初日は効いた。でも4日目には消えた パット実験が試した「クラブを意識する」効果
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 「腕」ではなく「クラブ」へ意識を向ける外部焦点は、初日には内部焦点より小さな優位が出た。
- しかし4日間を通した事前登録解析では条件差は明確でなく、2〜4日目の差も消えた。
- むしろ参加者全体の平均精度は練習で大きく改善した。
ゴルフのレッスンでは、同じ動きを直すにも言い方が変わる。
「腕を振り子のように動かす」と言うか。 「クラブを振り子のように動かす」と言うか。
前者は体そのものへ注意を向ける「内部焦点」、後者は体の外にある道具や動きの結果へ注意を向ける「外部焦点」と呼ばれる。
スポーツ科学では長く、外部焦点のほうが動作の成績や学習に有利だという研究が積み重なってきた。2021年の大規模なメタ分析も、平均では外部焦点が内部焦点を上回ると報告している。
では、パットでも「クラブを意識すればいい」で終わるのか。
2024年にPeerJへ掲載された事前登録研究は、そこを4日間かけて確かめた。
「腕」「クラブ」「何も指定しない」を同じ人が試した
実験に参加したのは18〜35歳の体育系学生30人。近年ゴルフなどを頻繁に経験した人は除外されており、熟練ゴルファーの実験ではない。
参加者は人工グリーンで、約2.2ヤード(原著2.00m)のパットを行った。
条件は3つ。
内部焦点では「腕の振り子運動」に注意を向ける。 外部焦点では「ゴルフクラブの振り子運動」に注意を向ける。 対照条件では、ボールから適切な距離に立つことを確認する。
1条件15球、1日45球。それを48〜72時間空けながら4日間繰り返した。
つまり、一発勝負の「この言葉で入った」ではなく、同じ指示を何度も浴びたときに差が残るかを見た実験だ。
初日だけを見ると、たしかに「クラブ」が勝った
1日目を後から日別に分析すると、内部焦点より外部焦点のほうが誤差は小さかった。
カップ中心からの平均的なズレは、内部焦点が38.48cm、外部焦点が34.19cm。対照条件は32.84cmだった。
ここだけ見れば、「腕を考えるより、クラブを考えたほうがいい」と言いたくなる。
ただし、この日別比較は研究開始前に決めていた主要解析ではなく、データを見た後に行った探索的解析だった。
さらに重要なのは、その差が2日目、3日目、4日目には出なかったことだ。
4日分をまとめると、話が変わる
研究者が事前登録していた主要解析では、4日間を通した注意の向け方による明確な差は確認されなかった。
正確さを示す指標では、3条件の差はp=0.10。日数によって条件の効果が変化したという交互作用もp=0.33だった。
一方で、日を重ねる効果は大きかった。
3条件をまとめた平均の誤差は、1日目の35.17cmから4日目には23.91cmまで縮まった。
この実験で最もはっきり出たのは、「どこへ注意を向けたか」よりも「練習を重ねたこと」だった。
初日に効く指示と、身につく技術は別物
著者たちは、初日に外部焦点が良く見えた理由の一つとして「新しさ」を挙げている。
普段の指導では「腕をこう動かす」「膝をこう使う」といった内部焦点の言葉が使われやすい。すると「クラブの動きに集中して」と言われること自体が新鮮で、注意や意欲を一時的に高めた可能性がある、という考えだ。
ただし、これは説明候補であって、実験で直接証明された原因ではない。
そして、この研究にはもっと大きな注意点がある。
指示を外した後に効果が残るかを見る保持テストも、別の距離や状況へ応用できるかを見る転移テストも行っていない。
だから、この研究から「外部焦点では学習できない」とは言えない。
言えるのは、4日間のこの課題では、外部焦点の優位が持続的な成績差としては見えなかった、というところまでだ。
「外部焦点が正解」は、いま研究側でも揺れている
興味深いのは、この1本の研究だけが逆風ではないことだ。
出典:doi.org / pmc.ncbi.nlm.nih.gov / aspredicted.org / osf.io / pubmed.ncbi.nlm.nih.gov(2)
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