ゴルフの科学

文献研究 v4.0 · 2026年10月24日公開

RESEARCH 005 · パッティング · 研究解説

パットは、どのくらいの強さで打てば入るのか。

届く強さ、入る横幅、外した先。数字と軌道で、狙い方を考える。

ゴルフの科学 · 国内外のプロ・アマの統計と実験

カップの手前に止まった球とパターを描いたAI生成の表紙画像

届かなきゃ入らない。でも、強く打てば打つほど入るわけでもない。曲がりが減り、縁に当たって入る余地も減り、外れれば返しが長くなる。

では、どの強さで、どこへ打つか。穴を通る速さから、曲がり幅、止まる場所、次の一打まで追ってみよう。

実測で確かめる。計算で、条件を変えて比べる。

選手の実戦記録、装置の実験、著者のモデル、GDの条件付き計算を、図ごとに表示しています。モデルの曲線を実測の軌道や入球率としては扱いません。

01

届く強さ、入る強さ

届かなければ入らない。強すぎても、穴は狭くなる。

カップの手前で止まれば、その一打は入らない。だからといって、どんどん強く打てばいいわけでもない。速い球ほど、縁に当たっても入る横幅が狭くなる。

下の図は、その違いを平らな面のモデルで描いたもの。カップ付近の速さを0.3m/sから0.9m/sへ上げると、球の中心が通って入る計算上の幅は約9.8cmから7.2cmへ縮む。穴そのものが小さくなるのではない。通っていい場所が狭くなる。

必要なのは、届く余裕を持たせながら、穴が受け入れる速さに収めること。 ジャストタッチか強めかの二択ではなく、自分の強弱のばらつきも含めて考えたい。Pennerのカップ捕捉モデル

公表モデルをGDが計算 · 水平面
速く通るほど、入る横幅が狭くなる
0.3m/s

幅 約9.8cm

0.6m/s

幅 約8.6cm

0.9m/s

幅 約7.2cm

1.2m/s

幅 約5.5cm

茶色の線は、球の中心が通って捕捉される計算上の幅。黒い円は直径10.8cmの穴。同じ直径の図を並べています。

Penner2002・式23を使用。縁での捕捉を含む近似なので、球の直径をもう一度引きません。長さを表す図であり、入る確率ではありません。傾斜補正を入れていない水平面の比較。原式へ →

02

「何cm先」の落とし穴

同じ30cmオーバーでも、上りと下りでは違う。

「外れたら46cm先に止まる強さ」は、強さを想像する目安にはなる。ただ、その距離だけで入れやすさは決まらない。

球を転がす装置を使い、仮想カップの縁から30cm先の輪に止めた実験がある。人工芝の上りではカップ手前の速さが0.66m/s、下りでは0.29m/sだった。同じ止め場所でも、穴を通る速さは約2.3倍違った。

下りでは重力が球を押し続け、上りでは止める側に働く。同じ距離だけオーバーさせるなら、上りの球はカップを速く通り、下りの球はゆっくり通る。 逆に、同じ速さでカップを通った球なら、下りの方が遠くまで残る。

なお、46cmは18インチの換算に近い。Pelzの公式ページにある推奨は17インチ、約43cm。どちらも、全傾斜・全距離で最適と決まった数値ではない。装置実験の条件/Pelzの推奨

装置実験 · 原著の測定値
同じ輪に止める。穴の手前の速さは約2.3倍違った。
上り0.66 m/s

原文の±0.01m/s

下り0.29 m/s

原文の±0.03m/s

装置で球を転がし、仮想カップの縁から30cm先の輪へ。3度(約5.24%)の人工芝、Huxley・Stimp10。速度はカップの前縁で測定。

Sheppard・Hurrion・Collinson2016の結果欄。±は原文表記で指標の定義・各条件の反復数は公開本文に記載なし。プロやアマの成功率ではありません。原典へ →

では、2%の傾斜で計算すると

GDの条件付き計算
中心から30cm先で停止打ち出す速さ中心を通る速さ
上り2%2.13m/s0.64m/s
水平1.90m/s0.57m/s
下り2%1.64m/s0.50m/s

一定減速の直線モデル。上の実験とは傾斜・測定位置・停止距離の起点が違います。実験の再現ではありません。計算条件 →

03

狙いと強さを一組に

3mの横傾斜。強さを変えたら、狙いも変わる。

カップまで3m。右へ下る2%の一枚の傾斜を考える。2%とは横1mにつき2cm下がる傾斜で、角度では約1.15度だ。

同じカップ中心に届く球でも、ゆっくり通すなら上側を大きく狙い、速く通すなら曲がりを少なく読む。今回の条件付き計算では、カップを通る速さが約0.41m/sなら狙いの延長は左33cm、約0.71m/sなら左27cm、約0.99m/sなら左22cmになった。

ここでいう「左27cm」は、打ち出す直線をカップのある横断線まで延ばした場所。球が最大27cmふくらむという意味ではない。 図では、打ち出す直線と、実際に曲がっていく軌道を分けた。

コースで決めたいのも、この一組だ。「どこに出すか」だけでなく「どんな速さで通すか」。弱くなった球が下へ切れたからと、次の球の狙いだけを変えると、元の強さに戻ったときには別のミスになる。

GDの条件付き計算
速さを変え、三球とも中心を通す

右下がり2%の面。図では上が高い側、下が低い側。破線=打ち出す直線、実線=曲がる軌道。

図は左右にスクロールできます →

0m1m2m3m4m上30cm0下30cm球穴の中心進行方向の距離(横方向とは縮尺が異なります)
穴付近 0.41m/s上側33cm

水平なら15cm先で止まる強さ

穴付近 0.71m/s上側27cm

水平なら46cm先で止まる強さ

穴付近 0.99m/s上側22cm

水平なら90cm先で止まる強さ

33cm、27cm、22cmは、狙いの直線が穴の横断線と交わる位置。軌道の最大のふくらみではありません。実線は穴を塞いだ面で、中心を通った後も描いています。

傾斜とグリーンの速さで、狙い幅は変わる

3m、穴中心で約0.71m/sを固定。表は高い側へ狙う幅です。

横傾斜8ft相当10ft相当12ft相当
1%11.2cm13.2cm15.1cm
2%22.4cm26.7cm30.6cm
3%34.0cm40.5cm46.6cm

同じ通過速度になるよう、初速と狙いを各条件で解き直しています。全て水平換算46cmで止める設定ではありません。実際のグリーンの読み表として、そのまま使う数値ではありません。

球をGDが計測した実績ではありません。軌道図は3m・横傾斜2%・10ft相当。均一な面での純転がりを仮定し、芝目や凹凸は含みません。条件を変えた表は、その条件を表内に記載しています。式・仮定・計算データ →

04

外した後まで見る

同じ狙い。初速が10%変わると、返しはどうなるか。

前の図の真ん中、左27cmを狙う球を基準に、狙いはそのままで初速だけを10%ずつ変えた。

弱い球はカップまで届かず、約22cm残った。強い球はカップの横断線を約7.3cm上側で通過し、約1.21m残った。この強い球は、曲がりきる前に穴の横を抜けている。止まるまで追うと、その後も下側へ曲がっていく。

外した瞬間の方向と、最後に止まった場所は同じ情報ではない。 「右に残ったから打ち出しが右だった」とは限らない。この例では、強い球は上側を通り過ぎたのに、最後はカップより下側で止まる。

基準の球は中心を通るので、実際なら入る可能性がある。比較の図では穴を塞ぎ、三球とも最後まで転がした。基準の約49cmも含め、入らなかった球の実測分布ではない。

GDの条件付き計算
狙いは左27cmのまま。初速だけを±10%

実線=一打目の軌道。丸印=停止点。点線=停止点と穴を結ぶ直線で、返しの実際の軌道ではありません。

図は左右にスクロールできます →

0m1m2m3m4m上30cm0下30cm球穴の中心進行方向の距離(横方向とは縮尺が異なります)
初速 90%残り22cm

カップに届かない

初速 100%残り49cm

中心を通る・穴を塞いで続行

初速 110%残り1.21m

穴の横断線で上側7.3cm

強い球は上側を抜けた後、さらに曲がって下側で止まる。停止点の「右/左」だけでは、穴をどちら側に外したかは分かりません。

全て穴を塞いだ比較。基準球は実際には中心から入る可能性があり、「外した球の平均49cm」ではありません。全停止点は穴より低く、返しは上り成分を持ちます。仮想の一定面なので、次のパットの成功率は算出していません。

球をGDが計測した実績ではありません。軌道図は3m・横傾斜2%・10ft相当。均一な面での純転がりを仮定し、芝目や凹凸は含みません。条件を変えた表は、その条件を表内に記載しています。式・仮定・計算データ →

05

返しの難しさ

30cmと1m20cmの返しを、同じミスにしない。

強く打って外した1m20cmを「まあ入る」と扱ってよいか。技量別の実戦記録を見ると、短い距離の中にも大きな差がある。

Shot Scopeの公表集計では、HC10の成功率は0〜3ft帯で96%、3〜6ft帯では65%。HC20では90%と55%だった。約30cmと約1m20cmは、別の距離帯に入る。ただし、これは距離帯の平均であり、30cmそのものが96%、1m20cmそのものが65%という意味ではない。

PGA TOURの2025年公式平均でも、9〜10ft帯(約2.74〜3.05m)は40.67%、4〜5ft帯(約1.22〜1.52m)は80.94%。全パットを対象とする距離帯の成績で、最初の一打が入る確率とは限らない。プロの距離感でも、長い返しを簡単には扱えない。PGAの公式統計

しかも、同じ長さでも上りと下りでは条件が違う。下へ転がった球を穴へ戻すなら返しは上り。上に止まれば返しは下りになる。今回の計算で1.21m残る強い球は、穴より約0.36cm低い。穴へ向かう直線の勾配は約0.30%の上りだ。元の横傾斜2%が、そのまま返しの傾斜になるわけではない。上りの返しでも、1m以上伸びた負担が消えるわけではない。

短いパットは入れるつもりで打つ。そのうえで、外れたときにどちらへ何m残るかを見ておく。長い一打目で「とにかく届かせる」を優先しすぎると、この返しを難しくする。技量別データの対象と距離帯

実戦の公表集計 · Shot Scope
短い返しにも、技量別の差がある
距離帯HC0HC5HC10HC15HC20HC25
0〜3ft
約0.00〜0.91m
98%96%96%93%90%88%
3〜6ft
約0.91〜1.83m
76%67%65%59%55%48%

提供元の公表距離帯を保持。試行数、国・男女の構成、収集期間は非公表。全般の距離帯別成功率で、特定の一打目を外した後の条件付き成功率ではありません。傾斜別や30cm・1.2mぴったりの確率には分解できません。原表へ →

06

では、どう打つか

一打目の成功率だけでなく、上がるまでの打数で考える。

短いパットは、届かないミスを減らしつつ、速すぎて縁を使えなくする球も減らしたい。長いパットは、届いた数だけでなく、強く外したときの返しまで含めて強さを選ぶ。下りでは同じ速度の超過でも残距離が伸びるので、上りと同じ振り幅や「何cm先」をそのまま使わない。

まず強さを決め、その強さで入る線を選ぶ。 曲がるパットを弱く通すなら多く読み、速く通すなら薄く読む。最後に、外した先からの一打を見て、狙いと強さをもう一度確かめる。

ただし「返しが怖いから常に弱く」も正解ではない。プロの記録に合わせたBroadie・Shinのモデルには、5ftの横傾斜で、強さと狙いを一緒に変えた方が、入るまでの平均打数を減らす例がある。打ち出しは1.34→1.43m/s、狙い角は11.3→8.7度。単に強くするのではなく、組み合わせを変えている。

練習グリーンでも、その違いは試せる。曲がる同じ場所から、ゆっくり通す球と、少し速く通す球を打ち比べる。強さごとに狙いを変え、穴を通る位置と外した先を見る。その後に一球ずつ場所を変える。これはGDが勧める確かめ方で、必要球数や改善打数が検証された処方ではない。著者モデルの条件と目的

公表された著者モデル · GDの最適解ではありません
強く打つなら、狙いも変える。
記録に合わせた方針1.34 m/s

狙い角 11.3度

穴の先 約38cmを目標

総パット数を最小化した解1.43 m/s

狙い角 8.7度

穴の先 約71cmを目標

5ft(1.52m)の横傾斜、2.3度(約4.02%)、11ft面。プロのデータに合わせた誤差モデルを使い、入るまでの期待打数で比較した例。

Broadie・Shin2014・Figure11。選手が実際に「38cm先」と申告した記録でも、アマに71cmを勧める実験結果でもありません。著者の図と計算目的 →

距離別のPGA成功率と、これまでの練習研究
公表実績
PGA TOUR 2025:距離帯ごとの成功率
4〜5ft · 約1.22〜1.52m80.94%
5〜6ft · 約1.52〜1.83m70.63%
7〜8ft · 約2.13〜2.44m53.68%
9〜10ft · 約2.74〜3.05m40.67%
10〜15ft · 約3.05〜4.57m30.49%
15〜20ft · 約4.57〜6.10m18.92%
20〜25ft · 約6.10〜7.62m12.23%
25ft超 · 7.62m超5.42%

公式Tour Average。全パットの成功率で、ホール初回の1パット率とは限りません。原表のft区間を残し、mは換算値。2025年を選択して参照。原典と定義へ →

別指標の「初回パットから3パット以上」は、10〜15ftで0.80%、25ft超で9.49%。25ft超には7.62mを少し超えるものから、さらに長いパットまで含まれます。上の成功率と分母が違うため、引き算して2パット率にはできません。

読み・打ち出し・速度を測る方法、原因別に試された練習、量・期間・保持と実戦の結果は本編の資料編に掲載しています。

原典と対象を読む →
公表実績

公式統計やサービス事業者の公表値。対象・期間は図表に記載。

GD再集計・復元

公表カウントの合算、または丸められた値からの復元。

実験結果

人工芝など、決められた条件で測定。実戦とは別。

公表モデルの再計算

過去のデータをもとにした著者の式から計算した値。

GD推計・仮定

欠測を補う仮定付きの参考値。実績とは別表に掲載。

各研究の対象者、練習内容、数値の出典は、研究本編の出典欄から確認できます。