山火事でゴルフ場は焼けにくいのか
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 1986〜2020年のカリフォルニア火災データでは、ゴルフ場内の予測焼損度が対応する周辺植生より49.91%低かった。
- だが、火災を止めた因果効果まで証明した研究ではない。
- 35年の観察研究から、緑の防火帯としての可能性と強風・飛び火、消火資源、水利用などの限界を整理する。
ゴルフ場は、山火事を止める防火帯になれるのか。
カリフォルニアの35年分の火災データからは、少なくとも「周囲の植生より焼け方が弱かった」という傾向が見えている。2022年の査読研究では、条件をそろえて比較したゴルフ場内の植生は、対照となる植生より予測焼損度が49.91%低かった。
ただし、これは「ゴルフ場が火災を半分止める」という意味ではない。研究が測ったのは、衛星データから推定した焼損の程度であり、炎の強さそのものでも、ゴルフ場だけの因果効果でもない。
現時点で最も正確な答えは、ゴルフ場は山火事時の「緑の防火帯」として働く可能性がある。ただ、その効果をどこでも同じように期待できる段階ではない、というものだ。
35年で961コース、そのうち89コースが火災と重なった
研究は1986〜2020年のカリフォルニアを対象に、961のゴルフ場と州の火災境界データを重ねた。そのうち89コースで火災との重なりが確認された。
焼損度を詳しく比べる主分析では、22の火災と29コースを使用した。ゴルフ場内で実際に焼けた植生を100メートル格子で取り出し、同じ火災の中にあるゴルフ場外の植生と比較している。
単純に「ゴルフ場と山林」を比べたわけではない。土地被覆と火災名をそろえ、傾斜、斜面の向き、植生の水分、降雨、緯度、周辺所得などの条件が近い地点を組み合わせる傾向スコアマッチングという方法を使った。
そのうえで用いた指標がdNBRだ。衛星が捉えた火災前後の反射率の変化から、どれだけ強く焼損したかを見る指標である。炎の温度や火力を直接測った数字ではない。
この比較で、ゴルフ場内の予測焼損度は対応する植生より49.91%低いと推定された。
つまり、この「約半分」は火災の発生確率が半分になったという数字ではない。条件をそろえた焼損地点同士を比べたとき、火災後の焼け方を示す指標が低かった、という結果だ。
火が近づいても、焼けた面積が小さいケースが多かった
研究は焼損度だけでなく、火災がゴルフ場へどこまで広がったかも122ケースで調べている。
最も多かったのは、火災が近接していてもゴルフ場面積の10%未満しか燃えていないケースだった。焼損割合の分布は空港とは統計的に区別できず、同程度の大きさの公園とは異なっていた。
ここから「開けた管理地は火の広がり方が周囲と違う可能性がある」と読むことはできる。
しかし、「ゴルフ場が火災の進行を止めた」とまでは言えない。122ケースの分析は、火災がゴルフ場に接したときの焼損割合を示したもので、ゴルフ場がなければ火がどこまで進んだかという反実仮想を直接観測したものではないからだ。
灌水された芝だけの効果とは分けられない
では、なぜ焼けにくかったのか。
直感的には、灌水、短く管理された芝、燃料の少ない空間が効きそうに見える。だが、この研究だけで寄与率を分けることはできない。
ゴルフ場には道路や開けた空間があり、消防が入りやすい可能性もある。研究自身も、ゴルフ場周辺へ追加の消火資源が投入された影響を一部含んでいる可能性を挙げている。
つまり、49.91%という数字を「散水の効果」「芝を短く刈った効果」と言い換えることはできない。灌水、土地管理、アクセス、消火対応などが混ざった状態で観測された差である。
強風と飛び火には、緑の帯だけでは足りない
もう一つ大きな限界がある。強風と飛び火だ。
破壊的な火災では、火の粉が防火帯を越えて新しい地点へ着火する。研究も、強い風が支配する状況ではゴルフ場の幅だけでは十分でない可能性を挙げている。
さらに、緑を維持するには水、薬剤、エネルギー、労働が必要で、生息地への影響もある。防火に役立つ可能性があるからといって、新たにゴルフ場を造ればよいという話にはならない。
防火上の便益と維持コストを同じ尺度で比較した公開の定量評価も、今回の調査では確認できていない。
2026年時点でも「有望だが、普遍化はまだ早い」
2025年に発表された緑の防火帯に関する査読レビューは、こうした緑地を山火事対策へ組み込む可能性を扱う一方、実証研究はまだ少なく、方法や用語も統一されていないと整理した。極端な気象条件では設計上の限界が大きくなることも指摘している。
2022年のゴルフ場研究を別地域・別チームが直接再現した独立研究は、2026年9月までの今回の調査では確認できなかった。
出典:mdpi.com(2) / ecode360.com / gov.ca.gov
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