空力・乱流遷移
まず答え
乱流遷移は、ボール表面近くの境界層が、整った層流から不規則な乱流へ変わることです。乱流は表面摩擦を増やす面がありますが、ゴルフボールのような球では剥離を後ろへずらして後流を小さくできるため、特定の速度域では全体の抗力がむしろ大きく下がることがあります。
詳しい解説
ゴルフボールの表面近くには「境界層」という薄い空気の層があります。流れが比較的整っている状態を層流、速度の揺らぎや渦を多く含む状態を乱流と呼び、この境界層が層流から乱流へ変わることが「乱流遷移」です。
「乱流になると抵抗が増える」とだけ覚えると、ゴルフボールでは誤解しやすくなります。乱流の境界層は層流より表面摩擦が大きくなりやすい一方、流れがボール表面に沿って進みやすくなり、剥離位置を後ろへずらせる場合があります。球では後方の大きな後流による圧力抗力が支配的なため、剥離が遅れることで、表面摩擦の増加以上に圧力抗力が減り、合計の抗力が小さくなる速度域があります。
NASA Glennは、粗い表面の球では滑らかな球より低いレイノルズ数で乱流遷移が起こり、ゴルフボールの大きさと速度は、粗い球の方が滑らかな球より抗力が小さくなる領域に入ると説明しています。ディンプルはこの性質を利用し、乱流遷移と剥離位置を変える役割を持ちます。
実際の市販ゴルフボールを使った研究でも、低いレイノルズ数側から高い側へ移る途中で、非回転球の平均抗力係数が約0.5から約0.2へ急低下するドラッグクライシスが観測されています。
ただし、乱流なら常に抗力が小さいわけではありません。さらにレイノルズ数が上がれば抗力係数が再び変化し、回転、ディンプル形状、表面状態も影響します。したがって「乱流=抵抗増」「乱流=抵抗減」のどちらか一方ではなく、どの速度域で、剥離と後流がどう変わるかまで含めて考える必要があります。