韓国のスクリーンゴルフは、なぜ「練習場」より「部屋」になったのか
GOLF DNA編集部🌐

3行まとめ
- 2021年の質的研究は、韓国でスクリーンゴルフが広がった背景として、行きやすさ、コースより低い費用、個室で仲間と過ごす「bang文化」を挙げた。
- 主対象は15人で、全国調査ではない。
- 機械性能だけでは見えない「余暇の場」としての広がり方を読む。
スクリーンゴルフというと、弾道計測や映像の精度を先に思い浮かべやすい。
でも韓国での広がりを調べた2021年の研究は、別のところを見ていた。機械がどれだけ本物に近いかより、「行きやすい」「コースより負担が軽い」「仲間だけで過ごせる部屋になっている」という生活側の条件だ。
研究が見たのは、15人の利用者と「部屋」の使われ方
LeeとKwonの研究は、スクリーンゴルフを半年以上、週2回を超える頻度で利用する15人を目的抽出して行った質的ケース研究だ。加えてGolfzonの運営者2人が補助的な情報提供者として参加した。
ここで注意がいる。参加条件の本文はゴルフ場でのプレー経験を含むように読める一方、論文のTable 1ではGolf Course Experience欄にOとXが混在している。したがって、15人全員を「コース経験者」として扱うのは避けた方がいい。
研究が参加者の語りから整理した普及理由の一つはアクセスのしやすさだった。スクリーンゴルフ施設は行きやすい場所にあり、コースでプレーするより費用負担が小さいことも、参加理由として挙げられている。
ただし、これは15人の質的研究から得たテーマで、韓国全体のゴルファーの何%が同じ理由で通っている、という統計ではない。
「bang」は個室ではあるが、一人になる場所ではない
この研究で特に面白いのが、韓国の「bang文化」との結び付きだ。
bangは韓国語で「部屋」を意味する。研究は、ノレバンやPCバンのように、仲間と集まりながら外の目を気にせず過ごせる空間の文化と、スクリーンゴルフセンターの個室型の構造が重なったと整理している。
つまりスクリーンゴルフは、単に屋内で球を打つ装置ではなく、仲間と同じ部屋で時間を過ごす余暇の場として受け入れられた、という見方だ。
この違いは大きい。練習施設として考えるなら、評価軸は機械の精度、打席数、計測項目になりやすい。社交の場として考えるなら、行きやすさ、費用、誰と過ごせるか、周囲を気にせず話せるかまで商品になる。
研究は「ゴルフへ入る入口」にもなり得ると解釈した
著者らはさらに、スクリーンゴルフを単なるゲーム場所ではなく、ゴルフへの参加を促すスポーツ社会化の媒介として解釈している。
ここも因果効果として読むべきではない。この研究は「スクリーンゴルフを始めれば何%がコースへ行く」と測ったものではない。あくまで参加者の語りと文化的背景をもとにした質的な解釈だ。
それでも、ゴルフとの接点が「最初から18ホール」だけでなく、仲間と過ごす室内の遊びから始まる可能性を示した点は興味深い。
日本で見るなら、機械より先に「使われ方」を見る
この研究をそのまま日本へ当てはめることはできない。著者ら自身も、韓国の社会・地理的背景に限られた単一ケース研究で、他の社会背景へ一般化できないと明記している。
ただ、スクリーンゴルフの広がりを見る視点としては使える。
施設数や機械性能だけでなく、駅や住宅地から行きやすいのか、コースより気軽な費用なのか、一人練習が中心なのか、友人や同僚と過ごす場所になっているのか。こうした「どう使われているか」まで見ると、同じスクリーンゴルフでも市場の意味はかなり変わる。
韓国の研究が示したのは、スクリーンゴルフの人気を機械だけで説明しない見方だった。ゴルフをする場所である前に、人が集まる部屋になった。その順番が、普及を考えるうえで一番面白いところだ。
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