「ゴルファーは5年長生き」は本当か 30万人研究を2026年まで追って分かったこと
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 「ゴルファーは約5年長生きする」の出所は、2009年のスウェーデン約30万人研究。
- だが5年は個人の寿命延長を直接測った数字ではない。
- その後の系統レビュー、歩行とカートの比較、日本の高齢者研究まで追うと、ゴルフの健康効果と因果として言える範囲が見えてくる。
「ゴルファーは5年長生きする」。ゴルフの健康効果を語るとき、これほど強い数字はなかなかない。
出所は2009年に公表されたスウェーデンの研究だ。Swedish Golf Federationの会員30万818人と国の死亡登録を使い、ゴルファーの死亡率を一般人口と比べた。その結果、標準化死亡比は0.60。研究上は、ゴルファーの死亡率が一般人口より約40%低いという差が観察された。
そして著者は、この差を平均余命の文脈に置くと「およそ5年」に相当すると説明した。
ただし、ここで最初に押さえたいのは、「ゴルフを始めた人の寿命が5年延びた」と測定した研究ではないということだ。
「5年」は何を意味していたのか
2009年研究は無作為に人を「ゴルフをする群」と「しない群」へ分けた試験ではない。実際にゴルフをしていた人たちの死亡率を、一般人口と比較した観察研究だ。
比較では年齢、性別、社会経済状態で層別化されていた。それでも、もともとの健康状態、喫煙、食事、体重、医療へのアクセスなど、ゴルフをする人としない人の差をすべて消せるわけではない。公開要約からは、そうした個別の生活習慣までどこまで調整されたかは確定できない。
だから、「死亡率が40%低かった」という観察結果は事実でも、その40%すべてをゴルフの効果とは言えない。研究著者自身も、差のすべてをゴルフの身体活動で説明できるとは結論していない。
低ハンデ群の標準化死亡比は0.53、高ハンデ群は0.68だった。腕前が高い人ほど低い数字が出たのは興味深いが、これも「上達すれば長生きする」という意味ではない。プレー量、生活環境、健康状態など別の違いが重なっている可能性がある。
つまり有名な「約5年」は、個々のゴルファーに約束された寿命の上乗せではなく、観察された死亡率差を平均余命に置き換えて説明した数字だった。
その後の研究で、ゴルフの健康効果はどこまで強くなったか
では、2009年から17年たった2026年までに、「ゴルフは健康にいい」という部分はどこまで補強されたのか。
2017年のスコーピングレビューは301研究を整理し、ゴルフは中等度強度の身体活動を提供し、健康との正の関連には生物学的な妥当性があるとまとめた。一方で、レビューだけで因果関係を証明することはできないとも明記している。
2022年のゴルフに特化した系統的レビューは23研究を採用した。結果は一様ではないものの、バランス、血圧、HDLなどで改善を示した研究があり、筋骨格系や心血管の健康を改善する手段になり得ると結論した。ただ、代謝健康について長期で追った証拠は限定的だった。
さらに2023年には、健康な高齢ゴルファー25人、平均68歳を対象に、18ホールのゴルフ、6kmのノルディックウォーキング、6kmの通常歩行を比べる無作為化交差試験が行われた。3種類すべてで運動後の収縮期血圧は有意に低下し、ゴルフでは通常歩行と比べた血糖、一部の脂質指標で有利な差が報告された。
ここで分かったのは、ゴルフという活動が実際に身体へ負荷をかけ、短時間の心血管・代謝指標に変化を起こし得ることだ。寿命を5年延ばす証明ではないが、「健康な人がゴルフ場に集まっているだけ」という説明だけでは片づけにくい身体活動としての効果は積み上がっている。
歩くか、カートに乗るかで中身は変わる
ゴルフを一括りにできない理由の一つが、プレーの仕方だ。
2021年、膝の変形性関節症がある50歳超のゴルファー10人を対象にした交差試験では、歩いて18ホールを回ったとき、中高強度の身体活動に当たる時間は72.2%。カート使用時は32.6%だった。歩行の方が身体活動量は大きかった一方、膝痛や一部の炎症指標も増えた。
別の競技ゴルファー16人の比較では、歩行ラウンドが平均1万7007歩・880kcal、カートでは6274歩・456kcalだった。歩く方が運動量は明らかに大きい。それでもクラブヘッド速度やボール速度には有意差がなかった。
だから「健康のためなら必ず歩け」とはならない。歩ける人には大きな運動量を得る機会になる一方、痛みや症状のためにゴルフそのものをやめてしまうなら、カートを使って続ける価値もある。2017年のレビューも健康効果を最大化するなら歩行を勧めているが、2021年研究は症状が参加の妨げになる場合のカート利用も有用としている。
日本人でも同じなのか
スウェーデンの30万人研究の「約5年」を、日本のゴルファーへそのまま移すことはできない。人口構成、医療制度、生活習慣、ゴルフのプレー環境が違ううえ、日本で同型の「ゴルフと全死亡・平均余命」を再現した研究は今回確認できていない。
ただ、日本の高齢者を対象にした関連研究は出ている。
JAGESの高齢者4万9705人を6年間追った研究では、男性でゴルフを趣味にしていることが認知症発症リスクの低さと関連し、調整後ハザード比は0.61だった。22項目を調整した縦断研究だが、これも趣味の観察研究なので「ゴルフが認知症を防いだ」とまでは言えない。
出典:onlinelibrary.wiley.com / bmjopensem.bmj.com / pubmed.ncbi.nlm.nih.gov(2・3・4・5・6) / pmc.ncbi.nlm.nih.gov
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「ゴルファーは5年長生き」の正体 30万人研究を読み直す
3行まとめ
- 「ゴルファーは約5年長生き」は、2009年のスウェーデン30万人研究から広まった。
- ただし5年は実測した延命年数ではなく、死亡率40%低下を寿命差へ換算した数字。
- 観察研究なので因果は確定しない。