水の酸素は増えた。でも芝は良くならなかった ナノバブル散水3年試験
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 酸素ナノバブル水は、通常水4〜7mg/Lに対して12〜14mg/Lまで酸素化できた。
- しかし2019〜2021年の砂主体ベントグリーンでは、根域酸素の上昇は1年だけで、測定した芝の健康指標は改善しなかった。
- 「水に酸素を入れられる」ことと「芝が良くなる」ことは、同じではなかった。
グリーンの根に酸素を届けたい。
そのためにゴルフ場はエアレーションで穴を開け、砂を入れ、根域の空気と水の動きを整える。では、そもそも散水する水に大量の酸素を入れてしまえばどうだろう。
発想だけなら、かなり魅力的だ。
細かな「ナノバブル」で酸素を水に溶かし、そのままグリーンへ散水する。穴を開ける回数を減らせるかもしれない。根が増え、夏のベントグリーンが強くなるかもしれない。
ところが、3年間の実地試験ではそう単純にはいかなかった。
水の酸素量を増やすこと自体には成功した
2024年にHortTechnologyへ掲載された研究は、米アーカンソー州の研究施設にある砂主体のクリーピングベントグリーンで、2019年から2021年までナノバブル酸素水を試した。
使ったのは「Pure Distinction」のクリーピングベントグラス。水道水と池水それぞれについて、ナノバブルで酸素化した水と未処理水を比較した。
ここでまず重要なのは、装置が失敗した研究ではないことだ。
圃場試験で、ナノバブル処理水の溶存酸素は12〜14mg/L。未処理水は4〜7mg/Lだった。つまり「酸素の多い散水水を作る」という最初の目的は達成している。
問題は、その次だった。
根の周りの酸素は、3年のうち1年しか増えなかった
2019年、土壌中の酸素分圧の日平均は未処理区の17.48kPaに対し、ナノバブル区で18.21kPaへ上がった。
これだけを見ると、狙い通りに見える。
しかし2020年は逆で、未処理区20.3kPaに対してナノバブル区19.7kPa。2021年には有意な効果が確認されなかった。
つまり、酸素を多く含む水を撒けば、根域の酸素も安定して増える――とはならなかった。
さらに研究では、スプリンクラーによる散水過程でナノバブル水の総溶存酸素の50%超が失われたとしている。ノズルを通り、細かな水滴となってグリーンへ落ちる間に、せっかく加えた酸素のかなりの部分が逃げた。
芝の色も、刈りカスも、根も良くならなかった
では、最終的に芝が良くなればいい。
研究チームは芝の被覆率、緑色の指標、刈りカス量、窒素、根の長さ・体積・重量などを調べた。
結果は、ナノバブル酸素水による持続的な改善なし。
管理環境下では、さらに高い26〜29mg/Lまで酸素化した水を地下から与える試験も行ったが、被覆、芝色、根、生体組織の窒素に改善は確認されなかった。なお、この管理環境試験では土壌酸素そのものは直接測っていない。
「酸素を増やせたのだから、植物にも効くはず」という一直線の話にはならなかった。
そもそも酸素不足ではなかった可能性
研究者が注目したのは、試験したグリーンの構造だ。
根域は90%超が砂で、長時間水浸しになる環境ではなかった。
水はけの良い砂主体のグリーンでは、そもそも根域の酸素が決定的な制限要因になっていなかった可能性がある。
これはゴルフでも同じだ。
ヘッドスピードが十分ある人に「もっと振れば飛ぶ」と言っても、飛距離の制限要因が打点や打ち出し角なら効果は薄い。
芝でも、増やした要素と、実際に生育を止めている要素が同じとは限らない。
「ナノバブルは効かない」という研究でもない
ここは誤解したくない。
著者らは、ナノバブルによる酸素化そのものについては、大量の水を効率よく酸素化できる方法だと評価している。
また今回の研究は、砂主体のクリーピングベントグリーンという条件だ。より細かな土壌で排水が悪く、本当に酸素不足が起きている根域なら結果が変わる可能性は残る。ただし、それはこの研究では確認されていない。
だから結論は「ナノバブルは無意味」ではない。
出典:doi.org / repository.lsu.edu / scholarworks.uark.edu
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