全米オープン前は歩かせないほど守ったフェスク Chambers Bayが全面ポアへ替えた理由
GOLF DNA編集部🇺🇸

3行まとめ
- 2015年全米オープン前、Chambers Bayは交通に弱いフェスクを守るため、15番で球をスタッフが拾うほど歩行を減らした。
- だが大会後、滑らかな転がりを求めて刈高を下げるとPoa annuaが急増。
- 2017〜18年に全グリーンをポアへ張り替えた。
「ポアは入ってほしくない草」。そんな扱いをされることもあるPoa annua(スズメノカタビラ)を、全米オープン開催コースがグリーン全面に採用した。
ワシントン州のChambers Bayで起きたのは、かなり大胆な方針転換だった。
面白いのは、フェスクを簡単に諦めたわけではないことだ。むしろ「守るためにやれることを全部やった」あとで、芝そのものを変えている。
2014年、翌年の全米オープンへ向けて準備中の15番グリーンは、歩行による傷みが問題になっていた。USGAは当時、Chambers Bayで使われていたred fescueとChewings fescueは、この地域では交通への耐性が低いと説明している。
対策はかなり異例だった。15番ではグリーンに乗った球をスタッフが回収し、原則2パット扱い。ピンから約3m以内ならバーディー扱いにして、プレーヤーがグリーン上を歩く回数そのものを減らした。
その前年の2013年にも、7〜8月だけで1万1000ラウンドを超える利用があり、摩耗とPoa annuaの侵入を背景に、弱った2グリーンを剥がして播種し直していた。フェスクを残す努力は大会直前だけではなかった。
それでも2015年の全米オープン後、話は逆方向へ進む。
もともとのグリーンはfine fescueを主体に、少量のcolonial bentgrassを混ぜたものだった。ところが、より滑らかな転がりを得るため刈高を下げると、Poa annuaが急速に増えた。
ここで選択肢は二つになった。数年かけて自然な移行を待つか、思い切って張り替えるか。
Pierce Countyと運営側は後者を選んだ。2017年に4グリーンをPoa annuaへ張り替え、残りも2018年秋に完了。コースは2018年10月1日から閉鎖し、2019年4月初旬に再開した。
USGAの2019年解説は、新しいPoa annuaグリーンについて、年間を通じた交通に耐えやすく、地域の気候にも適応し、種穂の管理にも生育調整剤を使いやすいと評価した。ただし、これは統制された比較試験ではなく、現場の農学担当者による評価だ。
その後、2022年にはChambers Bayで全米女子アマが行われ、日本の馬場咲希が優勝した。
そして2026年9月現在、Chambers Bay公式サイトのキャディー案内には、今も「poa annua greens」の微妙な曲がりを読むと明記されている。さらにUSGAは、2027年全米ジュニアアマ、2028年全米アマチュア・フォアボール、2033年全米アマの開催地にもChambers Bayを選んでいる。
この話が面白いのは、「フェスクが悪く、ポアが正しい」という結論ではない。
芝の良し悪しは、名前だけでは決まらない。気候、利用回数、歩行量、刈高、病害、散水、薬剤、そして求める転がり。その条件の組み合わせで、同じ芝でも正解にも不正解にもなる。
日本のゴルファーも「ベントだから速い」「高麗だから重い」と芝種だけでグリーンを決めつけたくなる。だがChambers Bayの歴史を見ると、コース管理はもっと現実的だ。
全米オープンのために必死で守った芝を、数年後に全部替える。
それは迷走というより、現場が条件に合わせて「正解」を更新した結果なのだ。
出典:USGA(2・3・4・5・6) / chambersbaygolf.com
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