0.9インチ金属コアはなぜ適合した
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 中空の金属球を中心に入れたオンコアの初期ボールは、一度は不適合判断を受けた。
- 2014年に米国ゴルフ協会が0.9インチ以下の剛性・中空コア例外を明文化した後、MA-1.0は適合球として登場。
- 現在の規則にも残る境界と、設計思想がどう変化したかを追う。
ゴルフボールの真ん中に、中空の金属球を入れる。
いま見るとかなり異端な設計だが、オンコア・ゴルフ(OnCore Golf)は実際にそれを製品化した。しかも、この構造をめぐる判断は「珍しいボールが一つ出た」で終わらず、2026年の用具規則にも残る境界をはっきりさせることになった。
争点になったのは、金属を使ったことそのものではない。ゴルフボールは何で、どう構成されるべきかという「伝統的な構造」の範囲だった。
金属だから禁止、ではなかった
米国ゴルフ協会の現行用具規則では、ゴルフボールは原則として弾性材料で構成する。一方で、中心に置く単一・同心円状のコアについては例外がある。
そのコアが直径0.9インチ以下なら、非弾性でも、実質的に剛性のある固体、または中空の厚肉金属球などを認めるというものだ。
この例外が重要なのは、2014年に突然「金属コアだけ特別扱い」されたわけではない点にある。
米国ゴルフ協会が2014年1月1日付でメーカー向けに出した通知では、1848年以降のゴルフボールは基本的に弾性材料で作られてきたと説明する一方、液体コアと小さな剛性中心コアは、以前から伝統的・慣習的な例外として扱われてきたとしている。そのうえで、直径0.9インチ以下の剛性コアについて、固体だけでなく中空の厚肉金属球も含むことを明文化した。
つまり2014年に起きたのは、まったく新しい原則をゼロから作ったというより、どこまでを許される中心コアとみなすか、その境界を具体化したことだった。
2012〜2014年、確認できる事実は二層ある
オンコア側の会社史では、2012〜2013年に米国ゴルフ協会から不適合判断を受け、それに異議を申し立てたとしている。そして2014年1月、同社初の適合中空金属コア球「MA-1.0」を発売した。
ここだけを見ると、「オンコアが規則を変えた」と言いたくなる。
実際、オンコア自身は後年、自社の挑戦が新しい構造ルールにつながったという趣旨で説明している。しかし、米国ゴルフ協会の2014年通知はオンコアもMA-1.0も名指ししていない。解釈変更の理由を、同社の異議申し立てだけに帰した記述も確認できない。
したがって確認できる線はこうなる。
オンコアが2012〜2013年の不適合判断に異議を申し立てた、というのは会社側の記録。2014年1月1日に米国ゴルフ協会が中空金属コアを含む例外を正式に明文化した、というのは規則側の一次資料。そして、その直後にMA-1.0が適合球として登場した。
この三つは時系列ではつながる。ただし「オンコア一社が規則を変えさせた」とまでは確認できない。
適合した金属コアは万能ではなかった
中空金属コアの狙いは、単に目立つ素材を使うことではなかった。
2016年に発売された「Caliber」は、直径0.9インチの中空金属コア、80コンプレッション、392ディンプルを採用していた。オンコアは後年、初期の中空金属コアについて正確性に利点があった一方、打感が硬く、飛距離がやや短いという欠点もあったと振り返っている。
ここは会社側の自己評価であり、今回の材料には第三者試験で同じ性能差を再現したデータはない。だが少なくとも、オンコア自身が金属コアをそのまま完成形とは考えなかったことは、その後の設計変更から分かる。
残ったのは金属球より「重さを外へ」の発想
オンコアはその後、ELIXRなどで、中心に中空の金属球を置く構造から離れた。
代わりに残したのが、重量を外側へ寄せて慣性モーメントを高める考え方だ。同社は金属粒子を外側の中間層へ配する構造へ移行したと説明している。
2026年時点で販売されているVERO X2も、中空金属の中心コアではない。4層構造で、大径コアと金属粒子を含む中間層を組み合わせ、別の方法で周辺重量配分を実現している。
捨てられたのは「中心に金属の球を置く」という形で、残ったのは「重量をどこへ置くか」という設計思想だった。
2026年も0.9インチの例外は残っている
そして面白いのは、初期製品の形が主役ではなくなった後も、2014年に明文化された構造境界が規則に残っていることだ。
2026年9月時点の米国ゴルフ協会の現行解釈でも、直径0.9インチ以下の単一・同心円状コアについて、剛性の固体や中空の厚肉金属球を認める例外を確認できる。
中空金属コア球の歴史は、「変わったボールが規則を破り、メーカーが規則を変えた」という単純な物語ではない。
従来からあった例外の考え方と、新しい構造の境界がぶつかり、2014年にその線が具体化された。そしてオンコアは、適合を得た金属球そのものに固執せず、長所として見ていた周辺重量配分の発想だけを別構造へ持ち越した。
0.9インチという数字は、昔の珍品の名残ではない。新しい設計をどこまで「ゴルフボール」と認めるか、その境界として今も規則の中に残っている。
出典:USGA(2) / oncoregolf.com(2・3・4) / Golf Digest
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