ボールの線はパットを助けるのか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- ボールの狙い線は、いつでもパットを良くするわけではない。
- 2012年は効果なし、2014年は2.6mだけカップインが増え、2021年は線の組み合わせで照準が改善した。
- 2025年の追試も整列改善を示す一方、傾斜・試合プレッシャー下の実戦効果はまだ確認できていない。
ボールに引いた一本の線は、パットを助けるのか。
研究を時系列に並べると、答えは「効く」「効かない」の二択ではない。距離、ゴルファーの経験、普段から線を使っているか、そして何を「効果」として測ったかで結果が変わっている。
2012年は、1mでも4mでも差が出なかった
2012年の研究では、熟練者24人と初心者24人が、1mと4mで、線あり・線なしをそれぞれ10回ずつ、各自合計40パットを行った。
ボールの線を使っても、狙いの偏り、精度、一貫性のいずれにも改善は確認されなかった。普段から線を使っていた熟練者にも明確な優位は出ていない。
この結果だけを見れば、「線はなくても同じ」に見える。
ところが2年後、別の研究では違う結果が出た。
2014年は、2.6mだけカップインが増えた
2014年の研究は、平均ハンデ7.6の男性アマ29人が対象だった。普段からボールの線を使う人は除外され、線あり・線なしでそれぞれ15パットを打った。
1.7mと2.3mでは有意な差がなかった。一方、2.6mでは線ありで平均9.7回、線なしで7.6回入り、線ありの方が有意に多くカップインした。
ただし、「なぜ2.6mだけ効いたのか」は研究でも解明されていない。参加者からは集中やルーティンに関する感想も出たが、これは原因として測定されたものではない。
しかも実験は、平坦な天然ベント芝の直線パットだった。傾斜の読みまで含む実戦とは条件が違う。
2012年と2014年の結果が食い違ったように見えるのは、距離だけでなく対象者や実験手順も同じではないからだ。2012年には普段から線を使う熟練者が含まれた一方、2014年は日常的な使用者を除外している。
2021年に良くなったのは「照準」だった
2021年の研究では43人が1.5mと3mからパットし、ボールとパターに1本線または3本線を組み合わせた。
ここで確認されたのは、主に照準の違いだ。3本線のパターは1本線より照準精度が高く、ボールとパターの線の数や形が一致した条件でも照準精度が高かった。
3本線の組み合わせでは、参加者が予測した成功率や満足度も高まった。
ただし、ここを「3本線なら実際にカップインが増えた」と読み替えることはできない。照準精度、成功しそうだという予測、本人の満足度は、実際のカップイン率とは別の指標だからだ。
2025年の追試でも、改善したのは主に整列
2025年には独立した研究が2本確認されている。
一つはゴルフ未経験の男性18人が2mの平坦なマットで試した研究で、ボールの線はブレード型、マレット型の双方でアドレス時のフェース整列を改善した。一方、インパクト時のフェース角には有意差がなく、カップイン率を主要な評価にはしていない。
もう一つは、ゴルフ未経験男性から視知覚能力で選んだ44人が、5mの平坦なマットでアドレスを合わせた研究だ。視知覚能力が低い群では線が整列を助けたが、実際のストローク成功率は検証していない。
つまり近年の研究を足しても、「線が照準を助けることがある」と「線でパットが入るようになる」は同じ結論ではない。
では、どんな条件なら効くのか
現在の研究から確実に言える範囲は狭い。
実際のカップイン増加が確認されたのは、2014年研究の2.6mという特定条件だった。同じ研究でも1.7mと2.3mでは差がない。2021年と2025年の研究は、線の組み合わせや視知覚によって照準・整列が改善する条件を示したが、それをそのまま実戦のカップイン増加へ置き換えることはできない。
また、2022〜2026年の追加確認では、2025年の整列研究2本は見つかったものの、天然芝の傾斜、試合のプレッシャー、長期的な使用習慣まで含めて、線あり・なしのカップイン率を直接比較した追試は確認できなかった。
だから、ボールの線は「誰にでも効く道具」でも「意味のない線」でもない。
研究が示しているのは、線が特定条件で照準を助け、ときにはカップインにも差が出る一方、その効果は距離、技能、視知覚、用具の表示、測る指標によって変わるということだ。
市販の複数線ボールやパターが実戦で一律に優れることまで、現在の研究群は証明していない。一本の線に期待できるのは万能な正解ではなく、条件次第で働く照準の手掛かりまでである。
出典:International Journal of Golf Science(2) / mehdijournal.com / e-kjab.org(2)
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