クラブの値段は原価だけで決まらない メーカーが探す「価格の壁」とは
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- ゴルフ用品の値付けでは、原価や競合価格だけでなく「いくらなら買うか」を消費者調査で探る手法が使われている。
- Golf DatatechとAtenga Insightsは、少しの値上げで需要見込みが急変する境目を「価格の壁」と呼ぶ。
- 49ドルと50ドルの例は説明用で実在製品の販売実績ではないが、道具の価格がどう設計されるかをのぞける材料だ。
新しいドライバーやボールの価格を見て、「なぜこの金額なんだろう」と思うことがある。
材料費、開発費、流通コスト、競合製品の価格。もちろんそれらは値付けの材料になる。だがゴルフ用品会社が見ているのは、コストだけではない。「この値段なら、何人が買うのか」も調べている。
その考え方を分かりやすく見せる言葉が「価格の壁」だ。
1ドルの差が、ただの1ドルとは限らない
ゴルフ業界の市場調査会社Golf Datatechは、スウェーデンの価格調査会社Atenga Insightsと組み、ゴルフ用品向けの価格・需要分析を提供している。
両社が2022年に公表した説明では、「価格の壁」は、価格を少し動かしただけで潜在的な販売数量が大きく変わり得る境目を指す。
説明用の例も面白い。
45ドルから49ドルまでは販売数量の見込みがほぼ同じなのに、50ドルを超えたところで10〜15%落ちる――そんなケースを例として示している。
ただし、ここは重要だ。この49ドル、50ドル、10〜15%という数字は、特定のボールやクラブで実際に起きた販売結果ではない。仕組みを説明するための仮想例である。
それでも、この例が伝えていることは明快だ。
買い手にとって価格は、必ずしも滑らかに評価されるわけではない。1ドルずつ高くなるたびに、購入意欲が同じ割合で少しずつ下がるとは限らない。ある数字をまたいだ瞬間、選択が変わる可能性がある。
「安ければ売れる」だけを調べているわけではない
Golf Datatechの現在の案内では、価格・需要分析は「利益を最大にする価格」と「売上高を最大にする価格」を探し、同時に価格の壁を見つけるものだと説明している。
安くしすぎれば、売れる数量が増えても利益を取り逃すことがある。逆に値上げしすぎれば、単価は上がっても買う人が急に減るかもしれない。
つまり、メーカー側が知りたいのは「いくらまで上げられるか」だけではない。価格と販売数量の組み合わせの中で、どこに危険な境目があるのか、ということになる。
対象もクラブだけではない。同社はボール、シューズ、グローブ、ウェア、バッグ、距離計、ティータイム、フィッティングなど、ゴルフに関わる商品・サービスを価格調査の対象として挙げている。
5万人超のゴルファーから「買う価格」を探す
現在のGolf Datatechの案内では、5万人超の活動的なゴルファーのデータベースを使い、調査期間を4〜5週間程度に短縮できるとしている。
Atenga Insightsの説明によると、同社の手法は消費者に購入場面を想定した質問を行い、「いくらなら買うか」という支払意思を測る市場調査が中心だ。
ここで見ているのは、過去の店頭売上だけではない。発売前の商品や新しいサービスでも、想定する価格と需要の関係を調べようとしている。
だから、新製品の値段は「原価に利益を何%乗せるか」という一本の計算式だけで決まるとは限らない。商品そのものの評価、ブランド、売り方、買い手の心理まで含めて、価格も一つの設計対象になっている。
ただし「壁」が未来を正確に当てるとは限らない
この話には注意点もある。
今回確認できた資料は、Golf DatatechとAtenga Insights自身がサービスを説明したものが中心だ。個々の案件の標本設計や予測モデルの詳細、予測した販売数量と実際の販売数量がどれほど一致したかという第三者検証は公開資料から確認できない。
したがって、「価格の壁を調べれば売上を正確に予測できる」とまでは言えない。
それでも面白いのは、ゴルフ用品の価格が、性能や原価だけではなく「その数字を見たゴルファーが買うかどうか」まで含めて研究されていることだ。
次にクラブやボールの値札を見たとき、数千円、数万円という数字の向こう側には、もう一つの勝負がある。
メーカーは飛距離やスピン量だけでなく、「どの価格なら手が伸び、どこを超えると手が止まるのか」も探している。
出典:Golf Datatech(2) / atenga.com / firstcallgolf.com
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