ゴルフ場の芝地は炭素をためる? 首都圏11コースの土を調べた研究
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 首都圏の開設30年以上のゴルフ場11コースを調べた2023年の研究では、芝地の土壌に炭素が蓄積し、0〜20cmの推計速度は0.81〜1.19 MgC/ha/年だった。
- 一方、これはゴルフ場全体の温室効果ガス収支を示す数字ではない。
- 土の炭素という一つの軸から、コースの環境価値をどう読むかを整理する。
ゴルフ場の芝を見て、その下の土にどれだけ炭素がたまっているかを考える機会はあまりない。
2023年に日本緑化工学会誌で発行された技術報告は、首都圏のゴルフ場11コースを対象に、芝地の土壌炭素蓄積量を調べている。対象はすべて開設から30年以上が経過したコースだった。
フェアウェイとラフで、平均値に有意差はなかった
研究では、地表から30cmまでの土壌炭素蓄積量を調べ、フェアウェイ群とラフ群を比較した。その結果、両者の平均値に有意な差は確認されなかった。
これは「フェアウェイとラフは同じ土になる」という意味ではない。少なくとも今回の11コースでは、フェアウェイかラフかという区分だけでは、0〜30cmの土壌炭素蓄積量の平均差を説明できなかったという結果だ。
0〜20cmでは、年間0.81〜1.19 MgC/haと推計
研究者は、ゴルフ場が開設されてからの年数と土壌炭素蓄積量の関係も調べた。経過年数が長いほど蓄積量が大きくなる傾向がある一方、ばらつきも大きくなり、その要因の一つとして造成方法の時代差が示唆された。
そこで造成方法の変化を考慮し、既往研究に準拠して0〜20cmの土壌炭素蓄積速度を推計すると、0.81〜1.19 MgC/ha/年だった。著者は、この結果からゴルフ場の芝地にはCO2の吸収源として高いポテンシャルがあると考察している。
ただし、この数字を「ゴルフ場は環境に良い」という総合評価へそのまま置き換えることはできない。この研究が調べたのは土壌に蓄積された炭素であり、ゴルフ場全体の温室効果ガス収支を算定した研究ではないからだ。
堆肥を使った場所では差が出た。ただし因果は決められない
研究では、開設からの経過年数を考慮したうえで、堆肥施用の有無と0〜30cmの土壌炭素蓄積量も比較した。その結果、両者には有意差があり、著者は堆肥施用が土壌炭素蓄積に効果があることを示唆している。
ここも読み方が重要だ。今回の分析は、無作為に堆肥を使うコースと使わないコースを分けた介入試験ではない。したがって「堆肥を使えば必ずこの量だけ炭素が増える」といった因果や効果量までは決められない。
ゴルフ場の環境価値は、一つの数字では決まらない
この研究の面白さは、ゴルフ場を単なるプレー施設ではなく、長期間維持される芝地と土壌の組み合わせとして見ている点にある。
一方で、対象は首都圏の開設30年以上の11コースに限られる。新設コースや他地域で同じ結果になるかは、この研究だけでは分からない。
土壌に炭素がたまることは、ゴルフ場を見る一つの重要な軸になり得る。ただ、それだけで環境負荷全体を判定するのも違う。
ゴルフ場の環境価値を考えるなら、「土にどれだけ炭素を残しているか」と「施設全体ではどんな負荷があるか」を分けて見る。その方が、芝地を過大評価も過小評価もせずに考えやすい。
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