95%減の農薬負荷が再び増えた理由
GOLF DNA編集部🇩🇰

3行まとめ
- デンマークのゴルフ場では、2013年の拘束力ある負荷上限と年次報告の導入後、2023年に農薬負荷が2013年比95%減った。
- ところが2024年は負荷が前年比142%増。
- ダラースポット対応、負荷指標の仕組み、2026年の現行規制まで追う。
2005年、デンマークのゴルフ場は農薬の有効成分使用量を減らす自主目標を置いた。2008年の目標は1ヘクタール当たり0.1キログラムだったが、実績は0.23キログラム。自主協定だけでは目標に届かなかった。
その後、制度は大きく変わる。2013年から農薬の「負荷」に拘束力のある上限を設け、ゴルフ場には使用実績とコース面積の年次報告を求める仕組みが始まった。
10年後の2023年、公式報告では農薬負荷が2013年比95%減まで下がった。ところが翌2024年、製品使用量は前年比65%増、負荷は142%増へ反発した。
95%減は、なぜそこで終わらなかったのか。
自主目標の未達から「上限と報告」へ
2005年の自主協定が目指した2008年の水準は、有効成分0.1キログラム/ヘクタールだった。実績は0.23キログラム/ヘクタールで、目標の2倍を超えた。
2013年に始まった仕組みは、単に「使う量を減らしてください」と求めるものではない。農薬負荷に上限を設け、各コースに毎年の使用実績と面積を報告させる制度へ移った。
2023年の行政報告では172コースが集計対象となり、総負荷は226。2013年より95%低く、2022年からも39%低かった。
ただし、この95%減を「規制だけの成果」と読むことはできない。行政資料は、負荷上限に加えて、利用できる製品の変化やゴルフ業界の総合的病害虫管理の取り組みなど、複数の要因が重なった結果としている。規制、薬剤の置き換え、管理方法の寄与率を分けた数字は確認できない。
2024年、使用量65%増・負荷142%増へ
大きく下がった翌年、数字は反対へ動いた。
2024年の訂正版報告では、農薬製品の使用量は2023年比65%増、負荷は142%増。総負荷は544まで増えた。
背景の一つとして公式資料で確認できるのが、芝の病害であるダラースポットへの対応だ。2024年からグリーンで殺菌剤を使えるよう、殺菌剤の負荷上限は2.9へ引き上げられた。2024年に農薬を使用した151コースのうち、およそ51%で殺菌剤Signumが使われた。
グリーンはコース総面積の約3〜4%にすぎない。それでも品質維持が重要な区域で病害対策が必要になれば、殺菌剤の使用と負荷に影響する。
だから2024年の反発は、「節減策が全部元に戻った」という話ではない。新しい病害への対応を可能にするため、制度側が許容する負荷を調整した年でもあった。
「使った量」と「負荷」は同じ数字ではない
ここで重要なのが、使用量と負荷を分けて読むことだ。
2024年に使われた農薬製品の約48%は微生物農薬だったが、公式の負荷指標ではこれらの負荷スコアは0として扱われる。つまり、製品量が増えたからといって、その割合だけ負荷が増える仕組みではない。
一方で2024年は負荷そのものも142%増えている。量の増加だけでは説明できず、ダラースポット対策を含む製剤構成の変化を見る必要がある。
それでも長期で見れば、2013年の水準へ戻ったわけではない。2013年の殺虫剤・除草剤・殺菌剤の3分類の負荷は合計5114.28。2024年は総負荷544から、2013年には比較対象に入っていなかった成長調整剤の負荷9を除くと535になる。同じ3分類で比べれば、2013年より約89.54%低い。
2023年の「95%減」と2024年の「約89.5%減」は、時点と集計分類が異なる。2024年に大きく反発しても、11年前より負荷が約9割低いという二つの事実は両立する。
2026年も上限は固定したままではない
2026年1月施行の現行規則では、負荷上限は除草剤0.088、殺菌剤2.9、殺虫剤0、成長調整剤0。ゴルフ場は前年の面積と農薬使用を、毎年3月1日までにGreenDataでデジタル報告する。
行政は負荷上限を少なくとも3年ごとに再評価する仕組みも持つ。2026年には一部殺菌剤の分類変更で実質的な使用余地が狭くなったが、殺菌剤上限2.9自体はさらに引き上げられなかった。
2026年9月11日時点で行政が公開しているゴルフ場別の最新年次実績は2024年で、2025年分はまだ公開されていない。したがって、2024年の反発が一時的だったのか、その後も続いたのかはまだ判断できない。
デンマークの20年を通して見えるのは、単純な「厳しく規制したら95%減った」という一直線の話ではない。
自主目標では届かなかった。そこで拘束力ある負荷上限と年次報告へ移り、低負荷製品や管理方法の変化も重なって負荷は大幅に下がった。ところが新しい病害が広がると、芝を守るため殺菌剤の上限を調整し、2024年には負荷が再び増えた。
出典:mst.dk(2・3・4・5・6・7) / retsinformation.dk
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